瀬戸内小話2
落花
触れる熱が、ひとつひとつの神経を焼き焦してゆく。
不愉快極まりない、痛みのような、痺れのようなそれは、人の気を狂わせる。
あさましいほど向けられる、情慾。
唇が、舌が、指が、なんと忌々しいことか。
「……元就」
満足したのか、両頬を捕らえた手はそのままに男は顔を上げる。
隻眼に映るのは、醜く染まった己の顔。
「離せ」
不愉快と睨めつけ、体躯と体躯の狭い隙間で腕を押す。
なのに、奴は嘲う。
「よく言うぜ」
無骨な指が、唇を撫でると歯に触れる。まるで噛み付けといわんばかりに。
口を開けば、逆に噛まれる。
「――誘ったのは、あんただろ」
ああ、なんと忌々しい。
応えずに目を閉じると、また舌が己の身体に触れた。