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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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あなたと会える、八月に。

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◆9

 今、ここに在る宇宙が崩壊の一途を辿っていることを、私はそなたが十二歳になる少し前、クラヴィスと共にディアから知らされた、とジュリアスは言った。
 「わかってはいた」短く言ってジュリアスは続ける。「言われずとも、感じることはできた」
 だがそれを、女王補佐官であるディアが口にしたことで、私は今まで以上に追い詰められた−−今から思えば、追い詰められた、と言える。とにかく、どうにかして宇宙を救わねばという思いでいっぱいになってしまったのだ、と。
 何故なら。
 私は首座だから、とジュリアスは言う。私が皆を導かねばならない。けれど、この私を導いてくれる者はいなかった。学びたいとき、教えを乞いたいときにはもう、誰もいなかったのだ、と。
 夏の穏やかな海辺のカフェの片隅でロザリアは、躰中の皮膚が一斉に粟立つように感じた。規模はあまりにも異なるけれど、同様のことをロザリアは覚悟しなければならなかった。
 「もっとも」ジュリアスは苦笑する。「この宇宙が崩壊するのをくい止めるにはどうすれば良いかなど、誰も知りはしなかった−−女王陛下ですらも」
 切羽詰まった思いはやがて、他を切り捨てることへとつながっていく。鈍いもの、滞るもの、妨げるもの−−それらを一切無視し、ただひたすら自分の考え、自分のペースで事を進めていった。その中には自分の休日はもちろん、睡眠時間も含まれていた。
 「皆が皆、あなたのようには考えられないし、あなたのようにはできないのですよ」とルヴァにやんわりとたしなめられたこともあったし、クラヴィスの自分への黙殺の態度もいや増した。他にも、あからさまに避ける者、脅えた表情を見せる者、顔を強ばらせ緊張する者、冷笑のみで接する者、目を伏せてしか話さない者−−
 「当時はオスカーとぐらいしか、話さなかったような気がする。しかも執務に関する必要最小限のことだけを」
 苦笑した横顔をロザリアに見せたまま、ジュリアスは言う。
 「とにかく私は、皆から孤立していった」
 そう吐き捨てるように言いながらジュリアスはやはり、ロザリアを見なかった。



 それは、とある問題について話し合っていたときに起こった。
 ある惑星の終末について。つまびらかに言うつもりはないが、とジュリアスは前置きする。そう、起こるべくして、起こった−−徐々に膨らんできたものが堪えきれず、はち切れてしまったように。
 「なんでそんな、ひでぇことを言ってんだ、てめーはよっ!」
 とうとうゼフェルの堪忍袋の緒が切れた。もっとも、聖地へ無理矢理連れてこられたときから、とっくに切れていたのだろうけれど。
 「そんなにいらねぇものって決めつけて、潰したいかよ!」
 そのようなつもりは毛頭なかった……とは、言い難い。本来ならば、もっと詳細を説明し、理解を深めさせて決定するという段階を踏んだ行動を取っていくべきなのだが、その時点では、その惑星のために時間を割いていては他のいくつもの星に悪影響が出てしまいかねないぎりぎりの状況だった。
 そしてもうひとつ加えれば。
 ジュリアスは海を見つめた。いや、本当に海を見ているのかどうかわからないまなざしのまま言った。
 「私の気力も体力も……そのときすでに限界を通り越していた」