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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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あなたと会える、八月に。

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 大神官、そしてジュリアスに軽く頭を下げて挨拶をするとロザリアは、大神官のいる正客の席から離れ、聖堂の後方へとやってきた。
 その間中、人々の視線が二人に注がれる。
 正客席から距離が開くほど細かな事情はわからなくなるものの、この喪主たる若い娘の連れている長身の青年が、大神官が平伏するほどの人物だとは皆わかっているので、ロザリアとジュリアスが通るあたりは緊張の極致に達していた。
 そしてロザリアが、多少空席の目立つものの父の友人たちが座る席あたりへジュリアスを連れてゆき、端の席を指し示したとき、隣の席の老人はぶるぶると身を震わせていた。
 「ジュリアス様、お隣の方も、父のチェス仲間でしてよ」小声で、けれど隣の老人にも聞こえるようにロザリアは、少しだけ親しい調子で言う。「とにかく父は、そこらじゅうの人にチェスをやろうと声をかけては、負けてばかりいましたから」
 「いや、最近は……」ロザリアの軽い口調に、少し安心したのか、老人が小さく首を振りながら言う。「強くなってきおったぞ」
 「私も去年、そう思った」頷いて、ジュリアスも小声で言う。「駒の進め方が、存外したたかになっていたぞ」
 「そうでしょう、そうでしょうとも」
 うんうん、と頷く老人は、どうやら落ち着いてきたらしい。
 「良い。もう行け」小声のまま言ってジュリアスは、ロザリアを見つめる。「……しっかりな」
 そこでロザリアは少し屈んで、椅子に座ったジュリアスの目線に合わせると、初めてヴェールを上げた。
 上げて、ジュリアスを見つめ返す。
 「……ありがとう」
 極めて小さく、早口で言うとロザリアは、すぐにヴェールを降ろし、すっと一歩退くと再びジュリアスに対し最敬礼してみせた。
 「失礼いたします」
 そして踵を返し、祭壇へと向かう。背にジュリアスの、強い視線を感じながら。



 そう。
 わたくしは示さなければならない−−カタルヘナ家主としての『器』を。その心意気を。
 ここにいる人たちに。
 そして……ジュリアスに。