あなたと会える、八月に。
両親は驚くかもしれないが、その両親にしてもジュリアスをひと目見れば怪しんだりはしないだろうとロザリアは確信していた。親に人を見る目があるように、自分もそうであるとロザリアは思っている。
だからむしろ、一番驚いているのはジュリアスさんかもしれないわね。
でも。
同情したわけではないわ。純粋にわたくしがお祝いしたいと思ったからよ。
そう思ってみても、それは微かに偽りを帯びている。いつも自分の誕生日にはこれでもかというぐらい祝いの席を盛り上げてくれる両親や乳母、そして館の者たちに囲まれていたロザリアには、ただ単純に誕生日を祝う自分の言葉に、一瞬笑みを絶やしたジュリアスのあの表情が忘れられない。
わたくしが祝ってさしあげる。
ヴァイオリンを出すと、ふと思いついてロザリアは、最初からあの『海』を弾き始めた。心持ちゆっくりとしたテンポで弾いてみる。ジュリアスが旋律を聴き取ることができるのであれば、聴いてもらってピアノを弾いてみてもらいたいと思った。
それにしても。
『海』を弾き終えるとロザリアは練習曲の楽譜を繰りながら思った。
それにしても、ジュリアスは何歳になったのだろう?
作品名:あなたと会える、八月に。 作家名:飛空都市の八月