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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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あなたと会える、八月に。

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 同行しない、ではなく、同行できないと、わかっていた……わかっていたからあのように私を焚きつけて。
 「……ジュリアス?」
 ロザリアの方が心配げにジュリアスの顔を覗き込む。そうやってジュリアスを見つめるときの表情は、ジュリアスのよく知るロザリアの顔だ。
 同い年になっても−−たぶん、私の年をずっと越えてしまっても。
 「いや……では、去年の八月の時点ではもう」
 「もちろんわたくし、とっくにお話は断っていたわよ。だから」少し辛そうな表情になってロザリアは、再び目の前のジュリアスに顔を向けて告げる。「『関係のないこと』って……言ったの……」
 「そう……か」
 「ごめんなさい……」そう言ってロザリアは頭を下げる。「無神経なことを言ってしまって」
 相変わらずロザリアは潔い。
 けれど謝るのは早合点した自分の方だ、とジュリアスが言おうとすると、ふっ、と顔を上げてロザリアは笑う。
 「ばあやから、亡くなる少し前に言われたの。いくら大神官様からの話とはいえわたくしが、素直にご紹介の話を受けるなんて不思議でならなかったって。だってこの小屋を買ってしまうほど、『八月』に気合いを入れているわたくしが、そんな……他の男性と」



 ロザリアから笑顔が消えた。消えて真っ直ぐジュリアスを見据える。
 「わたくし、あなたに言ったわ」
 その唇が、言葉を紡ぐ。
 ロザリアにとっては懐かしい、けれど脈々とした思いの丈を。
 「ジュリアスでなければ嫌なの」
 ジュリアスにとってはほんの少し前の、けれど今は甘く我が身を縛るその言葉を。
 「ジュリアス以外は嫌なの」



 ジュリアスは目を閉じる。
 閉じて、その名を呼ぶ。



 「……ロザリア」



 そのとたん、ロザリアの動く気配がした。
 ジュリアスに呼ばれてロザリアが、ジュリアスの欲するものを与え、一方で……たぶん自分自身が欲するものをジュリアスから奪おうとしている。
 肩を、柔らかく掴まれる。
 そして頬に、もう片方の手が添えられたかと思うと、ふわり、とジュリアスの鼻先に温かみが近づいてくる。
 その間もジュリアスは動かない。
 動かずに待っている。
 微かに……頬に添えた手の指先がこの暑さの中、冷えて震えている。けれどその唇は、思っていたよりもずっと熱く、激しさを伴いながらジュリアスの唇を覆った。