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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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あなたと会える、八月に。

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◆9

 それはアンジェリークが女王になって、初めて迎えた一つの星の終焉だった。
 どうにかくい止めたいと思っていたのに、それが果たせなかった。もうすぐあの星は砕けて落ちる−−アンジェリークはそれがとても辛くて、星の間で一人、泣きじゃくっていた。
 それでも、一方では嬉しい話もあった。
 ジュリアスから聞かされた、ロザリアとの話には驚かされ、それと同時にとても感動し−−疑問にも思った。
 どうして一緒に暮らさないのだろう。
 私、そのためだったら、女官でも王立研究院でも……ううん、ロザリアなら補佐官になってもらってもいいと思っている。それなのに。
 「どうして? だってジュリアスだって、ロザリアと一緒にいたいって思うでしょう? このままじゃあなた」
 ……ロザリアを見送るしかない−−
 そのときのジュリアスの言葉を私は忘れない、とアンジェリークは、ひどく真剣な表情でロザリアに向かい、言った。



 「本音を申せば……」一瞬のとぎれのあとジュリアスは、思い切ったようにアンジェリークの前で吐露した。「手放したくありません。このまま引きずってでも聖地へ連れ帰りたい。このまま……同い年の今のまま……ですが」
 謁見の間でない、こじんまりとした控えの間でジュリアスは、片膝をついたまま少しだけ親しげにアンジェリークに向かって告げる。
 「あなたが宇宙を統べる女王で、私が光の守護聖であるように、ロザリアはカタルヘナ家の主。どのようなものであっても……その役目の負う義務や責任に軽重の差はない−−」
 だから、各々の場所で生きるのだと。
 けれど、八月には会えるので、とジュリアスは、とても嬉しそうに言った。
 なんと、この私の誕生日を祝ってくれるのですよ、幼い頃からずっと、と。



 「何とかしてあげられたら、と思っても、どうにもならない。私、とてもそれが歯がゆくて、星のこともあって本当に辛かった。そうしたら」
 いきなり、声が聞こえた。
 『どうか泣かないで、アンジェリーク』
 それまで唇を震わせたままどうにか涙を堪えていたロザリアの、瞳が大きく開かれる。
 「そ、それは……!」
 「私も驚いたわ」微笑んでアンジェリークは続ける。「でもほら、考えてみればあなたが星に願いをかければ、それは私にも聞こえるの。それはエリューシオンとフェリシアのときと一緒」
 あの、新宇宙への星の移行の際、守護聖とアンジェリークが星の間に籠もっている間、一人フェリシアとエリューシオンを巡り続けたロザリアが、サクリアを与えてほしいと願ったとき、それはアンジェリークにそのまま届いた。
 それと一緒。
 「だから」真っ直ぐロザリアを見つめ、アンジェリークは告げる。「その後の、あなたの願ったことは全て聞こえたの」



 わたくしは、歳を取らない。
 わたくしは今このとき、ジュリアスと同い年のまま時を止める。



 「あ……」
 「その後も聞こえちゃった」肩をすくめ、アンジェリークは悪戯っぽく笑う。「私にはちょっと……刺激的だったけど」
 思い出して、一転、顔を赤くしたロザリアが思わずジュリアスを見た。そのジュリアスが苦笑して小さく肩をすくめてみせたから、ますますロザリアは赤くなった。その様子を笑って見守りつつアンジェリークは話を続ける。
 「とにかく私は、全力を尽くしてその願いを叶えなければいけないと思ったの。で、思いついたのがこれ」
 ゼフェルから石を受け取るとアンジェリークはそれを掌に載せ、ロザリアの目の前に広げてみせた。
 「何か、見える? 何か、感じる?」
 「え……あの」今さらながらロザリアは、受け取って以来、長く付き合った石を見つめた。けれど。「いいえ……わかりませんわ……」
 「……でしょうね」ふっと笑ってアンジェリークは、それをリュミエールに見せる。「リュミエールはどう?」
 穏やかに笑ってリュミエールは、ロザリアと石を交互に見つつ言う。
 「陛下の……女王のサクリアの迸<ほとばし>る様がよく見えます」
 横でゼフェルが笑って言う。
 「すっげー勢いだぜ、陛下の元気っぷりと一緒だ」
 「もう、ゼフェルってば」
 笑ってアンジェリークはそう言うと、再びロザリアを見る。
 「確かにあなたは飛空都市から何も言わず出ていった。だから私の……サクリアの力の及ばない所で、聖地の外の時の流れを生きるようになった。けれど」
 ロザリアを見つめる、人なつこい笑みが、厳かなものへと変化していく。
 「女王候補だったあなた自身の、願う声は私に届き続ける。そしてそれは逆に、私のサクリアの影響を十二分に受けることができるということ」
 だから、そのための縁<よすが>を与えた。
 ルヴァに頼んで、女王のサクリアを含めやすい石をいくつか選んでもらい、そこからあなたに合う色合いのものを選んだ。
 できるだけ急いで。
 なるたけすぐに。
 あなたがジュリアスと同い年であった時から遠くならないうちに。
 「でもどこまで作用するかなんて、私にもわからなかったんだけど」肩をすくめてアンジェリークは笑う。「だからときどき、その指輪に向けて私のサクリアを与えていたの……聖地とは異なる時の流れにありながら、そこにいても歳を取らない私や、守護聖たちのようにあってほしいと」