あなたと会える、八月に。
ミレイユが言わんとすることをコラはすぐに理解した。
「私からもお願いいたします」頭を深々と下げるとコラは言った。「あなたに来て欲しいんですよ、ロザリア様は」
「愚かな」吐き捨てるようにジュリアスが言った。「何故そのような面倒なことをするのだ? 私には理解できない」
しかし、そう言いながらもジュリアスは立ち上がっている。
「少し、きつく言わねばならぬようだな」
本来ならば、自分の仕える家の娘に対し、そのような態度は無礼だと怒るべきなのかもしれないが、コラはむしろホッとした。
「そなたはここで待機していよ。もしかしたらすれ違いで戻ってくるかもしれぬからな」
頷くとコラは、もう一度深く頭を下げて言った。
「ロザリア様のこと、くれぐれもよろしくお願いいたします」
手を軽く上げるとジュリアスは、ミレイユの後を追ってテントを出ていった。
作品名:あなたと会える、八月に。 作家名:飛空都市の八月