あなたと会える、八月に。
だがリュミエールの表情からはまったくそのようなものを感じない。もっとも、そう感じさせないことこそがこの、優しさを司る水の守護聖たる所以だろうけれど。
ふだんのロザリアなら断ったかもしれない。だが今は、なるべく一人で過ごしたくないと思っていた。よけいなことがぐるぐると頭を駆け巡る。先ほどはジュリアスがエリューシオンの神官との対応を誉めてくれたから一瞬は気楽になったものの、根本的なことが解決したわけではないからだ。
民から寄せられる、あふれるような愛情と尊敬の念。
けれどそれは、自分に向けられたものではない。
「ええ、リュミエール様。お受けいたしますわ」
笑む表情がなるべく強ばっていないことを祈りながらロザリアは、リュミエールに会釈した。
作品名:あなたと会える、八月に。 作家名:飛空都市の八月