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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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あなたと会える、八月に。

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◆37

 ゼフェルは、ロザリアの表情がめまぐるしく変わっていく様子を興味深く見ていた。
 最初に血の気が引いたようになったかと思うと、みるみるうちに頬が真っ赤になり、けれどどうにか気を鎮めようとしたのか、ぎゅっと両手の拳を握り締めると、真っ直ぐゼフェルを見据える。
 何だかそっくりで笑っちまうな。
 ゼフェルは肩をすくめたが、笑うのだけはやめておいた。そっくりだからきっと、ここで笑ったら怒り出すに決まってる−−ロザリアは怒鳴る、そしてあいつは地の底から響くような声でたしなめるって違いぐらいで−−
 「……どうして……ですの? ゼフェル様」
 へっ、自分からは絶対に白状しないってところまで一緒だぜ。
 堪えきれずゼフェルは笑ってしまった。案の定、ロザリアの怒号が飛ぶ。
 「ゼフェル様! お笑いになっていてはわかりませんわ!」
 「オレはわかってるぜ」時間をあまり取らせてはいけないと思い、ゼフェルはてっとり早くロザリアが状況を把握できるよう告げることにした。「ああいう話をするなら、せめてドアぐらい閉めやがれ!」
 ロザリアがぐっ、と言葉を詰まらせる。
 側でロザリアのばあやが、オロオロとした表情でオレとロザリアを交互に見てる。こんなばーさんがジュリアスに怒鳴っただなんて、ビックリだ……もっとも、内容的にゃオレも守護聖だからかなりキツいんだけど、ばーさんの気持ちもよくわかる……。
 「ぐだぐだ言ってる暇があったら、とっとと荷造りしろってんだ。今すぐ必要ねー分は、寮の管理人がおめーん家へ送る手筈になってっからよ」
 「……ゼフェル様……?」
 ようやく落ち着いてきたらしいな。
 「……ああ、言っとくけど、そーいうのは全部ジュリアスがやってっからよ、細かいことについちゃ、オレは知らねー」
 「ジュリアス……さま……が?」
 完全に表情が変わったな。これまたビックリだ。
 こいつ、本当にジュリアスのことが。
 「でも、あの……わたくしのやろうとしていることは、ゼフェル様やジュリアス……様のご迷惑になることで」
 「黙って出ていくってのが後ろめたいってんだろ、わかってる」
 そう言ってゼフェルは頷く。
 「けど……いいから。何も心配すんな。ちゃーんと、おめーを家まで送ってやっからさ」
 そう言っている間にロザリアが、初めて会ってから今までの中でたぶん−−最も深く頭を下げた。
 「……ありがとう……ございます……!」
 ……ここまで一緒だと、笑う気にもならねー。
 心の中でひっそり、ゼフェルはごちる。