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学園小話

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人殺し ……滝独白


 投げつける手裏剣と違い、この戦輪は敵を裂いて戻ってくる。
 狙い通りならば、刃は赤く染まってくれる。

 戦忍になるのかと問われたとき、そうなるだろうと答えた。
 赤く染まった戦輪には手ごたえを覚えるし、なによりこの優秀な才は使わなければ損というもの。大体、この気ぐらい高い性格が邪魔をして、ほかの忍働きなど難しいことぐらい自覚済みだ。

 血糊を払い、息を潜める。
 戦輪は遠距離攻撃を可能とするが、相手に自らの居場所を伝えてしまう弱点を持つ。
 一人は殺した。しかし忍が一人で行動しているとは考えにくい。


 幾度も授業で窘められてきた。
 火器を扱うとき、クナイによる肉弾戦を行うとき、この線輪を操るとき、先生は繰り返す。
「これは人を殺せる道具だからな」
 きっと四年生で人を殺すのは、早すぎかもしないが遅すぎではない。ともすればお気楽な低学年から、一気にふるいにかけられる高学年。その過程において、誰もが直接的に、間接的に敵を殺すことを覚えていく。
 もちろん、まったく誰も傷つけないで卒業する忍たまもいるという。それはそれでひとつの選択だ。誰も彼も、こうして血に染まった獲物を持つ必要はない。


 かさりと下草を踏む音が響く。
 やはり敵の目は欺けなかったか。
 全身をそばたて、相手と己の距離を探る。

 人を殺す道具を扱わせたら、私は学園一だから。 だから誰よりも一番上手に敵を屠ってみせる。
 それがこの滝夜叉丸の生きる道だ。

 忍んだ木陰から飛び出すと同時に、指に挟んだ戦輪を放つ。
 またひとつ、血飛沫が舞った。

作品名:学園小話 作家名:架白ぐら