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りんはるりん詰め合わせ

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驚く凛をまえにして、遙は話を続けようとする。
「その相手は……」
「待て」
凛が遙の話を止めたのは、相手がだれか聞きたくないからではなかった。
こんなに遙があっさり話す。
その理由がわかったからだ。
自分が水泳バカなら……。
「どうせ相手は、水、だって言うつもりなんだろ?」
遙は水バカだ。
合宿の際、初恋の相手は滝だと真顔で話したらしい。
それを岩鳶水泳部員からマネージャーの江が聞き、江が凛にも話したのだった。
遙は虚をつかれたように動きを止めている。
図星のようだ。
凛は軽い脱力感を覚えた。
水泳のライバルがコイツで、恋のライバルは水、って、俺、どうなんだ。
手のひらをあげ肩をすくめ天をあおぎたい気分だ。
「……たしかに俺にとって水は大切な存在だ。光を浴びるとキラキラと輝き、美しい。触れていたいと思うし、その中にいると安心する」
「はいはい」
遙の水語りが始まった。
凛は遙から少し視線をずらし、適当に相づちを打つ。
水語りに興味はないが、このままいけば自分の心に決めた相手について話さずに済むだろう。
遙の話を聞き流すつもりでいた。
けれども。
「だが」
遙が水語りの途中で、予想外なことに逆接の接続詞を使った。
おや、と思い、凛は遙の顔を見る。
眼が合った。
遙は真っ直ぐにこちらを見ている。
「心に決めた相手が、水だけじゃなくて、人もいるとしたら?」
そう問いかけてきた眼が、一瞬きらめいた。
思わず凛は息を呑んだ。
心臓が大きく打って耳のそばにあるのではないかというぐらい鳴った。







「その相手のことを聞きたければ、自分が話してからにしてほしいな、凛」






いつも無表情なのに、めずらしく愉しげに笑った。












作品名:りんはるりん詰め合わせ 作家名:hujio