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りんはるりん詰め合わせ

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鮫柄学園文化祭冥土喫茶にて



鮫柄学園の文化祭は学園生以外にも公開されていて、多くのひとがやってきてにぎわっている。
その中でも特に盛況なのが、鮫柄水泳部伝統の冥土喫茶である。
「……なんでこんなにクソ忙しいんだよ……」
凛は不機嫌そのものの声でつぶやいた。
「先輩、一番人気ですからね」
そばで似鳥が言った。
凛は無言で似鳥をジロッと見た。
ふたりともメイドのコスプレをしている。
水泳部の中では小柄で幼い顔立ちの似鳥のほうがまだこうした格好が似合っていると思うのだが、なぜか凛のほうが人気がある。やたらと客から指名が入って大変だ。
しかし、嬉しくはない。
事実であろうとも一番人気とか言われたくない。
そう思って似鳥をにらんだのだが、似鳥には伝わらなかったようだ。
「先輩、美人ですからね」
だ・か・ら、美人とか言うな!
そう思い、凛はさっきよりも強く似鳥をにらんだ。
美人だの、綺麗だのは、客から言われまくって耳タコ状態で、そのうえ写真まで撮られたりもして、恥ずかしくて精神的にも疲れてしまっている。
だが、残念ながら今度も似鳥には伝わらなかったらしい。
「あっ、先輩、褒め足りませんでしたか? もっといろいろ褒めたほうがいいですよねっ」
「本気でいらねー」
ぼそっと言い捨てると、凛は歩きだした。
また指名が入ったのだ。
凛は執事の格好をしている三年生部員に指示されたとおりのテーブルに四人分の水の入ったグラスと紙製おしぼりを運ぶ。
そして、ぎょっとする。
進む先のテーブルには岩鳶高校水泳部メンバーがいた。みんな高校の制服を着ている。
すでに江が会いに来ていたのだから、予想できた展開である。
だが、予想したくもなかった展開だった。
「わー、凛ちゃん似合ってる!」
渚が無邪気そのものといった様子で顔を輝かせ、声をあげ、凛に向けて大きく手を振った。
ただでさえ恥ずかしいのに……。
本当は近づきたくないのだが、いちおう仕事であるのでしかたない。
凛は恥ずかしさに耐えながら岩鳶高校生水泳部メンバーの待つテーブルまで進んだ。
高校から水泳を始めた怜はメガネのブリッジを押さえつつ、凛を観察するように見ている。
なにも言われないのはありがたいが、こういうのもなんかイヤだ……。
そう凛は思いつつ、グラスをテーブルに置く。
チラッと真琴のほうを見る。
岩鳶高校水泳部部長は困ったような表情をしている。
「ええと、似合っていると言えばいいのかな……?」
「言わなくていい」
相変わらずの気の使いっぷりだが、今のは余計な気配りだ。
「凛」
遙の声がした。
名を呼んでいる。
凛はギクッとした。
なるべくそちらのほうを見ないようにしていたのに……!
遙に見られたくなかった。
それを察してほしかったのだが、遙には無理だったようだ。
「もっと堂々としていればいい」
堂々となんかできるか!
そう怒鳴りたいのを凛は我慢した。
遙は平常通りの声で言う。
「おまえは俺の自慢の彼女だ」
「俺は彼女じゃねーよ!」
今度は我慢できず、凛は遙のほうを見て怒鳴った。
ばっちり眼が合った。
遙はちょっと不満そうな表情をしている。
そして、少し間を置いてから言った。
「じゃあ、百歩譲って、彼氏でいい」
「なんで百歩譲らなきゃならねーんだ!? 俺が彼氏でなにが不満なんだ!?」
「そんな格好で彼氏とか言われてもな……」
「好きでこんな格好してるわけじゃねーよ!!!」
凛は絶叫した。
そんなふたりの様子を眺めていた真琴はこっそりと渚に話しかける。
「あとで凛はすごく後悔するんじゃないかな」
「えっ、なんで?」
「だって、こんな場所でああいったことを言ってしまったわけだし」
「ああ、バカップルっぷりをみんなに見せちゃったってこと?」
「ばかっぷるって……」
「いいんじゃない? 結局、幸せなんだったら」
渚は天真爛漫な笑顔で楽しそうに答えた。










作品名:りんはるりん詰め合わせ 作家名:hujio