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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 11

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 先ほど降った数分間の雨で地面に水流ができていた。それはアクアストーンから小川へ流れ込み、小川はすぐに海へと繋がっていた。
 驚くべき所はここからだった。水流が輝いている。キラキラと光の粒子が水の中を漂い、小川、そして海までも光で満たしていた。
 光の粒子は沖まで広がり、南東の方角に海原を漂うように伸びていた。
「あの方角は、間違いない、アクア島じゃ…!」
 ヴァッサは言った。
「もしかして、あの光はアクア島まで続いているのですか?」
 メアリィが訊ねた。
「恐らくな、そしてアクアロックに変化を来しておるはずじゃ」
 ヴァッサの言う変化とは、アクアロックの開放を意味していた。
「今ならば恐らくアクアロックを閉ざしていたイオアム像が無くなっておるはずじゃ。メアリィ、そしてロビン、これからお主らにアクエリアスの石を預ける。どうかそれをアクアロックに行って戻してきてはもらえんか?」
 ロビン達の旅は急ぐものではなく、このガラパス島へ来たのも特に目的があったわけではない。頼みを断る理由は無かった。
 ロビンとメアリィは顔を見合わせ頷くと、ヴァッサの願いを聞き入れることにした。
「分かりましたわ。私達がアクアロックへその石を持って行きましょう」
「おお、ありがたい!それではちょっとワシに付いてきてくれ。アクエリアスの石はワシの家にあるのでな」
 ヴァッサは歩き出した。メアリィ、ロビンもその後に続いた。
     ※※※
 ウェイアードの南の極東、ガラパス島より南西の方角に位置する無人島、アクア島。その島には何もない、過去に人が住んでいた形跡さえも。
 あるのはただ一つ、島の中央部、三方を川に囲まれた岩山アクアロックのみである。
 岩山全部が水の力に満ちており、その麓はイオアム像が永遠に吐き出す水によって水浸しとなっていた。山の頂上には大きな泉があり、幾つも分かれた溝から滝となって麓に流れ込んでいた。これもアクアロックの麓を水へと沈めていた。
 ロビン達はガラパス島から約三十分をかけ、アクア島へ船でやって来た。浜辺へ碇泊し、後は歩いて島の中心部を目指した。ほんの数分程でロビン達はアクアロックへたどり着いた。
「これがアクアロックか…」
 ロビンは目の前にそびえる岩山を見上げた。ジパン島にあったガイアロックとどことなく似ているような気がした。同じエレメンタルロックである以上それは必然であった。
「やれやれ、オレ達がいない間に知らない爺さんから妙な事引き受けやがって全く…」
 ガラパス島の浜辺で遊んでいたジェラルドはロビンに呼ばれた事で遊びが中断させられ、不満そうに口を尖らせた。
「まあ、どうせ暇だったんだんだ。ちょっとくらい頼まれてもいいだろう」
 リョウカは言った。彼女はこう言っているが、昼寝の最中に起こした時は不機嫌そうにしていた。
「すみません、私が皆さんの事を考えずに引き受けたばっかりに…」
 メアリィは安請け合いしてしまった事を仲間に詫びた。
「いいんですよ、やっぱり困った人を助けるのは大切ですから」
 イワンは言った。彼だけは経緯を話したとき、嫌な顔一つしないで頼みを引き受ける事に同意した。
「そうだぞ、ここまで来ておいてグダグダ言うのは男らしくないぞジェラルド」
 リョウカは挑発するように言った。
「何だと!」
「ほらほら、ケンカするなって」
 ロビンが間に割って入った。
「やっとアクアロックに着いたんだし、さっさと登ろう」
 イオアム像の吐き出す水や岩山の頂上から流れ落ちる水ですっかり水浸しとなったアクアロックの麓を、ロビン達は靴に水が入らないよう注意しながら歩き出した。
 ヴァッサから聞いた話によると、彼が若い頃アクエリアスの石を取ったのはアクアロックの内部であったとの事である。
 アクアロックの内部はなんとも不思議な空間であった。あらゆる所に水が満ちており、古代文明の遺跡のように、岩山の洞窟とは思えないほど綺麗な場所だった。
 ヴァッサがアクエリアスの石を見つけたのは、アクアロックの最深部、大体中央付近であった。そこはそれまでよりもかなり広い空間となっており、真ん中には謎の大きな部屋があった。
 空間の両端には水がまるで何か見えない壁のようなものがあるかのようににせき止められており、一直線に部屋へと道が通じていた。ヴァッサはそれに気付くことなく、台座に置かれたアクエリアスの石に手を伸ばしてしまい、溢れ出した水に流されたのだった。
 アクアロックはなかなかに険しい岩山だった。ほとんど垂直の岩壁を僅かな出っ張りに足を掛けながら登らなければならず、さらに時たま流れ落ちてくる水に注意しなければならなかった。
「はあ、はあ…、ちきしょう、キツいぜ…」
 ジェラルドは一段目の岩壁を登りきり、地面にへたり込んだ。
「ジェラルド、上!」
「へ?」
 ロビンが叫ぶのと同時にジェラルドは上を見た。
 なんと大量の水が流れ落ちて来るではないか、ジェラルドは慌てて避けようとした。しかし、かわしきれず水流に飲まれ、また下の方に落ちた。
「ジェラルド!」
 ロビン達は一斉に彼の落ちた下の方を見た。
 ジェラルドは下の方でびしょ濡れになって尻餅をついていた。
「いてててて、そして冷てえ!」
 服はびしょびしょで水は下着にまで浸入しており、彼のトレードマークとも言える逆立った髪の毛はすっかりつぶれてしまっていた。
「お〜い、大丈夫かジェラルド?」
 ロビンは訊ねた。見たところ大きな怪我はしていないような感じがした。
 案の定、ジェラルドに大した怪我はなく、かすり傷程度だった。ジェラルドはすぐに立ち上がる。
「うわ、マジかよ!?パンツまでぐしょぐしょだぜ…」
 ジェラルドは取りあえず顔に垂れる前髪を払い、気持ち悪そうに服の水気を切った。
「どうやら大丈夫みたいだな」
「ほら、早く登ってこいジェラルド。置いてくぞ」
 リョウカが急かした。
「ちょっと待ってくれよ、ってうわぁ!靴がぐちょぐちょいってやがるよ…」
 水にすっかり濡れてしまい、ジェラルドの気分も最悪だった。
 その後もロビン達は岩山を登り続けた。ジェラルドの二の舞とならぬよう、上から流れてくる水には十分に注意した。
 場所によってはイオアム像の吐き出す水のせいで進めないというところもあった。そんな時にはロビンのエナジーによって近くにある岩を押し、像の口を塞ぐことによって水をせき止めた。
 しばらく登り、岩山も中腹に差し掛かろうかというところでロビン達は奇妙なものを見つけた。
「な、なんだこれ!?」
 ロビンは驚き思わず声が出てしまった。
「滝が、逆に流れてますね…」
 メアリィの言うとおり、何と滝が上に流れている、つまりは昇っているのだ。こんなものは今までに見たことがない。
 自然ではこんな事があるはずがない、何らかの力が働いていることに間違いはなかった。
「ちょうどいい、これに飛び込めば一気に上まで行けるんじゃないのか?」
 リョウカが言った。
「そうだな、どうせオレはびしょ濡れだし、景気よく飛び込むか!」
 ジェラルドは賛成のようだった。
「じょ、冗談じゃない!」
 ロビンは叫んだ。あまりに慌てたせいか、声がだいぶ裏返ってしまった。