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Wizard//Magica Infinity −6−

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・・・

−ザっ…ザっ…−

「ふぅ…ふぅ…これで、最後!」
「ふぃ~、終わったよ、凛子ちゃん」

「えぇ、お疲れ様。二人とも」


あの後、俺達は木の下に大きな穴を掘り、予言日記が入ったタイムカプセルを埋めた。
凛子ちゃんは休ませ、俺と俊平の二人で掘ったためかかなり時間がかかり、既に夕日が登ろうとしていた。
あの時と同じ、綺麗な夕日がダムに溜まる水面に映し出された。


「これで、全てが終わったわ」
「あぁ…今日の部活動は、おしまいだ」


「ねぇハルトくん」
「なに?凛子ちゃん」

「探検部の部活動は、楽しかった?」


彼女は笑顔で俺に聞く。
俺の答え…そんなの考えずともすぐ口から出た。


「楽しかったよ、みんなと笑って、みんなと馬鹿やって、本当に楽しかった」
「そう、良かった…これで、私も満たされた」
「えっ…」




「もうやり残したことは全て終えたわ、いいわよ、コヨミちゃん」




森の奥から、人影らしきものがこちらへと近づいてくる。
いや、その人影が誰なのかすぐに解った。

「いいのね、凛子」
「えぇ、あとはあなただけよ」

「コヨミ…」


コヨミは魔法少女の姿で俺達の元へと姿を現した。
凛子ちゃんと俊平は特に驚かない。
やはり、知らなかったのは俺だけってことか。

「ハルト、約束の時よ」
「あぁ、わかっている」

次第に、風の音すら聞こえなくなった。



「だけど…その前に聞いてほしい。私の本当の気持ち」
「え…?」

予想外だった。
いきなりのことで俺は間抜けな声で返答をしてしまった。


「私、ずっとハルトを騙してきた」
「馬鹿、全部俺の為だって、あれほど…」
「そう、最初はほんの些細な、敷いて言えばただの情けだった」


「コヨミ?」



「あなたがこの村に越してきた時から私はずっとあなたを見ていた。親から捨てられ、ずっと一人ぼっちだったあなたを見ていた。それから幾年の時が経ち、あなたは元気が無くなっていった。それは私も同じだったの。ずっと一人で居るのが…とても辛かった。だから私はハルトを見捨てることができなかった」


嵐の森の中で、私はあなたの手を握った。

このままでは終わらせない。

せめて私のこの魔法の力で、幸せな夢を見せてあげる。


「私は魔力を全て使い、この虚構世界を作った。そこで私達は初めて出会った。あの公園で、あの場所で。でもあなたは私の予想を裏切った。ハルトが眩しすぎたの…。私にはもったいないくらい」
「コヨミ」
「私は…ハルトに救われた。ずっと孤独だった私を率先して、第一に考えてくれた。それからずっと楽しかった。だれかと一緒に過ごす毎日に私は幸福を得た。情けが次第にとある感情に変わっていった。…私、…ハルトの事が好き」
「え…っ」
「だから本当は…気付いて欲しくなかった!」


気がつけば、コヨミは泣いていた。
何か言葉にしたかったが、なにも思い浮かばない。


「ずっと孤独だった私に訪れた、一つの光…それがあなただった。あの時、私が魔法少女になった時から、ずっと望んでいた誰かと一緒に過ごす日常、あなたが答えてくれた…ありがとう…ハルト…!」



だから…もう、長い夢はおしまい。


これは、あなたの夢。



夢なら、覚まさなければならない。



現実のあなたを…。



「答えて、ハルト。あなたはこの世界でこれからも夢を見続けるの?…それとも、この世界を出て、本当の現実を受け入れるの?」


「あっ…」


「あなたは十分強くなった…答えは考えなくても既に出ている筈よ…」


「……っ…」


「ハルト先輩…僕達はどちらの決断でもあなたを受け入れます…教えてください、ハルト先輩、…あなたの本当の答えを」







俺は…。






託されたのかもしれない。




この世界で、






これからの未来を。






俺は…答えなくちゃいけない。








皆から受け継いだ…未来を。








「俺は…この世界を出る。夢から覚める。




俺は…現実を受け止めよう」




口が震える。

手足の感覚が無くなりそうだ。




「…ありがとう、ハルト!」






その瞬間、次第に目に映る光景が白く、なにも無い空間へと変わり始めた。
緑は薄くなり、水や風の音が消えていく。

そうか…夢が覚めるんだ。

俺は、受け止めたんだ。


現実を。




「待て…待てよ!ちょっと待て!!皆はどうなる!!?」




聞かなくても既に結末は知っていた。




「さようなら…ハルト先輩!先輩との日常、本当に楽しかったです!」


「俊平!!」




「ハルトくん、これからはあなた自身の力で前を進まなくては行けないわ…受け継いで、私達の意思を。そしてその目で見て!どれだけ世界が大きいか…私達の望みを、…託したわ」





「凛子ちゃん!!」







「ハルト…」





「待て…コヨミ!俺はもっと皆と一緒に居たい!!俺はまだやり残したことが…っ!!」






「私はずっとあなたを見守り続けるわ」





彼女の身体の温もりが俺の身体に伝わる。

いくら抱きたくても、既に彼女の身体に触ることすらできない。



目の前には既に景色は無くなり、凛子ちゃんと俊平の姿は消えていた。




「待てよ…ふざけんなよ…こんなのって……」





「ハルト…」



「コヨミぃ…」







「あなたが、私達の…最後の希望よ……」


私の力を…全て、あなたに託すわ。



・・・

・・




作品名:Wizard//Magica Infinity −6− 作家名:a-o-w