機動戦士ガンダムRS 第35話 堕ちた獅子
たとえばサオトメがナチュラルなのもザラ大統領がコーディネイターなのも当の自分には、どうすることもできないただの事実でしかなかろう」
ウズミ前代表が自分の考えを述べた。
「なるほど」
アズラエル大統領は、一定の理解をした。
「なのにナチュラル全てをただ悪として敵として攻撃させようとするようなあなた方のやり方に私は、同調することは出来ません。
一体誰と誰が何の為に戦っているのだ」
ウズミ前代表が自分の理念を変える予定は、ないといった。
「仰ることは、解ります。
しかしそれは、ただの理想論に過ぎないのではありませんか?
それが理想とは思っていてもやはりナチュラルは、コーディネイターを妬みます。
それが現実です」
テロで最愛の妻を失ったザラ大統領の言葉には、かなりの重みがあった。
「解っています。
無論我が国とて全てが上手くいっているわけでは、ありません。
しかしだからと諦めては、やがて我等は本当にお互いを滅ぼし合うしかなくなります。
そうなってから悔やんでも既に遅い」
ウズミ前代表は、自分が最も恐れていることを話した。
「だからこそそうならないためにオーブの力が必要なのです」
ザラ大統領がオーブ連合首長国の参戦理由を話した。
「ウズミ様は、軍というものをどう思ってらっしゃるんですか?」
アズラエル大統領が軍に対してウズミ前代表がそう思っているのか質問した。
「昔は、ただの魔よけ効果がある飾り剣であったがもはや飾っておける状況では無くなった。
そう思っています」
ウズミ前代表が軍に対する自分の考えを述べた。
※
パナマは、運命の日を迎えようとしていた。
「第1波ミサイル、発射」
日の出とともにブライアン艦長の命令で攻略艦隊は、一斉にミサイル攻撃を行った。
「ミサイル第4波に続いてマン・マシーン隊第1次攻撃隊を発進させます。
パイロットは、発進準備を行ってください」
マーネリー軍曹が館内放送を行った。
ガンダムサイガーは、カタパルトに固定され発進命令を待った。
※
「しかしパナマには、地球軍の主力もいる。
勝てるのかな」
ドゴス・ギアのブリッジでは、チャップ中尉が作戦が成功するか不安がった。
「アラスカでやつらの出鼻をくじかせたんだ。
ここでも勝って早くビクトリア基地のマスドライバーも宇宙への門を破壊し閉じなければならない。
まさにこの戦いは、天王山の戦いだな」
ブライアン艦長は、ここでの戦いが戦争の勝敗を分けると感じていた。
「第2波ミサイル、発射」
ブライアン艦長が部下たちに命令した。
※
「モビルスーツ隊、発進。
北西より攻撃。
迎撃システム、起動。
味方にやられるな」
司令室では、司令官が命令した。
パナマ基地からモビルスーツ隊が発進した。
同時に迎撃システムが発動し弾幕を張ってミサイルを迎撃し始めた。
「第2波がすぐに来る」
司令官が部下に注意した。
※
「ミサイル第4波に続いて第1次攻撃隊、発進」
マーネリー軍曹の命令でサオトメ率いる攻撃隊第1波が発進しようとしていた。
「アツシ・サオトメ、ガンダムサイガー出る」
ガンダムサイガーが発進しその後方からベースジャバーに載ったユーピテル部隊が次々と発進した。
※
第2波ミサイルは、司令室でも確認できた。
「第2波が来た。
モビルスーツ部隊は、ミサイルの直下より迎撃」
司令官がモビルスーツ隊に命令した。
※
モビルスーツ部隊は、命令どおりミサイルの直上より迎撃を開始した。
※
「第5波ミサイル、発射。
第2次攻撃隊、発進準備。
同時に回避運動用意」
ブライアン艦長が命令した。
艦隊は、モビルスーツ部隊の接近に備えた。
※
この一報は、第7機動艦隊にも伝えられた。
「なんですって?
パナマが攻撃されている?」
ラミアス艦長は、バジルール艦長に確認した。
「未明から攻撃を受けています。
詳細は、まだ分かりませんがおそらくマスドライバーが狙いでしょう」
バジルール艦長が戦況と敵の狙いを伝えた。
「われわれには、防衛の成功を祈るしかできません」
バジルール艦長は、どこかあきらめたようにいった。
※
無事揚陸した第1次攻撃隊は、上空からジン部隊を撃墜した。
「こちら第3中隊。
救援を。
救援を」
通信兵が本部に援軍を求めたがそこにユーピテルが来て彼らを踏み潰そうとした。
直前に彼らは、逃げ出していたため無事だった。
ジン小隊が1機のユーピテルに76mm重突撃機銃を撃ったがシールドで防がれた。
ユーピテルは、120mmマシンガンで反撃しジン小隊を全滅させた。
1基の地対空75mmバルカン砲塔で弾幕を張っていたがユーピテルの接近を許しビームサーベルで破壊された。
「やってやる。
やってやるさ。
この宇宙の旧人め」
1機のジンのパイロットがそういうと重斬刀を持たせて1機のユーピテルに接近したがビームサーベルで重斬刀ごと切られ撃墜された。
1機のユーピテルが歩行で進攻していたが地雷をふみ右脚を破壊された。
※
サイ二等兵とミリアリア二等兵が廊下を走っていた。
目の前にノイマン少尉が現れた。
「パナマが攻撃されてるってほんとですか?」
サイ二等兵がノイマン少尉に質問した。
「そうらしい」
ノイマン少尉は、そっけなく答えて去った。
「アラスカで人が沢山死んだばかりなのに」
ミリアリア二等兵がそう嘆いた。
※
「敵マン・マシーン部隊、第2防衛ラインへ到達」
「第3中隊。
第3中隊。
どうした?
応答せよ」
司令室では、戦況が劣勢であることしか報告されなかった。
「第8防空隊は、南側へ」
オペレーターが部隊に命令した。
「第13独立部隊を展開しろ」
司令官が決断した。
「よろしいのですか?」
副官が確認した。
「何のために作ったモビルスーツ部隊だ。
奴等に我々の底力を見せてくれるわ」
司令官は、コーディネイターの底力を見せ付けようとしていた。
※
サオトメは、1隻のアーカンソー級に接近した。
途中アーカンソー級が艦対空ビームと対空ミサイルで弾幕を張ったが突破され艦体にカスタム・ビームザンバーを貫き撃沈した。
※
第2次攻撃隊も揚陸し攻撃を始めていた。
1機のユーピテルが120mmマシンガンでジン小隊を全滅させた。
「骨のないやつらばかりだ」
そのときそのユーピテルがビーム攻撃で撃墜された。
僚機がビームの発射方向を見ると見慣れないモビルスーツが1機いた。
「あれは、白兵戦型ガンダム?」
パイロットたちは、動揺した。
「いや違う」
それを見たサオトメがパイロットたちにそういった。
※
デュエルダガーは、さらに1機のユーピテルをビームサーベルで撃墜した。
「もう好きには、させないぜ」
「調子に乗るなよ、ナチュラルが」
作品名:機動戦士ガンダムRS 第35話 堕ちた獅子 作家名:久世秀一