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とある2人の無能力者5話

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常盤台のお嬢様が男子高校生を電撃を纏いながら追いかける様は相当シュールな光景だろうが若干数人にとってはもう見慣れている光景でもある。

「こっちだって色々あるんだよ!!お前なら分かるだろ!?」
「アンタの色々ってのは極端過ぎなのよっ!」
「だーっ!俺だって好きでこういう風になってるわけじゃってうぉぉう!?さ、流石に今のは危ないだろうが!?」
「アンタには私の電撃を無効化する訳の分からない右腕があるでしょうが!」
「あるからそんな恐ろしい電撃ぶっ放してくんのかよ!?」
「なくても電撃は浴びせるわ」
「お前鬼だな!?あと効果範囲は右腕限定な!?他の所に当たったらアウトだ!!」
「知るか!いっぺん死んでこい!!」
「ちょい待てマジで殺す気か!?ひぃぃぃぃぃぃぃ!!?」



数分後―




「大体アンタは自覚なさすぎなのよ」
「…何が?」
「アンタの言う色々についてよ」


結局走るに走って行き着いたのはいつもの公園の自販機前のベンチだった。


「私の事もそうだったけど自分に関係ないことにいっつも首をつっこんで、結局最後にはボロボロになりながら一人で解決しちゃってさ」
「んーそうなのかなぁ?俺としてはただほっとけないから…って感じなんだけど」
「それが心配なの、久々に見たと思ったら蒼白な顔しておまけに入院服まとってる知り合い目撃するこっちの身にもなりなさいよ」
「そ、それはまぁ…ごめんなさい」
「どうせそうは言ってもまたそうなるんだろうけど…まぁそれはまた今度でいいわ」
「その話今度があるのな」
「あたり前でしょう、アンタが大怪我して帰ってくるって言うなら毎日言ってやるわよ」


本当に毎日言いに来そうだなと苦い顔をする上条を傍らに御坂はそのまま本題を切り出した。


「細かい話は置いておくとしてとりあえず結論から話すわね」
「あぁ」
「間違いなく奴ら絡みよ」
「はぁ…結局そうなるのか…どっちにしろ何となくは分かってたけどな」


御坂が上条を呼び出したのはここ数日で調べ回って得た情報を伝える為だった。
電話で伝えるという手でも良かったが彼曰く通話料金も馬鹿に出来ない、とのことでこうして直接話す事になったという訳だ。


「でも随分とハッキリ言うのな、何か決定的な情報でも掴んだのか?」
「正直言うとね、私のカンなのよね」
「おいおいカンって…そんなもんで決めつけてもいいのかよ?」
「一応それなりに現場は見て回ったわ、狙いがスキルアウトってなだけあって路地裏ばっかりだったけどね。まぁ綺麗さっぱり何にも無かったわ…不自然なほどにね」

彼女は手に持った缶ジュースを見つめながら一度そこで声のトーンを落とした。

「あの子たちの時と………同じ匂いがするのよ」
「……御坂妹の時か」

上条の脳裏にあの鮮烈な光景が蘇る。
絶対能力者進化実験、御坂妹、超電磁砲、一方通行……さまざま単語がばらばらに思い出されてはそれらが一つに繋がり脳裏に投影されていた。

「アンタにはあの時に話したと思うけどあの子達の実験に関わってた関連企業はかなりの数があったわ。複数に分けていたのは色々な意味があったんでしょうけど…何か問題が発生した場合に責任を押し付ける為の替わり、とかね」
「あの地図に書いてあったやつな。でもあそこに書いてある関連企業は今はもう稼働してないんだろ?」
「まぁね。でも会社とかってのはお金さえあれば簡単に作れるものなのよ、あいつらにとっては何かあれば簡単に切り捨てられる便利なものとして、ね」
「潰されたらまた作ればいい、か。便利な話ではあるけどこっちからしたらいい迷惑だな」
「そういう連中よあいつらは。結果しかみてない奴らってはその過程で何が犠牲になったとしても主目標だけ達成できれば気にしないみたいね」

きっと御坂妹の事を思い出しているんだなと直感で感じた上条だったがあえて口には出さなかった。
誰よりもそのことで悩み苦しんだのは彼女自身だろうから。

「…あーでもよ、その話とその…路地裏で感じた不自然ってのは何の関係があるんだ?」
「えっ?あ、そうねまだ話してなかった……それで一通り回った後に一応と思ってあることについて調べたんだけどビンゴだったわ」
「あること?」
「そ、修繕に関わった企業もろもろについてよ。どうも同じ手口がしてならなかったけどまさか当たりを引くとはね…まぁ本音を言うなら引きたくなかった事実ではあったけど」
「さっきの話からするとその修繕に関わってた関連企業もかなりの数に分けられてた、と?」
「それもそうなんだけど一番問題なのはそのたくさんある企業のどれもクライアントが学園都市のトップである統括理事会ってところなのよ」
「そりゃあ随分とストレートにきたもんだな。普通街角の修繕を統括理事会が依頼なんてしないからな」
「まさにそこね、あいつらが関わってる証拠っていうなら十分な手掛かりでしょ?」
「一番考えたくない可能性にいきついちまった訳か…」
「あぁそれにね、もう一つあるわ」
「んとそれはもしかして裏で手を引いているのが統括理事会以外の別組織かもしれないって意味でのもう一つ、か?」

もう一つ、に何やら期待を寄せ食いついてくる上条をよそに目を閉じて御坂は淡々と述べる。


「残念ながらはずれ、裏で手を引いてるのが統括理事会だっていうことを結論付けるもうもう一つの証拠よ」
「はぁそういうことか…で、その証拠って?」
「あの日アンタも見た佐天さん達を襲った能力者のことよ」
「あの能力者?あいつがどうしたって?」
「以前初春さんが自分たちが見た特徴と予想からある程度の人数に絞って人物を特定しようとしたことがあったんだけど」

そこでいったん区切り缶ジュースの中身を一口啜いため息をついた後に一言こう言った。


「学園都市の書庫(バンク)にそういった人物が登録されてなかったんですって」
「登録されてなかって…能力者なのにか?」
「普通ならね、でもあいつらは違うでしょ。アンタは知らないと思うけどあの子達に会うより前に何度かそういった連中と対峙したことがあったんだけどそいつの能力は書庫に登録されている能力とは全く違うものだった…つまり意図的に書き換えられてたってこと。結局そいつも学園都市の『闇』の一端として作られた能力者だったみたいだけど今回の件はその一件からみてもあの佐天さん達を襲った能力者と関係があると思うの」
「んーでもさ、その能力者ってのもあくまで書き換えられてたってレベルだろ?そもそもその人物すら載ってないってことは事実上存在しない人間になってるわけで」
「あいつらならするわよ、自分達の利益に研究成果が得られるなら何だってする…実際あの子たちは書庫には登録されてないわけだしね」
「そ、そうだな…なんでもやる連中だってこと忘れてた」
「…とにかくそういう訳よ。書庫に載ってないとなるとあの能力者があいつらと関わってる可能性がある…てね。どっちにしろそう簡単にはいかないわ」
「また厄介な話だな。あの時の一件でできればもう関わりたくないって思ってたけど」
「ん?いやちょっとアンタさ、私は別に協力して欲しいとは言ってないでしょ?ここから先実行するのは私一人だけで十分よ」