とある2人の無能力者5話
「そういうわけにもいかないだろ。前回のことも含めてひとりで動くのは俺が許さない」
「ほら出た異常な世話焼き。アンタっていっつもこうやって首突っ込むのね」
「ほっとけ。っていうかさ、何もまだ行動する必要なんてないんじゃないのか?せっかくその証拠とやらを掴んだんだしネット経由でアンチスキルにでも流せばもしかしたら動いてくれるかもしれないし」
「動くわけないでしょ、そんな陰謀説でさ。アンチスキルだって統括理事会の管轄なのよ?」
「そうだけどいざとなったら動いてくれる人達だと」
「待ってらんないのよっ!」
「えっ?」
突然声を張り上げた御坂に唖然とする上条。
その目にはいつの日か一方通行と対峙していたあの時の御坂と同じ目をしていた。
「…なぁお前さ、まだ何か言ってないことあるんじゃないのか?」
「うっ……」
いかにもバツの悪そうな顔をする御坂に上条はもう一度問いかけた。
「おい、知ってること話せよ」
「……アンタって本当なんて言うか…ああもういいわ。私、修繕にあたってた関連企業以外にも実は調べてたことがあってさ、初春さんたちには悪いけどジャッジメントとアンチスキルのデータ内も調べてたの」
「何でそんなんことしたんだ?」
「さっきも言ったけどアンチスキルは統括理事会の管轄下なの。それはジャッジメントだって例外じゃないわ、上の呼びかけ次第では公表してない情報だってあるかもしれない」
「…でそこで何か見つけたってわけか?」
探るような言動で御坂に訊く。
彼女はしばらく地面を見つめていたがやがてこう告げた。
「アンチスキルのデータ何に…今回襲撃された被害者の詳細がのってるファイルを見つけたんだけど。…襲撃されてるのがスキルアウトだけじゃないって…」
「は!?ちょっと待てよ、それってどういう」
「そのファイルにはスキルアウト以外の……レベル0も載ってたのよ」
「……マジかよ」
「私の仲間にも…」
「佐天だろ?」
「えっ?…ああそっかアンタ面識あったのよね。もう察しがついてると思うけどあの子も襲撃される可能性があるのよ…」
「それでお前そんなに焦ってたのか…」
結局のところこいつだって人のこと言えねーだろうが、と心の中で言いながら上条はベンチから立ち上がった。
「なら行動は早いに越したことはないな、まずは何をすればいいんだ?」
「切り替えはっやいわね…全く、世界一の世話焼き男よ」
「ん?何か言ったか?」
「なーんにも?そうねーじゃあ早速だけどおかわり買ってきて」
「はっ!?それはただのパシリだろ!?」
「アンタまずは何をすればいいんだって言ったじゃない、水分補給よ。水・分・補・給!」
「そんなのねーだろーが!」
やっといつもの調子に戻って気かなと互いが互いに思い始めたそのときだった。
「パキッ」
ベンチの後ろで木の枝の折れるような音がした。
「っ!?誰!?」
ベンチに座っていた御坂はすぐに立ち上がり振り返ってから叫ぶ。
目の前には雑木林があった。
ほんの数分前ー
さっきまで初春と一緒だった佐天は初春と別れてから自宅への帰路についていた。
時刻はすでに5時をもわっているがそれでも蒸し暑さが未だに残っていた。
「あの新作のクレープ美味しかったな~、ちょっと値段は高かったけどよしとしよう」
彼女はいつものごとく例の公園に入って行った。
近道ということもあるのだがそれ以上にこういった蒸し暑い日には最適な避難場所になる。
熱いアスファルトだらけの大通りから脱した彼女は公園の道を自宅にむかう形で歩いて行く。
あまり人通りのない道を行きながら彼女は物思いにふけっていた。
「(最近色々あったから何かこう…スッキリしないな~。ジャッジメントもあの事件から手を引いて落ち着いたには落ち着いたけど、初春も何だか元気ないし…そういえば白井さんは何回か見かけたけど御坂さんはめっきり見ないなぁ)」
なんだかいつもの4人組!という感じがしなくなってしまい少し落ち込み気味なのだった。
世間では未だに例の襲撃事件の話が騒がれていて学校でも事件に巻き込まれ無事だった2人、として初春も佐天もクラスメイトやら他クラスからの質問攻めにあっていた。
もっとも初春の場合はジャッジメントとして質問にあう場合のほうが多いわけだが肝心のジャッジメントが例の件から手を引いてしまったせいもあって聞かれるたびにその答えにつまっていた。
彼女自身も親友として彼女を支えたいとは思っているが自分にできることだと限度がある。
能力者でもはたまたジャッジメントに所属しているわけでもない佐天にとって自分が何をすればいいのかと考えるのは中々難しいことだった。
「(会ってないと言えば上条さんともなかなか会えてないなー…ってよく考えると私メールアドレス交換したんだっけ。やだなー私ったら!)」
そんな悩みごともすぐに忘れて早速形態を取り出しアドレス帳を開く佐天。
「(……な、何をかけばいいんだろ!?家族以外の男の人にメール送るなんてしたことないからわかんない…)」
開くなり早速今度は肝心の文章で頭を抱える彼女はうんうん唸りながら夕陽差し込める道を歩いて行ってその先のベンチが目に入った。
そこには…
「(ん?あれって…御坂さんと……上条さん!?)」
慌てて道からそれて街灯の陰に隠れる。
「(何か話してるみたいだけど…ジュース飲みながら公園のベンチでおしゃべりって…2人ってそういう関係だったの!?)」
脳内であれこれと憶測を立てて行くうちに彼女の中で一つの結論が出された。
「(本当はこんなことしたくないけど…御坂さん上条さんごめんなさい!)」
彼女は心の中で謝罪を述べてからこっそり二人の後ろにある雑木林の中に紛れた。
そのままふたりの後ろに静かに回る。
「(…んー、何を話してるのかな…)」
「…あーでもよ、その話とその…路地裏で感じた不自然ってのは何の関係があるんだ?」
「えっ?あ、そうねまだ話してなかった……それで一通り回った後に一応と思ってあることについて調べたんだけどビンゴだったわ」
「(路地裏?ビンゴ?2人とも何の話を…)」
途中から聞いたため何の話をしているのかさっぱり理解できない彼女はしばらくその会話を聞き続けそしてー
「待ってらんないのよっ!」
御坂の大きな声にびっくりする。
「(え?み、御坂さん?)」
「…なぁお前さ、まだ何か言ってないことあるんじゃないのか?」
「うっ……」
「おい、知ってること話せよ」
「……アンタって本当なんて言うか…ああもういいわ。私、修繕にあたってた関連企業以外にも実は調べてたことがあってさ、初春さんたちには悪いけどジャッジメントとアンチスキルのデータ内も調べてたの」
「(御坂さん荷を言って…)」
「何でそんなんことしたんだ?」
「さっきも言ったけどアンチスキルは統括理事会の管轄下なの。それはジャッジメントだって例外じゃないわ、上の呼びかけ次第では公表してない情報だってあるかもしれない」
「…でそこで何か見つけたってわけか?」
何故か。
ここから先は聞かないほうがいいような気がした。
作品名:とある2人の無能力者5話 作家名:ユウト