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ドキプリSS 「独りぼっちじゃない 真琴と猫の数日間」

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「山吹先生、急な診察を依頼してしまって申し訳ございませんでした。ええ、はい。本当にありがとうございました」
 セバスチャンは電話を切り、マナたちに深く頭を下げた。
「完治したわけではありませんが、しばらく安静にしていれば大丈夫だそうです」
「ありがとうございます!」
 自分の猫ではないのに、真琴は勢いよく礼をした。
 ソリティアの部屋内に、マナたち四人と遊びに来た亜久里がアンを囲みながらずっと眺めていた。
「本当に良かったよ、セバスチャンさんが腕のいい獣医さんを知っていてくれて」
 ほっと胸を撫で下ろした後、マナはアンにメロメロになりながら何度も撫でていた。
「それにしても許せません!」亜久里がバン、と机を叩いた。「この子の飼い主はどういう神経をしているのでしょう? 怪我をした猫を、こんな雨の中捨てるだなんて、無責任にも程があります!」
「本当ですわ。可愛そうに……」
 足に包帯を巻かれた猫を見ながら、ありすはそっと撫でた。
「見たところ随分と年を取っているみたいね。十二、三歳といったところかしら?」
「十二歳ってまだ子どもじゃないんでランスか?」
 ランスが無垢な質問を投げかける。
「猫の十二歳はもう立派なおばあちゃんですわ」
 ありすが答えると、ランスは「へぇ」と頷いた。
「それにしてもこれからどうするの?」
「どうするって?」
 何も考えずにメロメロな様子のマナに、六花は呆れながらため息を吐いた。
「この子、誰が面倒見るのよ?」
「あっ……」呆気にとられたマナは、次第に涙目になっていく。「うぅ、飼ってあげたい気持ちは山々なんだけど、でも、動物だけはダメなんだよ~~」
 マナは半泣きになりながらテーブルに突っ伏した。
「まぁそうよね。マナの家は食べ物屋さんだし」
「六花はどうなの?」
 真琴が尋ねる。
「うちも……両親が忙しいし、私一人で面倒を見るのは難しいのよね」
 六花も残念そうに答える。
「私の家では既に血統書付きのペルシャとヒマラヤンがいますし……」
「わたくしもおばあさまが猫アレルギーでなければ……」
 全員が一斉にはぁ、とため息を吐く。
 真琴はしばらくその猫を眺めていた。アンは先ほどからずっと外を眺めている。
 その光景を見て、真琴は「うん」と頷いた。
「いいわ、私が面倒を見る」
「えっ?」皆が一斉に驚いた。「まこぴー、大丈夫なの?」
「そうよ。真琴にはお仕事もあるし」
「そのぐらいなんとかするわ」
 自信満々に言う真琴に、ダビィもやれやれと首を振った。
「しょうがないビィ。まぁ、真琴が仕事をしている間はダビィが面倒を見るビィ」
「ありがとう、ダビィ」
 真琴はアンを抱きかかえた。アンは相変わらず外を向いている。
 ――この子は、もしかして飼い主をずっと待っているんじゃ。
 アンが醸し出している孤独の雰囲気が、少しずつ真琴の心を脈打たせていた。

「じゃあね、アン。いい子にしているのよ」
 ステージ衣装に着替えた真琴は、笑顔でアンに手を振った。DBに抱きかかえられたアンは「うにゃ~」と気の抜けた返事をして、再び外を向いた。
 ――やっぱり、待っているのかな。
 真琴は不安になりながらも、楽屋を後にした。
「真琴……」
 そんな彼女を心配しながら、DBはアンをしばらく抱きかかえていた。
「アン、だなんて、なんだか真琴が王女様を呼び捨てにしているみたい」
 ふとそんなことを考えながら、DBはアンを見る。
 寂しそうなアンの表情は、もしかしたら――。
「失礼、DBさんいる?」
 突然楽屋の扉が開いた。DBがはっとすると、一人の男がいつの間にか中に入っていた。
「あ、ごめんね。ノックするの忘れてた」
 申し訳なさそうに頭を掻く男は、DBも良く知っている人物だ。
「プロデューサー? どうかしたんですか?」
 男は例のアイドルのペット番組を企画したプロデューサーだった。DBも真琴の出演している番組の企画を打ち合わせで何度も顔を合わせており、剣崎真琴の人気に一役買っている人物として世話になっている。
「いや、ほら例のペット企画なんだけど……」
「ああ、それでしたら……」
「ん?」プロデューサーはアンに気がつき、「その子ってもしかしてまこぴーの飼い猫?」
 そう言われてDBは冷や汗を垂らしながら、
「あ、この子は、その……」
「いいねぇ。可愛いじゃないの。うん、是非例の企画出てよ」
「あの、ですから……」
「頼むよ、DBさん」
 にこやかな笑みを浮かべるプロデューサー。
 世話になった人物の押しの強さに、DBは「えっと」や「あの」としか言い返すことができず……。

「ごめんなさい、真琴」
 DBが手を合わせて真琴に頭を下げた。
「ちゃんと『預かっているだけです』って言おうと思ったんだけど、真琴がデビューしたときからお世話になっているプロデューサーさんだから、どうしても断れなくて……」
「いいわよ、別に」真琴は笑顔をDBに投げかける。「別に出たくないわけじゃないもの。お仕事ならきちんとこなすわ」
「真琴……」
 真琴の優しさに、DBは少し泣きそうになった。