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ドキプリSS 「独りぼっちじゃない 真琴と猫の数日間」

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「ええ、私のハムスターは『ピーの助』っていうんです。ひまわりの種よりピーナッツ派っていうちょっと変わった子なんですよぉ」
 アイドルが次々に自分のペットを自慢していく。
 中には血統書付きの豪華な動物や、イグアナみたいな意外な動物も出演しており、生放送の番組は次第に大盛り上がりを見せていった。
「はい、ありがとうございました。えっと、次は……超人気アイドル、まこぴーのペットです!」
 真琴がアンを抱えながらステージに立つ。
「まこぴー、その子は……」
 場の空気が少し淀んだ。
 他のアイドルたちのペットがあまりにも華やかすぎたため、トップアイドルの真琴が飼っているペットに期待が高まりすぎたせいだろうか。彼女が抱えている年老いた猫がいかにもみすぼらしく見えたのはしょうがないのかも知れない。
「アンって言うんです」
「は、はぁ。アンちゃんね……」
 少しやる気が失せたように司会が答えた。
「随分と、その、おばあちゃん猫みたいだけど、飼って長いの?」
「いえ、ついこないだです」
「こないだって、ねぇ……」
 スタジオが静まったかと思ったら、少しざわめく。これが生放送でなければ打ち切られていたかもしれない。
 しかし真琴はそんな空気を気にすることもなくカメラを見据えた。
「この子は捨てられていたんです。橋の下で、ずっと心細そうに」
「なんだって?」
「雨の中、偶然ですが私はこの子を見つけました。可愛そうに、怪我もしていました。それからずっと、この子は毎日のように外を眺めています」
 もう一度、真琴はカメラに向かって、更に勢いよく語りかけた。
「だからお願いです。もしこのテレビを見ている人でアンの本当の飼い主さんがいたら、この子を迎えに来てあげてください! 本当に、本当にお願いします!」
 強い訴えの後、真琴はカメラに向かって深く頭を下げた。
 その瞬間、静まり返ったスタジオ内から、パチ、パチと拍手が聞こえ始めた。
「まこぴーは本当に優しいんだね。うんうん、飼い主さん、是非迎えにきてあげてよ」
 司会もいつの間にか泣いていた。そしてスタジオ内は拍手の嵐で満ち溢れていた。

「いやぁ、良かったよ、まこぴー。俺も久々にうるっときちゃった」
 至極ご満悦といった表情で、プロデューサーは大笑いをしていた。
「すみません。せっかくの企画をこんな風に使ってしまって」
「いいのいいの。まこぴーのおかげで視聴者さんたちからの反響も大きかったし」プロデューサーは真琴に向かって親指を立てた。「ま、この調子でアンちゃんの飼い主さんが早く見つかるといいね」
 プロデューサーがにこやかにしていると、楽屋の扉がバタンと勢いよく開いた。
「大変よ、真琴!」
 DBが慌てながら楽屋に入る。
「ど、どうしたの?」
「今、テレビ局に電話があって……」DBはあがった息をなんとか整えた後、「アンの飼い主さんが引き取りに来たいって!」
「なんですって!?」

 真琴は驚いた。
 しかし、その驚きは喜びとはまた違うものだった。

 アンの本当の飼い主が見つかること。それは真琴が望んでいたはず――。

 しかし――。

 なぜだか、彼女の心から不安が拭いきれなかった。

 外の雨が更に強くなった。