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ドキプリSS 「独りぼっちじゃない 真琴と猫の数日間」

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「ふふっ、なかなかジコチューな奴がいてくれてよかったわ」
 公園の外で、マーモが不敵な笑みを浮かべながら、黒く染まったプシュケーを眺めていた。
「マーモ!」
「ん?」現れたマナたちに気がつくと、マーモはプシュケーを見せつけ、「来たわね、プリキュア」
 彼女の足元には、先ほどの飼い主が倒れ、手に持っているはずのケージが道に転がっていた。
「アン!」
 落とした弾みでケージの扉は開いており、そこからよろよろとアンが姿を現していた。
「出てきちゃダメ!」
 真琴の言葉も聞かず、アンは年老いた体をゆっくりと近づけていき、倒れている飼い主の元へ歩み寄った。そして二、三回、飼い主を舐めた後、マーモに向かってふっと怒りを露にした。
「何よ、この汚い猫は」
「アン!」
 マーモはいったん無視しようと視線を逸らす。その瞬間――
「フギャア!」
 弱った身体で、一気にマーモに飛び掛った。刹那、マーモの左腕に小さな引っかき傷を作り、そのまま地面に降りた。
「きゃあ! 何すんのよ、この猫!」
 マーモは地面のアンを一気に蹴飛ばした。
「ニャァ!」
「アン!」
 アンはよろめいて、地面に打ち捨てられてしまう。
 ――そうか。
 咄嗟に、真琴は思った。
 先ほどの飼い主は本当にろくでもない男だった。アンをただ見せびらかすための道具にしか思っていない、今までに出会ったことのないほどのジコチューな人間。
 それでも――。
 アンにとってはたった一人の、かけがえのない存在なのだ。
「ふん、ざまぁないわね」
「許せない」
 真琴は怒りを露にして立ち上がった。
「あら、やるっていうの? ま、こっちは元からそのつもりだけどね。でもその前に……」マーモは転がっているアンに目を向けた。「私に傷をつけたこの猫から先に始末してやらないとね」
「アン!」
 マーモがアンに向かって手を振りかざそうとした――、その瞬間だった。
「ふんっ!」
 マーモの前を瞬時に何かが横切った。と思えば、道に転がっているはずのアンの姿が見えなくなっていた。
「大丈夫、気絶しているだけです」
 いつの間にやら現れたセバスチャンがアンを抱きかかえていた。
 そして、彼の横にはありすと亜久里の姿があった。
「お待たせしました、皆さん」
「セバスチャン、アンちゃんのことは任せましたわ」
「かしこまりました、お嬢様」
 揃った五人を見据えて、マーモはふん、と鼻を鳴らす。
「あーあ、もう気分が悪いわ。しょうがない、さっさとはじめちゃいましょ」そう言ってマーモは黒く染まったプシュケーを両手で翳した。「暴れろ、お前の心の闇を解き放て!」
 ――ドクッ!
 ――ドクンッッ!
 プシュケーの闇が膨れ上がり、誕生したのは、大きな檻。いや、檻の形をしたジコチューだった。
「ジコチュー! オリノ檻ニ入レテ見セビラカシテヤルー!」
「いくよ、みんな!」
「うん!」
 四人は一斉にラブリーコミューンを手にした。
「アイちゃん、いきますわよ!」
「きゅぴらっぱー!」
 アイちゃんが元気よく返事をした。
「プリキュア・ラブリンク!」
 コミューンにラビーズをセットし、「L・O・V・E」とスタイドタッチしていく。マナたちの髪が鮮やかに光だし、それぞれプリキュアの髪型へと変化していった。
「プリキュア・ドレスアップ!」
 亜久里もまた、ラブアイズパレットにラビーズをセットし、ロイヤルクリスタルをタッチしていく。瞳にアイシャドーが塗られ、彼女の身体は次第に大人へと変化していった。
 やがてそれぞれ服装が光を放ちながら変化していく。
 マナはピンク色の――。
 六花は青く――。
 ありすは黄色に――。
 真琴は紫色に――。
 そして亜久里は紅く――。

 五人はそれぞれ、伝説の戦士「プリキュア」へと変身した。

「みなぎる愛、キュアハート!」
「英知の光、キュアダイヤモンド!」
「ひだまりぽかぽか、キュアロゼッタ!」
「勇気の刃、キュアソード!」
「愛の切り札、キュアエース!」

「響け、愛の鼓動! ドキドキプリキュア!」

 全員が一斉に名乗りを挙げた。

「愛を無くした悲しい檻さん、このキュアハートがあなたのドキドキ取り戻してみせる!」
 キュアハートは手でハートの形を作り、胸の前に翳した。