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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12

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 ピカードはエナジーを全て武器の先に込めた。水のエレメンタルを示す水色に輝いた瞬間ピカードはそれを解き放った。
『ダイヤモンドダスト!』
 ダイヤにも匹敵する硬度を誇る氷の粒が一気に吹き出した。それが霧の中で動きを止めているワイバーンに襲いかかり、ダイヤモンドの硬さの氷の礫はワイバーンの体を粉々に砕いていった。
 霧が晴れ、ピカードの瞳の色も元に戻った。
「やったわね」
 シバはウインクした。
「いい支援でしたよ」
 ピカードはぐっと親指を立てた。
 ワーウルフの爪が素早くガルシアを襲った。あまりの素早さにガルシアは肩口を切り裂かれた。空中に鮮血が舞う。
「大丈夫、兄さん!?」
 裂かれた肩を押さえ膝を付くガルシアにジャスミンが駆け寄った。
 次の標的にと今度はジャスミンへと爪が襲いかかる。
「危ない、ジャスミン!」
 爪はジャスミンの背中まで迫っていた。
『プロミネンス!』
 ジャスミンは炎の渦を巻き起こし、二人の体を包み込んだ。本能で察知したワーウルフは爪を引き、自ら後方へ飛び退いた。
「平気?兄さん」
 ジャスミンは再度確認する。ガルシアは大丈夫だ、とだけ答えると『キュア』を発動し、傷を治した。
「やはり人のような姿をしていても獣は獣だな…」
 ガルシア達を包み込む炎を警戒し、ワーウルフは攻撃できないでいる。獣らしく炎が弱点のようだった。
『フレアストーム!』
 プロミネンスの力を込め、撃ち出されたエナジーは普段のそれとは威力が段違いであった。巨大な炎が渦を巻いた。
 しかし、ワーウルフは持ち前の素早い動きでその炎に対応した。大技を撃った後で隙だらけとなったジャスミンへと反撃の爪が襲う。
「ふん!」
 ギン、という音と火花を立て、刃と爪がぶつかり合った。今度はガルシアがジャスミンを庇った。ガルシアと魔物の距離は最早お互いの息づかいが分かるほどである。すかさず反撃のエナジーを発動する。
『スパイアクレイ!』
 土の槍を降らせる。しかし、ワーウルフは機敏な動きでそれにも対応する。
 再び二人と魔物との距離が開いた。ジャスミンが再びエナジーで炎を取り巻く。
「ジャスミン、炎を剣に変えるんだ」
 ガルシアは唐突に言った。
「兄さん、何を言って!?」
 確かにジャスミンにはプロミネンスで出した炎で剣を作る力を得ている。しかし、以前シンから剣の扱い方を訊ねようとしたが、手違いによってうやむやになり、未だ剣の扱い方は知らない。
「いいから俺の言うとおりにするんだ」
 ガルシアが言うには炎を背後で剣に変え、魔物に見せないように持て、との事だった。
「大丈夫、俺に考えがある」
 まだ迷っているジャスミンをガルシアは説得する。ワーウルフは今にも飛びかかって来そうな目でこちらを見ていた。
「早く!」
「うっ…!」
 ジャスミンは言われるがままに炎の剣を作り出した。そして先ほど言われた通り背後に隠すようにして持った。
「よし、行け!ジャスミン!」
 ガルシアはジャスミンの背を押した。
「きゃっ!?」
 こちらが動きを見せたため、ワーウルフも再び攻めの姿勢をとった。ジャスミンの目前へと魔物の爪が迫り来る。
「今だ、剣を突き出せ!」
 ジャスミンは慣れない手つきで剣を突き出す。しかし、ワーウルフに届く前に剣はジャスミンの手から放れてしまった。
 しかし、次の瞬間この炎の剣の特性が発動した。一瞬にして剣は炎となって燃え盛ったのだ。
 ワーウルフは炎に身を包まれ悶え苦しんでいた。
「伏せろジャスミン!」
 ジャスミンを半ば強引に屈ませ、ガルシアはとどめのエナジーを撃った。
『スパイア!』
 現れた土の槍はワーウルフを貫き、壁へと追いやった。壁に激突すると炎と共にワーウルフは雲散霧消していった。
 犬の騎士の細剣が虚空を切り裂いた。ドッグウォリアーの目の前にはシンの姿があった。しかし、シンは既に背後に回っていた。
「転影…」
 短剣を鞘に戻し、後ろからドッグウォリアーをがっちりと抱きかかえた。そして共に宙へと舞い上がり、最高点で身を翻した。
「イヅナ落とし!」
 落下の勢いを使ってドッグウォリアーの頭を思い切り打ち付けた。頭骨は粉々になり、首の骨もゴキリと曲がり、ドッグウォリアーは血を噴き上げて事切れた。
「よし、これで全部片付いたな!」
 宙を一回転し、着地するとシンは手を叩きながら言った。
「なかなか手強い相手でしたね…」
 ピカードが言った。
「まあ、なかなか楽しませてくれたしな。あの犬っころ」
 しゅうう、と蒸気のように消えゆくドッグウォリアーの死骸を目に、シンは先の戦いを思い出し、笑みを見せた。
「ガルシア、ジャスミン、先に進むわよ」
 しかし、二人はシバの呼びかけに答えなかった。なにやら言い争いをしている。
「なんであの時急に押したのよ!?怖かったじゃない!」
 ジャスミンは軽く涙目になりながらガルシアを責め立てていた。
「まあ、落ち着け、ジャスミン。策を事前に告げなかった俺にも非はある」
 胸を叩いてくる妹をガルシアは宥めた。しかし、攻めの手は治まる気配がなかった。
 ガルシアの策、それは獣とプロミネンスの特性を最大限に活かしたものだった。
 ワーウルフは人型と言えど所詮は獣である。火を恐れ、火に弱いはずである事は容易に考え得た。しかし、あの魔物の動きは素早く、ガルシアの攻撃の全てがかわされてしまっていた。ジャスミンの攻撃も同様に炎の攻撃をしたところで魔物の素早い動きに翻弄されていた。
 そこでガルシアは策を考えついた。まずはプロミネンスの特性を利用することであった。ジャスミンは練習の末にプロミネンスを剣に変える術を手に入れていた。炎を剣に変え、更に後ろに隠す事でワーウルフは炎を恐れる事なく攻撃してくるようになる、ここで獣の特性を利用した。そしてここからがガルシアの策最大の狙いであった。
 プロミネンスの剣はジャスミンの手から放れれば元の炎の姿へと戻ることを、ガルシアはシンの愚痴から聞き知った。その特性を引き出すべくワーウルフの攻撃に合わせてジャスミンの背を押した。
 案の定、驚いたジャスミンは剣を投げ捨てるように手放した。瞬間、ワーウルフを炎が包み込んだ。ガルシアの策が実った瞬間であった。
 しかし、ガルシアには驚いた事があった。ジャスミンには剣を扱った経験は無いはずであった。ガルシアの策の中でも彼女がただ剣を放り投げてくれるだけで十分だった。
 しかし、ジャスミンはとっさに剣の突きの形を繰り出したのだ。手元こそ不十分であったが、腰の入った中々の使い方だった。
 ジャスミンの剣の技術を、ガルシアは垣間見、彼女の剣の才能の可能性を感じるのだった。
     ※※※
 その昔、およそ数百年も前、更に大昔に錬金術が封印され太平となったウェイアードにて、まだ争いを続けていた民族達がいた。
 アテカのギアナ族、そしてヘスペリアのシャーマン族であった。
 この民族間の関係は大層悪く、事あるごとにお互いに村を襲撃していた。どうしてそれほどまでに民族は仲違いしていたのか、それは彼ら自信にも分からなかった。ただ互いに気に食わない、そんな些細な理由で争いを繰り返しては多くの者が傷ついていた。