二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12

INDEX|8ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 

 モアパは説明した。
「この渦巻きの岩はトルネードロック、そう伝えられている」
 ヴィンが竜巻のような岩に手を触れ、言った。彼の口から語られた事により、ガルシア達はエアーズロックで見た同一のものの名を知った。
「トルネードロック…、か」
 シンは呟いた。
「かつてギアナ族のイエグロスはこのトルネードロックを使い、この砂山を一瞬にして消し去ったというのだ。お前達がギアナ族だと言うのなら言い伝えの通り砂山を消すことができるはずだ」
 モアパは言った。当然の事ながら彼自身はおろか、村の誰にもなし得ていないことであった。
 話を聞く限りでは、どうやらギアナ族のイエグロスはエナジストであったらしい。それも風のエナジスト、まさしくギアナの地のあるアテカ大陸に位置するジュピター灯台が与えし力に違いなかった。
 トルネードロックを後ろに、モアパは言い放った。
「さあ、旅の者達よ、自らをギアナ族の者と我らに信じてもらいたいのならこの砂山、消してみせよ!」
 それはとても力強い言葉だった。あらゆるものをたじろがせるに十分たるものだった。
 しかし、その中で余裕の表情を見せる者がいた。
 シバである。
 彼女だけはモアパの言葉に一切のためらいも見せていなかった。
「面白いじゃない、私が消してみせるわよ」
 シバは名乗りを上げた。
 この名乗りに驚いたのはモアパ達であった。恐らくこれで彼女らの化けの皮が剥がれるだろう、そう余裕を持っていた中での突然の名乗り出である。かなりの驚きを感じるのは当然の事だった。
 しかし、モアパはすぐに考え直す。これまでもこの小娘は勝ち気な態度を示していた。どうせこれもハッタリに違いない、そう思い、表情を元に戻し、言った。
「ふむ、やはり君がやるのか。よかろう、ならばやってみせるがいい!」
 モアパはトルネードロックの横にずれ、シバへ道を譲った。
 シバはゆっくりとトルネードロックへと歩みを進め、その前で立ち止まった。
「頑張ってね、シバ!」
 ジャスミンが声をかけた。
「任せてよ、こんなの楽勝よ!」
 シバは笑顔で返す。
 そして、全員が見守る中、シバは精神集中し、エナジーを使う準備を整える、そしてそれはすぐに終わる。
 体中を血の如く巡るエナジーを、シバはトルネードロックへと解き放った。
『スピン!』
 エナジーの放出と同時に、トルネードロックは輝きを放ち、その上にいくつかの光の球が渦を巻いた。
 次の瞬間、エアーズロックでも行った時同様、トルネードロックによりエナジーが増幅され、目の前に巨大な竜巻が発生した。
 竜巻は見る見るうちに砂山の砂を吸い込み、上空へ振りまいていった。それが少しの間続くと、竜巻の威力は低減していき、遂にはその姿を消した。
 竜巻が消失し、同時にあの積もりに積もった砂は全て消え去っていた。
 モアパ達は目を見開き、すぐ目の前で起きたことがまるで信じられないといった様子であった。
「まさか…、まさか本当に砂が一瞬にして消えるなどとは…!」
「モアパ、この者達、いや、彼女こそ紛れもなくギアナの勇者だ」
 ヴィン、ウィンドは言った。
「どうよ、私の力、分かったでしょ?さあ、そのグラビティの翡翠とやらを渡しなさい!」
 シバはモアパに向き、言い放った。しかしモアパは不意に確認する。
「本当に、あれをやったのは君なのか?」
「何言ってんのよ、見てたでしょ?例えエナジーが見えなくたって私がトルネードロックの前で何かしてこんなふうに砂は消えた。これでもう文句は無いでしょ!?」
 シバが強気な物言いをする中、モアパは一人悶々と何かに悩んでいた。エナジーという聞きなれない単語は耳に入っていない様子だった。
「困った、これは実に困ったぞ…」
「何がよ!?」
「君がギアナの者というのは認める。しかし、グラビティの翡翠は渡せない」
 シバが更に追求すると、モアパはなすすべなく答えた。
 ナバホとイエグロス時代からずっと、勇者とは男の証であるという認識があったのだという。これまでも、そしてこれからもそうした考えは続くことであろう。
 モアパも例外ではなかった。
 シバという少女がギアナの力を用いて、かつてイエグロスが成し遂げた事をしてみせた。仮にシバが男であれば勇者と認め、ナバホとイエグロスの約束通りそれぞれの宝を交換していた。
 しかし、シバは女、それもまだまだ幼い少女である。故に勇者とは認められない、モアパは言うのだった。
「何ですって…!?」
 当然このような理由、シバに納得できるはずがなかった。
「そんなの、ただの男の偏見じゃない!自慢じゃないけど、私はその辺の男より強い自信あるわよ」
「強いか弱いかではない、その前提として男である必要があるのだ」
「どうして、そこまで男である必要があるというの!?シバは十分に素質を持っているじゃない、現に、こうして砂をけしたんだし」
 とうとうジャスミンまで割って入ってきた。同じ女として、シバが認められないのが納得いかなかったのである。
 二人の少女に責め立てられ、モアパはすっかり参ってしまっていた。
「ならば!」
 見かねたヴィンが大声を上げた。一度シバ達も黙る。
「ここは、彼女らにあれをやらせてみるのはいかがか!?」
 再び出たあれという言葉である。しかし、モアパは一瞬にして理解した。
「そうか、決戦の地、トライアルロードか!しかし…」
 しかし、とモアパは言葉を止め、考え込む。
 トライアルロードはナバホとイエグロスが決闘を行った山である。その頂上までの道のりは非常に過酷であり、モアパ達でさえかなり体力を奪われ、村の男達も登っただけで力尽きる者ばかりで、中には途中で倒れる者もいるほどである。
 そんな過酷な試練を、年端のいかぬ少女に課すことなどできるのか。
 いや、モアパは考え直す、これで倒れるようであれば勇者には程遠い、やらせてみるのも一興である。
「あい分かった、ではこの先のトライアルロードで全てを決める。我々三人、シャーマン族を代表して全力でかかろう!しかし、そうなると二対三、公平な戦いではない、もう一人参戦願いたい」
 シバとジャスミンの視線はすぐにガルシアへと向いた。後ろの三人も同様に向ける。スクレータはもとより候補には挙がっていないが。
「行ってきな、ガルシア。リーダーとして二人をちゃんと見てやりな」
 シンは言った。
「妹さんが戦うんです、兄のあなたがただ見てるだけというのはお門違いでしょう」
 ピカードもガルシアの参戦を促す。
 こうなることは粗方予想はついていた、ガルシアは慌てない。
「そうだな」
 ガルシアはシバとジャスミンの間に立った。
「俺も戦おう」
「決まったようだな…」
 ついて来い、とガルシア達は砂山の奥へ連れられた。シン達とはここで一旦別れる事となった。
「おい、シバ!」
 シンが呼び止めた。シバだけでなく、ガルシア達も歩みを止め、振り返る。
「しっかりやって来いよ!」
 シンはニッと笑みを見せる。
「心配しなくても大丈夫よ、シン」
 シバはそれだけ言い、再び歩き始めた。ガルシアとジャスミンも後に続く。