君と過ごす何気ない日常
家庭菜園
この家の庭はとても広い。
ちょっとした家庭菜園だって余裕で出来る。
そんな土地に植えたのは、花の種。四季折々の、沢山の種。何時でも花が咲いている光景と言うのは目の保養になるんじゃないかとそう思って植えた。
ただ、正直言うと植えるときテンション上げ過ぎて何の種をどこに撒いたのか把握できていないものがあったりする。なんで順番良く植えてその都度花の袋を手前の土に埋め込まなかったんだろうって今凄く後悔している。
それでも植物は植物。
ここは日当たりが良いし、適度に水をまいていればきっと、それぞれ自由に育つはず。そう、自由に。例えばそこにミニトマトが出来たり胡瓜が成ったりナスがぶら下がるのを見ようとも問題など何一つ、無い。だって自由だから。
・・・・いや、何で。
それはもう、元から生えていた木々に絡み付き見事な実を実らせたそれらの野菜達は立派に育った。
だから、何でだ?
首をひねってみたものの考えた所でどうにかなるわけでもなし、実ってしまったものは仕方ないとしてちゃんと収穫し、数日かけて全て美味しく頂きました。御馳走様。
そんな、瑞々しい野菜が美味しい季節が終わり、秋が来た。
秋の味覚と言えば何があるだろう。
サツマイモ、柿、秋刀魚にカボチャに栗梨葡萄。たくさんある。あるけれど、残念ながら僕が植えたのは花の種であってそれら食卓を飾る食物ではない。ないのに、どうしてだろう、植えた覚えはないものがこれでもかと言うほどに実っていた。
何度も言おう。植えた覚えはないんだ。
なのに、どうして我が家の庭には今、サツマイモとカボチャ、それから柿が実っているのだ。いや、柿はまだわかる。元々この土地に生っていた木だった。そう、その木は柿だったんだな。納得に頷いた。
でも、なら、なんでサツマイモとカボチャ?
これって放置して勝手になるような食物だっけ?
成らないわけでもないだろうけどこうも見事に実ってるのを見るとやっぱりどこかおかしいと思う訳で。
こうなると疑うべきはやはり、唯ひとりしかいないから。
「…おい、なにがどうしてこうなったのか、10文字以上40文字以内で説明してみろ」
「……いつもの君じゃないぃぃぃ…」
2013/10
作品名:君と過ごす何気ない日常 作家名:とまる