君と過ごす何気ない日常
始まりの麦茶に惑う
今日の夕飯は何にしようか。
チラシを見下ろし腕を組む。
秋も深まる今日この頃、季節の味覚を堪能するのもいいけれど決して手に入れやすい物ばかりではない。やはり日々の食事はスーパーの表示金額との相談の後の話だ。
今日はキャベツが安いらしい。ひき肉は昨日買っておいてあるからロールキャベツにしてもいいし重ね蒸し鍋にしてもいい。それとも改めて白菜を買ってきて湯豆腐を始めるのも悪くないかもしれない。
豆腐と長ネギとしいたけがある。早めに消費させないとしいたけは痛むのが早い。
さて、どうしようか。
悩みながらも立ち上がり台所へと移動する。冷蔵庫から麦茶を取り出しグラスへ注ぎ、飲みながらも悩み続けていれば肩に重みが掛かり顔を顰める。右肩に乗る顎・・・ではなく彼の顔へ向け重いと低く唸れば僕も麦茶飲みたいと返されるのに呆れ、自分で注いで飲めよとボトルを取ってやる。しかし彼は自分自身で注ぐつもりはないらしく、えぇ、と不満を漏らすばかりで僕の肩から離れやしない。
仕方ないので僕が飲み干したグラスに新たな麦茶を注ぎ入れ、肩越しに手渡してやると途端、嬉しそうな声を上げ受け取る奴が次に。
「わぁい! シンジ君と間接ちゅー」
この後グラスを巡り返せ返さないの攻防が繰り広げられるのは言うまでもない。
作品名:君と過ごす何気ない日常 作家名:とまる