君と過ごす何気ない日常
退屈と君
きっと、退屈なんだ。
絶対に、そうだと思うんだ。
居間の、端から端へとごろごろ転がる彼を見て心底暇なんだな、そう思いたかった。
右から左へごろごろごろごろ左から右へごろごろごろごろ。そこで一度ピタっと止まりこちらをちらりと見る。視線が合う。互いに無言。すい、と視線が剥がされた。右から左へごろごろごろごろ。左から右へとごろごろごろごろ。ピタリと止まるとチラリとこちらを見る。互いに無言。彼の視線が僕から剥がされた。右から左へとごろご はいそこで僕の右足がさく裂!!
腹を押さえ呻く彼を見下ろし、埃が立つと一言投げれば悲壮な顔を向けられたじろぐ。そんな顔したってダメ。ダメなものはダメ。絶対にダメ。ダメッたらダメ。
首を横に振って拒否を示すけど、彼の悲壮感溢れる目線は絶えずこちらへ注がれる。
うぐぐ。と喉が鳴った。
お腹を押さえる彼が、「ねぇー」と強請って来た。来た。とうとう本腰入れて強請って来た。どうしたものか。逃げ道を探すが彼は退路を全て絶とうと攻めに転じた。
「ねぇ。どうしてもだめ? 絶対にダメ? 本当にダメ? 何が何でもダメなの? こんなにお願いしてるのにそれでもだめなの? ねぇねぇねぇ!」
しまいには僕のズボンの裾を握りしめ、子供の駄々のようにお願い攻撃を繰り返す。
くそう。いつからこいつはこんなにずるがしこくなったんだ。ああ、最初からだった。くそう。
でも、これは僕が頷かない限り動かないパターンだ、そう思った僕は致し方なくその場に腰を下ろすと膝をぽんぽん、と叩いた。
「1時間だけだから」
それだけなら、許してやる。
そういって、早く来いと催促する。途端、犬のように飛びついてきた彼によって畳の上、押し倒され後頭部をしたたかに打った僕の怒りの鉄拳が彼の頭上に振り落とされるわけだけれど、それくらいは許されるだろう。
どうせ、1時間と前置きしたところでずるずると、夕飯の準備を始めるまで膝枕をさせ続けられるのだろうから。
2013/10
作品名:君と過ごす何気ない日常 作家名:とまる