僕は摂氏36度で君に溶ける
エルヴィンがその長い人差し指を立てる。
「地下街での常識はここでは通用しないことが多い、ということだけ覚えておいてくれ」
そりゃそうだろうな、と思いリヴァイは素直に頷いた。
「では、先に寝ていてくれ。おやすみ、リヴァイ」
「ああ」
もぞもぞと布団にもぐる。清潔なシーツは心地が良い。
「おやすみ、に対する返事は、おやすみ、だよリヴァイ」
子供に語るような口調で言うものだから、リヴァイはまた少しむっとし、一文字ずつ区切って馬鹿丁寧に発音した。
「お、や、す、み」
「いい子だ。おやすみ、リヴァイ」
どうやらエルヴィンは自分の年を勘違いしているようだ、とリヴァイは気がついた。気づいたが、急に睡魔が襲って来たので何も言わず、もぞもぞと体をベッドの片側に寄せる。寝室のドアがパタンと閉められると同時に、まぶたも落ちてきた。
パタン。
作品名:僕は摂氏36度で君に溶ける 作家名:かん