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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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とある夢幻の複写能力SS

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叶は空間移動をしつつ紅葉に電話をかけていた
もちろん携帯電話を握っている訳ではない
ワイヤレスのイヤホンマイクが右耳に装着されている
電話はすぐに繋がった
「紅葉、無事か!?」
思わず叶はマイクに向けて叫んでしまった
『何よ。ただ幼女を送るだけでそんな心配される筋合は無いんですけど』
裏で『幼女うるせー!って、ミサカは…』と聞こえるが叶は気にしない
少なくともそれで番号無しが無事であることは確認出来た
「今何処だ?」
『あんたの家よ。祐樹さんと世間話してたところ』
「…そうか。邪魔して悪かった。じゃあ、そのまま玄関を出てくれ」
『電話越しに人を追い出そうとはいい度胸じゃない』
いつもどおりの応対に叶は大きなため息を漏らした
「…そうじゃねーよ、真面目な話だ。聞かれたくないんでな。…特に、番号無しには」
『…悪かったわね。じゃ、外で待ってるわ』
電話相手の少女は、珍しく罰の悪そうな顔をしていた
数刻後、叶は自宅前の広場で待っていた紅葉を見つけた
「悪いな。こんなとこじゃなくてもよかったんだが」
「祐樹さんはともかく、あの子に聞かれちゃまずいんでしょ」
紅葉はさも当たり前のように言ってのけた
これだからこそ、叶は紅葉には頭が上がらない
だが、いい友達以上の感情はない
二人にとって、お互いは"腐れ縁"というやつなのだろう
「…悪いな」
「謝らないで。そんな利害だけの関係でもないでしょ」
「それもそうか」
言い終えると、叶は少し目を閉じた
次に目を開けた時、その表情は真剣な物になっていた
「簡単に話をまとめると、桐原が監獄から逃げた」
「暗部のお話?」
「ああ。渡里の情報だ」
「渡里君の情報か。信憑性はありそうね」
紅葉は顎に手を当てていた
「それで?番号無しの無事を確かめたのと何の関係があるの?」
叶は言いにくそうにしていた
それはおそらく
「…桐原が、俺のクソ爺と接触したってお話だ」
身内が絡んでいるからだ
「…参ったわね。木原が絡んでいるとはね…」
「というより、木原幻生が絡んでるってところが重要だな。あいつが今まで研究し続けてきた事は、AIM拡散力場、『自分だけの現実』、そして脳波ネットワーク理論…」
二ヶ月ほど前、叶の恩師である木山が起こした事件である幻想御手事件
その中核となるアイテムであった幻想御手の理論を構築したのは木原幻生だった
「…つまり、また番号無しが狙われるとでも?」
「ああ。打ち止めは大丈夫だ。あいつは」
「第一位が側にいる、でしょ?」
「ああ。あいつに任せておけば安心だ」
その頃、その第一位が柄にも無くくしゃみをしたのは言うまでもない
「…ま、あの子が狙われるのは言うまでもなさそうね。どちらかというと狙いやすいし」
「…まあ、俺の方が戦い慣れてないってのもあるよな…」
「というより、あんたのそのチカラってまだ謎なのよね…。あ、ちょっと―」
「断る」
「何も言ってないじゃない」
「どうせ『ちょっと頭の中見せてよ、切開するから』とか言うんだろ」
ちなみに叶の紅葉が言おうとしていた(予定)の部分は妙に高い声だ
それを聞いて紅葉は顔を反らした
「図星か」
「てかさあ、あんたのその妙に高い声どうにかなんないの?」
「唐突だなおい。…まあ、これはなんとも言えないんだよな…」
「それのおかげであんたとカラオケ行ったら友達からあんたと行ったってのがばれなくて済むんだけどね」
「お前が女の曲ばっか歌わせるからだろ」
主に鳴護アリサの曲を
「いや、そんな事言いあってる場合じゃねぇ。それよりも、桐原がクソ爺と会ってたって事だ」
叶は首を振って話題を戻した
「おそらく、桐原が得た情報は脳波リンクのことだろう」
「幻想御手?あんなのすでに処分されてるはずでしょ」
確かに二ヶ月前、事件のあとすぐに全ての幻想御手は回収されていた
そして警備員が丁重に処分した
「理論を構築したのはうちのクソ爺だ。あれの原本くらい持っててもおかしくない」
「なるほどね。…んで、どうすんの?桐原くんを探す当てはあるの?」
紅葉の問いに、叶は苦笑を交えて答えた
「おいおい、俺の能力忘れた訳じゃァねェよなァ」
「口調が本気ね。…あ、そっか」
叶が『暗闇の五月計画』で獲得した一方通行の苛虐性
それを解放すると、ある副次能力が使えるようになる
それは、紅葉もよく知っていた
「『能力検索』ね。なるほど」
「効果範囲が一キロメートルしかねェからあンまり頼りにならねェが、この状態なら空間移動しながらでも検索は出来る。…だが一応、そっちでも頼んでいィか?」
「ええ、任せて。他にも頼んどく?」
「じゃ、統括理事長に通達、"滞空回線"の使用許可を願う」
「無茶言うな。やってみるけど」
「頼むぜ、『案内人』さン」
「無理だったとしても怒らないでね」
「分かってるよ」
そして二人は同時にその場から消えた



叶は先程申していたとおり、学園都市内をしらみ潰しに回っていた
一応目星はつけていた
第二十三学区
学園都市唯一の空路の接続点だ
「…あいつが来るならここかと思ったンだがなァ…」
彼の目の前にそびえ立つ青い塔、宇宙エレベーター『エンデュミオン』を眺めていた
そのエンデュミオンは、先日の倒壊未遂の件により、復旧工事の真っ最中だった
早くてもあと一ヶ月はかかるらしい
「流石にあそこに桐原はいないよなァ…」
叶が検索した結果、半径一キロメートルに物質錬成の能力者はいなかった
しかし、違う能力者は見つけた
希土拡張と言う能力だ
「…いや、希土拡張なんて一人しかいないんだが」
そもそも叶の知り合いに、大能力以上の能力者は少なかった
つまりその能力者というのは、ある一人に限定される
「おっ、やっぱりいた。…って、二人?」
叶は、エンデュミオンの近くに立てられた慰霊碑の前に降り立った
そこには『88の奇跡』と書かれている
無論、軌道エレベーター計画が立案される前に頓挫した、スペースプレーン計画の実験飛行の時の事故の物である
ただし、犠牲者は一人しかいない
それ以外の乗客、乗員は全て生還したのだ
しかし、その犠牲者の名は書かれていなかった
その犠牲者のことは、公にされていないからだ
あの事故の実態は、話すと長くなってしまうので割愛するが…
「よう、シャットアウラと…」
叶は、その人物の名を呼んだ
シャットアウラと呼ばれた少女は、黒髪に黒の喪服のような恰好をしている
そしてもう一人の桃色の髪の少女も同じく喪服のような恰好をし、その手には花束が抱えられていた
「…鳴護。久しぶりだな」
「言うほど経っていないぞ。一週間くらいだ」
「そうだね。…私が"消えて"それくらいしか経ってないし、久しぶりはおかしいよね、天岡君」
桃色の会の少女の名は、鳴護アリサ
一週間ほど前のエンデュミオン倒壊未遂事故にて、最後の奇跡を起こして消えた少女だ
「てゆーか、アリサでいいって言わなかったっけ?」
「無理だ。ちょっと…無理…」
叶は苦笑混じりに答えた
実を言うと、彼女は叶の思い人なのだ
故に、叶はアリサが消えたと知った時、柄にも無く暴れていたのだ
「それよりもだ。なんで鳴護、ここにいる?」
「酷いなぁ。人が消えてたみたいに…。事実だけどさ」