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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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とある夢幻の複写能力SS

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なんと、桐原に向かっていった銃弾が、全て少年が空間移動する寸前で爆発したのだ
勿論、桐原は反応が遅れたせいで爆風に飲み込まれて吹っ飛ばされ、傷を負った
「…近接信管かぁ…。そんな使い方もあるとはねぇ…。」
桐原は立ち上がった
その体の傷は全て消えていた
「やっぱりぃ、君を先に片付ける方が良さそうだぁ」
そこからの展開は早かった
桐原はシャットアウラの懐に飛び込み、みぞおち目掛けて拳を握った
少女はすぐにその拳を受けようと空いている左手を出してみぞおちの前に持ってきたが、それは間違いだった
少女は少年の拳を受け止めることは出来たが、殴られたおかげで左手が弾かれた
「がああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
シャットアウラは、自らの左手を庇いながらのたうちまわった
「ごめんねぇ。これぇ、窒素装甲っていうんだぁ」
そうつぶやきながら桐原はシャットアウラに近づく
しかしシャットアウラにはその声も、気配も届いてはいなかった
「じゃあぁ、ちょっと眠っててね」
桐原は、右手から電流を発し、それをシャットアウラに押し付けた
それはスタンガンの役割を果たし、少女は気を失った
そして、桐原は改めてアリサの元へ向かった
「じゃあぁ、君も、ついて来てもらうから」
桐原は、シャットアウラを気絶させた時を同じように右手を出した
一方のアリサは、恐怖で声も出ないようだった
その少女に、少年の電流を帯びた手が触れる
そこで、アリサの意識は途絶えた…



「シャットアウラ!」
シャットアウラが目覚めた時、最初に見えたのは白い壁だった
いや、正確には壁ではない
天井だ
そう、彼女はベッドの上で寝かされていたのだ
ここは第七学区にある病院
学園都市内でも一番大きな病院で、大きな病気をした人間はここに集められていた
「私は…」
「シャットアウラ、大丈夫か?」
少女は、声が聞こえた右隣りを見る
そこには、先程別れた少年が座っていた
「天岡…。私は…」
「ここは病院だ。お前、ここの前に倒れてたんだよ。…何があった?」
シャットアウラは混乱していた
確か自分は、第二十三学区の飛行場にいたはずだ
少女は、少しずつ事の顛末を話し出した
全てを聞いた叶は、険しい顔をしていた
「…なるほどな。桐原が、俺をおびき出すために鳴護を…」
「ああ。…私がもっと注意を払っていれば…」
「いや、お前はよく頑張ったよ。…それよりもだ」
叶は顎に手を当てて考える
その少年に、少女は聞いた
「なあ、天岡。お前の他に、複写能力はいるのか?」
「いや、それは俺の固有能力だ。それに関しては間違いない」
叶は即答した
しかし、「ただ…」といって続ける
「多重能力って知ってるか?」
「確か、一つの『自分だけの現実』で複数の能力を発現させる能力だったな。あと、理論上不可能だというのも聞いたことがある」
「ああ。確かに、あれは理論上不可能だ。だが、もう一つ多才能力というのがあってだな…」
「多才能力…?」
シャットアウラは、その顔に疑問を浮かべた
「ああ。多才能力ってのは、複数の脳を脳波を介してリンクし、一つの演算装置と機能させて発動させる能力だ。人数が集まれば集まるほど、能力の強度が上がる代物だ。ただ、一つ欠点がある」
「なんだそれは」
「脳波リンクを形成する以上、誰か一人の脳波に他大多数の能力者の脳波を矯正する必要がある。そんなことを、手順を踏まずにすれば…」
「そうか、脳の活動に影響が出るのか」
「ああ、そうだ。もし、そんなものを使っているのだとしたら、どこかで犠牲者が出てるはずなんだ」
しかし叶は、心の中でそれを否定する
そもそもあれは、全て風紀委員と警備員で回収し、残っているのは自分の音楽プレーヤーの中と、いつも持ち歩いているデータスティックの中のものだけだ
それが盗まれたということはない
―…いや、ひとつだけある
 あいつがクソ爺と会っていたということは、あれを手に入れた可能性がある
 いや、確実だ
叶は、そこまで考えて答えを出した
「なあ、あいつはどこにいるとか言ってたか?」
「桐原史郎のことか?…すまん、何も聞いていなかった」
無理もない
そもそも、桐原は場所を指定していなかった
もしかしたら、叶の能力を見越してのことなのかもしれない
そんなときだった
「はーい、叶。来たわよ」
「脅かすな馬鹿!」
突然、叶達の目の前に少女が現れたのだ
「えっと、君は?」
「私?私は霧島紅葉。叶の腐れ縁よ」
「そう面倒臭い言い回しをするな」
現れた少女は、紅葉だった
「それより叶、許可下りたわよ。あいつ、使えるものなら使って見ろって言ってたわ」
「よっしゃ、やってやろうじゃねーか」
「おい、何の許可を取ったんだ?」
話が掴めないシャットアウラは、二人に疑問をぶつけた
「ああ、そうか。言ってなかったな」
「えーっとねぇ、簡単に言うと」
二人は声を揃えて言い放った
「「学園都市の、超重要機密の詰まった情報収集機会だ(よ)」」
その言葉に、シャットアウラは唖然としていた



「全く、君達は何者なんだ」
叶はどうにかして滞空回線を手に入れるため、外に出て奮闘していた
「まあ、元々暗部で働いていたからね」
「それでも流石に統括理事長と直接話せるなんて、聞いたこともないぞ」
実際、統括理事長であるアレイスター=クロウリーと接見できるのは、ごく限られた人間のみだ
「それは、私が「案内人」で、叶が学園都市ナンバーツーとそれなりの仲だからかな?」
「二人してどんな人間だよ君達は…」
「おーい、ゲットしたぞー」
シャットアウラが呆れてため息をついたのと同時に、叶がシャットアウラの病室に戻ってきた
「おかえり。で、手に入れたってホント?」
「ああ。ちょっと電気的探査して滞空回線この中に納めたぜ」
そういうと叶は直径二センチほどのカプセルを取り出した
それは、データスティックと同じ働きをするカプセルだった
「この中に入ってる。あとは、端末に接続してと…」
叶は、慣れた手つきでカプセルと端末を繋ぐ
そして、端末からカプセルへとアクセスした
「…うーむ、複雑だな…」
「解析できそう?」
「まあ、これくらいなら十分あればなんとか」
そうこうしているうちに、プロテクトが解除された
「よし、無駄なデータ類諸々端末の外付けメモリ(小型)にコピーしてついでにシステムもパクっとくか」
「あんた、そんなことしたら…」
「おう。滞空回線に貯まるデータは等しく俺の端末にも届くぜ。…っと、コピー完了だ」
叶は、その中のデータの、監視カメラの映像を呼び出した
少しずつ漁って行くうちに、目当ての物にたどり着いた
「…これは…まさか、エンデュミオンか…」
「なっ、私をここに連れてきたあと、わざわざ戻ったというのか!?」
「そういうことだな。何がしたかったのかは知らんが、間違いなく、奴はエンデュミオンにいる」
叶は断言した
もちろん、滞空回線を手元に持っている時点でアレイスターにも事情は把握されていた
無論、彼らの話を聞きながら統括理事長がほくそ笑んでいることは叶達は知らない
「…さて、行くか」
叶は立ち上がった
だが、それ以上動くことは出来なかった
少年の腕を、ベッドの上の少女が左手で掴んでいたからだ