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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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とある夢幻の複写能力SS

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「待て、私も行く」
その目は真剣な物だった
「…阿保か、お前」
叶は、シャットアウラの怪我をしている右手を掴んで軽く捻った
「んぐ…」
痛さにシャットアウラは歯を食いしばっているようだ
しかしその目から正気は消えていない
「そんな怪我で、どうやって戦うつもりだ」
「それは…」
「気持ちは分かる。だが、俺に任せて今は休め。…それに、すでに助っ人は用意してある」
その手には、携帯電話が握られていた
「…んじゃ、あとは任せたぜ、紅葉」
「ええ、任せなさい。私もバックアップするから」
「頼む」
そして叶は消えた
「…いつも思うんだが、あいつはなんであんなにお人よしなんだ?」
「今回は特別よ。だって」
窓から外を眺める紅葉は、ニヤリと笑って言った
「あいつの思い人と、元同僚が絡んでるんだもの」
シャットアウラには、その意味を半分しか理解することは出来なかった
「…アリサはどうなんだろうな」
「さあね。本人に聞かなきゃわかんないわ」
紅葉の手に握られた携帯電話のディスプレイには、「送信完了」の文字が踊っていた



「畜生、やっぱ紅葉連れてくりゃよかった」
「アンタねぇ、私じゃ力不足だって言うの?」
叶は第二十三学区直行のモノレールに乗っていた
ただし、二人でだ
その隣には、常盤台の制服に身を包んだ少女が座っていた
「悪いな、御坂。突然呼び出して」
学園都市第三位の超能力者、御坂美琴だ
今日は休日
そして今は夕方
コンビニで立ち読みをしていた美琴を、叶が連れて来たのだ
「…連絡もらってたし、色々借りはあるし、それにアリサさんが本当に戻ってるのかとか色々気になるから、そこは気にしてないんだけどさ…」
「そうか。ならよかった」
「てかさ、電話もらった時は驚いたんだけど…」
美琴は叶に向き直り聞いた
「…相手は、本当に多才能力者なの?」
「おそらく、な」
「おそらくって、一体どういう事よ」
叶は少し口をつぐんだ
「…詳しく分かっていないんだ。今回の犯人…桐原史郎っていうんだが、そいつが大覇星祭前に木原幻生と関わっていたっていう話と、実際に対峙した奴が複数の能力を使ったって言ったから、そこから推測したんだよ」
「なるほどね。で、アリサさんは?ホントに戻って来たの?」
叶は、美琴達には鳴護アリサは違う学区に引っ越したとしか言っていなかった
本当のことを知っているのは、科学サイドではシャットアウラの他は上条のみだった
無論、『八十八の奇跡』など色々な説明がめんどくさかったのもあるが、一番は真実を知られたくなかったのが一番だ
「ああ。俺も実際に会った。ただ…」
「ただ、その矢先にさらわれてしまったと。そういうことね」
叶は、首を縦に振った
「ていうか、呼び出されたのアンタだけでしょ?私連れてって大丈夫なの?」
「分からん。だが、お前ならどっかで情報掴んで来そうだったからな」
「ま、それもそうね」
そうこうしているうちに、モノレールが駅に着いた
二人はそれぞれ自動改札に切符を入れて出た
「さて、こっからはテレポートして行くが、どうする?」
「頼むわ」
叶は美琴の肩を掴み、空間移動した
数回ほど空間移動をして、エンデュミオンの近くにたどり着いた
「…やっぱり、でかいわね…」
「そりゃそうだろ。高軌道ステーションまで続いてるんだからな」
エンデュミオンの内部へと通ずる陸橋の一つ、一番北にあるゲートの前の橋に来ていた
すでに時間は五時を回っていた
しかし日は傾き、すでに太陽は地平線に接触していた
二人が見上げた先では、沈みかけの太陽とエンデュミオンとが美しいコントラストを醸し出していた
そんなときだ
「やあぁ、久しぶりだねぇ。天岡君」
「桐原…」
突然、叶達の目の前に桐原が現れた
「あいつが、桐原…」
「おやおやぁ、超電磁砲も連れて来るとはねぇ。自身がないのかなぁ?」
どうやら桐原はおちょくっているようだった
「…つくづく面倒臭い喋り方だな」
「ホント、初めて話すけど面倒ね…」
「もうやめてぇ…」
本日三回ほど喋り方を馬鹿にされて桐原は精神的に来ているようだ
「鳴護は無事なんだろうな」
「勿論だよぉ。ほら」
桐原が手を示したその先に、アリサはいた
「鳴護!」
「アリサさん!本当に…」
その少女は、桐原の後ろにある檻の中に幽閉されていた
「助けようったってそうはいかないよぉ。あれはどんな能力や重機でも砕けない強化アクリル板で出来ているからねぇ。助けたければ僕に付き合ってよぉ」
どうやらそれは本当のようだ
その檻に格子らしきものは無く、代わりにガラスのような透明な板が四方に張られていたのだ
叶は唇を噛んだ
「しっかしぃ、なんで関係ない超電磁砲を連れて来たのかなぁ」
「…お前が多才能力者である以上、俺一人で対処できるかどうかわかんないから連れて来たんだ」
「なるほど…ねぇ。でも、多才能力かぁ…」
突然、桐原が高笑いを始めた
「君ぃ、本当に僕がただの多才能力だと思ってるのぉ?」
「それ以外にあるか」
「あるでしょぉ?もう一つぅ、複写能力以外にぃ」
「…まさか…そんな…」
叶には一つ、心当たりがあった
「いや、あれは凍結されたはずじゃ…」
「ちょっと、私を置いて話進めないでよ」
その計画は、凍結されたと叶は聞いていた
しかし、それは間違いだった
その計画は今も、続いている
ひっそりと開発は進められている
「ファイブオーバーシリーズ…」
「えっ、なにそれ」
叶は震えた声で話しはじめた
「超能力者の能力を解析し、科学的に再現しようとした駆動鎧の総称だ。実際、お前も見たろ。テレスティーナの時の疑似超電磁砲、そしてフェブリの時の疑似原子崩し…。両方、ファイブオーバーシリーズのプロトタイプだ。だが、最近になって計画が頓挫したって聞いたんだがな…。あれはガセネタだったのか…」
最近の話だ
木原のコネで手に入れた情報の中に、ファイブオーバーシリーズ頓挫の文字があった
叶はそれを鵜呑みにしてしまったのだ
それ故、あのように取り乱したのだ
「そうさぁ。もちろん、ファイブオーバーシリーズに君の能力も含まれているよぉ。それのプロトタイプが完成したのさぁ」
「俺の能力だぁ?そんなもん、どうやって再現するんだよ」
叶はまだ知らないが、複写能力とは他人の『自分だけの現実』に干渉する能力だ
それを機械的に行うなど、脳への直接干渉以外にはまだ確立されていなかった
「じゃあぁ、特とご覧に入れようぅ。これが君のファイブオーバーだよぉ!」
桐原が両手を広げて叫んだ
その瞬間、その真後ろのエンデュミオン上方から何かが落ちてきた
いや、正確には降りてきた、というのが正しいのか
それは、桐原と叶達のちょうど中央に降り立った
「…女?」
「ていうか、看護婦?」
降りてきた物は、少女の恰好をしていた
しかも服装はナース服
二人は訳がわからなくなっていた
「紹介しようぅ。これが君のファイブオーバー、恋査ちゃんだぁ!」
「いや、駆動鎧じゃねーし」
「クライアントの要望でねぇ。自分の命令を聞きそうな感じでって言われたんだよぉ」
「つまりサイボーグか…。クライアントの名は」
「言える訳無いじゃないかぁ。僕も命が惜しいさぁ」
そういうと桐原は、インカムマイクを取り出して装着した