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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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とある夢幻の複写能力SS

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「そうぅ。この恋査ちゃんの開発の一貫でねぇ、ミサカネットワークを使って演算領域を拡張しようとしたんだよぉ。だけど肝心の番号無しが使い物にならなくてぇ、しかも君が邪魔してくれたおかげでもう一つのプランである幻想御手を使うプランが採用されたんだぁ。それでクライアントが少なからず怒っちゃってぇ、恋査ちゃんのテストを兼ねて君を殺せって言われてねぇ」
「なるほどな。これでやっと納得がいったぜ。だが、何も鳴護を巻き込む必要はなかったンじゃァねェのか?」
それを聞いて桐原は高笑いを始めた
「いいやぁ、彼女は必要だよぉ。君の心を折るっていう役目があるからねぇ!」
「させるか!」
叶が動いた時はすでに遅かった
桐原はアリサが閉じ込められている檻に向かって音速を超える早さで飛んでいるところだった
叶は一か八かで原子崩しを飛ばして桐原を阻止しようとした
しかしそれは未遂に終わった
突然桐原が急ブレーキをかけて止まったからだ
刹那、その眼前をビームが横切っていった
それは最初に叶が挨拶がわりに飛ばしたものが細くなったものと類似していた
「来たか!」
桐原はその言葉の意味を理解するのに数秒かかっていた



同刻
「やはり、電撃が当たりませんね。これは不毛です」
「これじゃ消耗するだけじゃない…。一気にけりをつけないと」
美琴と恋査の戦いは、両者電撃を飛ばしつつ相手の電撃をいなし合うという不毛な戦いを続けていた
「せいっ!」
この状況を自分のものにすべく美琴は動いた
まず掛け声とともに地面の砂鉄を磁力で巻き上げ、砂鉄の剣を作り出して恋査に襲い掛からせた
しかし恋査はそれを避ける
だがそれは、美琴が撒いたブラフだった
砂鉄の剣を作ったのと同時に、恋査の死角から電撃が迫っていたのだ
しかしそれも恋査は避けて見せた
だがまだ美琴の口角は上がっていた
実はそれすらもブラフだった
すでに、コインが宙を舞っていた
「悪いけど、これで終わりよ!」
美琴は自身が出せる最大の出力で得意の超電磁砲を撃ち出した
その弾は、周囲に土煙を起こしつつ今だ気づかない恋査に向かって一直線に飛んでいった
「やったか?」
しかしこういうときに限ってフラグは回収されるものである
大量に舞う土煙の中から、ほぼ無傷の恋査が姿を見せた
目立ったダメージというのは、服が裂けて肌色率が高くなっていることくらいだ
「服が少し破けてしまいましたが、戦闘行為に支障はありません」
「私への当て付けか!…って、突っ込んでる場合じゃない!あれでやられないって、どういう体してんのよあいつ…」
言うまでもないが、恋査はサイボーグである
ちなみにさっきの美琴の超電磁砲は、直前まで使っていた電撃使いの能力を使って反らし、直撃を避けたのだ
「さて、命令を続行します。まずはあなたを片付けた方が良さそうですね」
そういうと恋査の体から再びゴキゴキッ!!という鈍い音が起こった
美琴は知らないことだが、これは恋査の中で使用できる能力を変更している時の音である
やがて音は止み、恋査の能力の変更が完了した
「やはり、第四位の能力があなたへとどめを刺すことに最適のようですね」
刹那、恋査の周りに光球が発生した
勿論第四位の能力、原子崩しを恋査が使ったからだ
「では、さようなら。超電磁砲」
恋査が光球からビームを発射しようとした
しかし、それが発射されることはなかった
その直前に、恋査のこめかみを一条のビームが通り抜けたからだ
そのビームは叶達の前まで飛翔し、同時に桐原の行動を止めた
そして恋査は機能を停止し、その場に倒れた
「あのビーム…まさか…」
そのまさかだった
美琴には正しく因縁の相手であり、学園都市の第四位
今まさに恋査が放とうとした能力の持ち主
原子崩し
麦野沈利だ
「あー、ったく。なんだよあの光は。二週間ほど前といい今回といい、あたしの能力の猿まねかってんだ」
「あ、あんた、どうして…」
同じ頃
「なんで第四位がぁ…」
桐原は、まるで悪いものでも見たかのようにその場に固まっていた
「悪ィが、お前に答える義理はねェ」
叶は桐原に一言かけて空間移動していく
「行かせるかぁ!」
桐原は懇親の力を込めて叶を追った
しかしすでに叶はアリサが閉じ込められている檻にたどり着いた
そして檻の中に空間移動して侵入した
「待たせたな、鳴護」
「天岡君…」
叶はアリサを抱えて檻から出た
空間移動した先は、美琴と麦野がいる場所だった
「アリサさん!」
「美琴ちゃん!」
叶が降り立った途端、美琴がアリサに抱き着いた
無論友達を心配していたからだ
ふと叶が視線を外すと、第四位が叶に近づいていた
「『八人目』、アタシを呼び付けたのはお前か?」
「悪ィ、人手が欲しくてな。大丈夫だって、報酬は払う」
麦野は舌打ちした
面倒事に巻き込まれた、とでも思っているのだろう
「あのさ、私こいつが来るなんて聞いてないんだけど」
「あたしもだぞ『八人目』。なんで超電磁砲がいるんだよおい」
「だって、言ったらお前ら来ないじゃン」
「…報酬とは別に一発殴ってやらないと気が済まないな」
「奇遇ね。私も今同じことを思ったわ」
叶は何も言えなかった
それを見てアリサがクスクスと笑っていた
瞬間、叶の姿勢が崩れた
咄嗟にアリサと美琴が手を延ばしたため地面に手をつくことはなかったが、叶は消耗し切っていた
「あんた、一体どうしたのよ」
「悪いな…。今日ちょっと能力使いすぎたわ」
叶の口調が元に戻っていた
「そういえば、ちょくちょくこんなのあるわよね…。一体何なのよ」
「俺にも分からん。わかってたら苦労しないし、それに…」
叶は少し息を整えて、それからいい笑顔で言った
「それに、これがあるのわかってたから麦野呼んだんだし」
「「…」」
二人は黙り込んでしまった
次に二人が口を開いた時、叶は死を覚悟していた
勿論、今ふざけたことを自覚しているからだ
しかしその予想は裏切られた
二人はほぼ同時にため息を吐き、そして言った
「…まあ、殴るのはよしといてやるよ。ギャラあるみたいだしな」
「私はあんたに借りがあるし、それにアリサさんを助けに来たのに、こんなところで止まれないしね!」
「美琴ちゃん…」
「ただ言っとくが超電磁砲、あたしはテメェを利用するだけだ。一緒に戦うなんて思うなよ」
「そっちこそ。足手まといにならないでよね」
どうやら、この二人が共闘関係になるのはまだ先のようだ
「超能力者が二人かぁ。面白いねぇ、君達が何処まで相手になるのか見物だよ」
そういいながら桐原が近づいてきた
ちなみに恋査は檻の中に入れられている
おそらく、身の回りにあっても邪魔だからだろう
ハードはこめかみを打ち抜かれたのみなので修理すればいいが、肝心のソフトが壊れたようだ
叶はそこまで予想して言った
「おいおい、恋査が倒れたからお前はもうただの大能力者の物質錬成なんじゃないのか?」
「いやいやぁ、大丈夫だよぉ。どうやら#019の恋査ちゃんはまだ生きてるみたいだしねぇ。あれは僕の脳波に強制的に合わせられて意識を失っているだけみたいだよぉ」
叶は目立たないように舌打ちした
これで恋査が完全に沈黙してくれれば、先程よりもずっと戦いやすくなったはずだ