yamatoへ… ユキバージョン 2
トウキョウのエアポートに着くとすぐに軍のエアカーが飛行機に横付けされユキと佐々木を乗せるとそのままエアポートを出た。エアカーの中にいたのは山村だった。
「おはよう。朝早い便で眠いだろう。朝食は…(佐々木の顔を見て頷くのを
見て)そうか、まだ昼食には早い時間だな。まず先に中央病院付属の大学へ
行って挨拶を済ませよう。その後昼食をとって寮へ案内する。今日はそこで
終りだ。」
ユキは寮に行って今日は終わり、じゃない事に少し疲れた表情を見せた。
「大事な物を渡しておくね。」
山村はバッグからカードを一枚取り出した。
「これは奨学金の入金されるマネーカード。まぁ生活費、だと思ってくれれば
いい。前に質問されたけどこのお金は返金しないで大丈夫だから安心して
使いなさい。それと…」
山村は通信機と端末を出した。
「これは軍関係者は必ず持ち歩く物。肌身離さず持つように。」
そう言って通信機を手渡す。
「これは全て通信内容は記録される。プライベートで使わないように。携帯は
持っているかね?(ユキが頷く)プライベートではそちらを使うように。
それとこれは端末。(ユキに手渡す)連絡事項はメールで知らせるように
なっている。余程急ぎの時は通信機だがね。メールは通信機とこの端末と
同時に送られるようになっていてどちらかで確認すると開封済みになる。
仕事…学校が休みの時も必ずメールはチェックするように習慣付けるよう
するように。」
ユキが通信機と端末を交互に見る。
「まぁ学生の間は両方持って歩くことになると思うから…無くさないように
気を付ける事だな。端末は勉強する時にも使うから…。」
山村はそう言った後仕事の顔から柔らかい顔に代わった。
「ご両親とは?」
山村の問いにユキは首を振った。
「そうか…何か心配な事があったら私に連絡しなさい。誰も知らない所で
一人で頑張るという事はとても大変な事だ。私に言いにくかったら九州から
ずっと一緒だったこの佐々木でもいい。何でも相談しなさい。」
山村は優しくそう言って通信機の電源を入れ操作方法を教えてあげた。
「メモリーに私の連絡先と佐々木の連絡先が入っている。自分の携帯に転送
しておきなさい。」
まだ12歳のユキの手に通信機は大きく操作する手もたどたどしい。佐々木が見兼ねて操作方法を教えてあげる。
「出来ました。」
ユキがホッとした顔をする。
「入学式は4月1日。場所などはメールで知らせるから…。」(山村)
「はい。」
ユキは入学式、と聞いて背中がピンとなった。
「まだ先の話だから大丈夫だよ。」
山村と佐々木は笑った。
話をしてる間にエアカーは中央病院に着いた。中央病院の隣に医大がある。
「ここが森さんの勉強するところだ。」
中央病院の隣には軍の司令本部がある。
「すごぉい…大きな建物…」
医大の中を歩きながら山村が話す。
「今回、森さんに一番近い年齢の学生は15歳…中学を繰り上げ卒業して医大に
進学する子だな。他はだいたい全員高校を卒業して来る学生だ。みんな
ライバルだけど大事な同期だからね。仲良くするといい。」
12歳と18歳。大人と子供だ、とユキは思う。だけど塾の先生を見て“大人だ”とは思えなかった。ユキを指導してくれた先生は別だが。
「ここが講堂…食堂は…。」
山村と佐々木はユキが困らないように目印を教えながら医大の中を案内する。すると一人声を掛けてきた男の人がいた。
「おや、山村さんじゃないですか?」
「あぁ院長。暇そうですね。」
院長と呼ばれた男をユキはマジマジとみる。
「この子は?」(院長)
「えぇ、今年の最年少医大生ですよ。」
山村がそう言うと院長は頷きながらユキを見た。
「森さんだね?これから頑張ろうね。」
院長はそう言って少し屈むとユキと握手をした。
「看護士じゃなくて医師、だもんな。これから長い道のりだけど…いい眼を
している。一緒にがんばりましょう。」
ユキは“はい”と返事をした。
少し医大の中を回った後院長は回診があるので、と言い山村と佐々木とユキも医大を出た。
作品名:yamatoへ… ユキバージョン 2 作家名:kei