yamatoへ… ユキバージョン 2
「疲れましたか?」
時間は午後1時を回っていた。山村と佐々木とユキは3人一緒に昼食をとっていた。ここは中央病院の隣にある軍の応接室。食堂の食事をこちらに運んでもらっていた。
「いえ…ただ広いなぁ、って思いました。」
つい先日まで小学生…大学は広い。
「最初の頃は同期で一緒に動くと思うから迷子になる事はないでしょう。」
佐々木がユキの不安を払いのけるように言った。
「そうですか?」(ユキ)
「学年が進むにつれて専攻分野で変わってきますが最初の1年は基本的な部分
が主になりますから。」(佐々木)
「実は佐々木は軍医なんですよ。戦艦や空母に乗ってます。」
ユキは佐々木が何も言わないので驚いていた。
「佐々木さん、何も言わない方だから普通の軍の方だと…。」
ユキが尊敬のまなざしで見る。
「いえいえ、たまたま…ですから。最初から志願したわけではなく…」(佐々木)
「だって…お若いですよね?」(ユキ)
「お前、いくつになった?」(山村)
「今年、25歳になります。」(佐々木)
「佐々木も15で医大に入ったんだもんな。その時私が迎えにいったんです。」
山村が笑顔で話す。
「まだ飛び級が日常でない頃だったから…大変だったな。まぁそんなわけで
悩んだ時は佐々木に話を聞いてもらうといい。」
山村が佐々木を迎えに行かせた理由がユキにわかった。
「ありがとうございます。相談させてください。」
ユキがペコリと頭を下げると佐々木が少し困った顔をして
「こんな私で力になれれば…」
と返事をした。
和やかに昼食を終えてエアカーは寮に着いた。中央病院から寮はエアートレインで3分ほど。ステーションから寮も直結で余程の事がない限り犯罪に巻き込まれる事はなさそうだった。
寮の玄関を入ると先に連絡を受けていた寮母が玄関にやってきた。
「遠い所お疲れ様でした。」
ユキに向かって寮母がにこやかに出迎える。
「寮母さん、森ユキさん。先日まで小学生だからお母さん替わりで頼むね。」
山村がそう言うと
「わたし、女の子育てた事ないから娘が出来たみたいで嬉しいわ。ガサツな
男の子しか育ててないけど…女の子には優しくするわ。任せてください。
荷物は午前中に届いて部屋に置いてあるわ。」
「ありがとうございます。」
ユキがお礼を言うと山村と佐々木はユキに
「じゃぁ私達は戻るよ。何かあったらすぐに連絡する事。」
そう言った。ユキは二人を見て
「本当にお世話になりました。ありがとうございました。これからも
よろしくお願いします。」
と、いって頭を下げた。二人は笑顔で手を振ってエアカーに乗り寮を出て行った。
「森さん、これからよろしくね。」
寂しそうな背中に寮母が声を掛けた。
「寮母さん…あの、これからお世話になります。よろしくお願いします。」
ユキが挨拶すると
「しっかり挨拶のできる子ね。私をお母さんだと思って何でも言って。」
「ありがとうございます。」
「少し説明するわ。まずこの玄関だけ男女共用なの。この先…あそこに階段が
あるでしょう?右が女子寮、左が男子寮になっているの。看護学校に通う
子と同じ寮だから人数はそこそこいるのよ。ちなみに玄関は一緒だけど
ちゃんとゲートがあって男子寮は女子は入れないし女子寮も男子は入れ
ないわ。ちゃんとモニターも付いてるから安心して。」
寮母はカギを持って女子の方へ向かった。
「ここでカギを通すの。」
カードキーを通すとゲートが開いて右の階段を上った。そこは少し広いフロアーになっていた。
「ここは食堂。24時間だからいつでも食事出来るわ。もちろん無料だから
安心して食べてね。……で、向こうが談話室とカフェ。で、この上が住居
エリアになっているの。森さんの部屋は6階…(エレベーターに乗る)
えっと618号室…がお部屋よ。はい、カードキー…無くさないようにね。
それと…ここももうすぐ地下に移動する事になっているから…。」
ドアロックを解除すると扉が開いた。
「狭いけど個室だから…じゃぁごゆっくり。」
ユキがカードキーを受け取ると寮母はエレベーターホールに向かって小走りになった。
「おじゃまします…」
自分の部屋なのについそう言って入ったユキ。部屋の壁は真っ白。ベッドは壁と一体型。使う時だけ壁から倒す形になっていてベッドを出すと椅子になるようにデスクもある。収納も壁一面で無駄のない作りになっている。
床には午前中届いた荷物が置いてあった。
「しわになっちゃう…」
ユキは両親に買ってもらった入学式用のスーツを思い出し荷物から取り出すとクローゼットに掛けた。
作品名:yamatoへ… ユキバージョン 2 作家名:kei