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yamatoへ… ユキバージョン 3

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  (私と岡本さんねぇ…)

ユキは大学の構内を歩きながら考えていた。なんてったって中学生。“交際”に興味がないわけではないがその対象が岡本、とは考えられなかった。しかし岡本の容姿をもう一度思い出してみると確かに背も高い、顔も悪くない。

  (かおりさんと同い年になるのよね。ちょうどいいじゃない。)

一瞬“かっこいいかも”と思ったがそれ以上でもなくユキの心の中からその話題は消えた。



入学して一日目、今日はガイダンスの日。構内に入ると学部で分れているので途中、飛び級看護士チームと別れユキは一人広めの講堂に案内された。その時後ろから“ユキちゃん”と声がした。岡本だったがひとりじゃない。昨日いた男子陣と一緒だ。ただ昨日と違い人数は3人しかいなかった。

  「昨日はよく眠れた?」

ユキの肩に手を置いて気軽に話してくる。

  (かおりさんが誤解するはずよね)

ユキはすっと肩からの手を外すように歩くと

  「えぇ、今日に備えないといけないからね。」

そう言ってにっこり笑った。岡本以外のふたりもユキの笑顔に見入る。

  「ははは、そうだね。これからが本番だもんな。」

ユキの一言で身が締る思いの男子陣だった。








  「ユキちゃんはどうして医学の道へ?」

長いガイダンスを終えて昼食を4人で摂っていた。周りもみんな今年入った新入生。特に体の小さいユキをみて誰もが振り返る。

  「小学校低学年の頃からなんとなく。で、ここ2年ぐらいで急激にその気持ちが
   強くなって…。」(ユキ)
  「じゃぁ親が医者、ってわけじゃなくて?」(徳山)

岡本は前にユキから直接聞いているので話に参加していない。ユキの話に食いついているのは17歳の男子、森屋裕也と徳山剛だ。二人とも身を乗り出して話している。

  「じゃぁ…森屋さんも徳山さんもご両親はお医者さん?」

ユキが聞くと

  「そう、開業医でさ。跡取り、って訳。だから小さい頃から勉強させられた。
   本当に大変だった。これからもっと大変になる…」(徳山)

そう言ってふたりは顔を見合わせて肩を落とす。

  「こいつん家は普通のサラリーマンらしいけど。」

森屋が岡本を指さす。ユキの両親も普通のサラリーマンなので“そう”とにっこり返す。

  「まず6年ここで勉強して次にインターン…一人前になるにはどれぐらいの
   時間がかかるのか…」

森屋がつぶやくように言った。

  「先を見てもしょうがないだろ。さぁ午後の予定は…。」

岡本がそう言うと4人は立ち上がり再び講堂に戻った。








  「話を聞くだけ、ってつかれるなぁ。」

医大からステーションへ向かっている途中、徳山がつぶやく。

  「まぁ…すぐに講義も始まるさ。時間がないんだから。」

昨日も今日も…地球上のどこかにあの遊星爆弾が落ちている…。地下に潜る日も近い。

  「入寮の日、近いうちに地下に潜る、って言ってたもんな」

岡本が思い出したように言う。

  「どうなるんだろうな…この先…もしこの先戦争になったら船医として
   戦艦に乗り込んだりするのかな?」

徳山が不安気につぶやく。

  「俺は…そんなつもりで医者になる訳じゃない。実家の開業医を継ぐために
   ここにいるんだ…。」(森屋)

ユキは考え方の違いに驚いた。誰もが人を救いたくて医師になるために勉強するわけではない、と気付いた。ユキは漠然と医師になりたい、とケガをしてる人、苦しんでいる人を救いたい、と思いながら勉強してきた。


ずっと夢だった“医師になるため”のスタートラインに立つことはできたがこれからは“どんな医師”になりたいのか、と言う事を考えて勉強して行かなくてはいけない…







  (私のなりたい医師…)

寮に戻り自室に入るとユキはすぐに勉強を始めた。せっかく入学前に教えてもらった事を無駄にしないように…あの3人に負けたくない…あの3人だけじゃない…他の誰にも負けないように頑張るしかない…今までも点を取れば認めてくれる人がいた。ひがむ人もいたし足を引っ張る人もいた。だけど今日からは実力の世界…。自然と集中力が高まっていった。