yamatoへ… ユキバージョン 3
アッと今に一週間が過ぎた。
勉強は大変だったがもともと予習部分がかなりあったのでユキは焦らず授業について行けていた。
講義は土日休み。土曜日の今日、ユキは休みを利用して春休みにお世話になっていた緒方の部屋にいた。
「…ふうん、結構飛ばしてるね。」
緒方はユキのパソコンを確認してテキストを開く。
「今の所、付いていけてるよね。」
当然のように聞くとユキは笑顔で頷いた。
「そうだね、この先なんだけど…」
緒方はこの先のぶつかるであろう問題をユキに提示したり物事をいろんな角度で見れるよう指導した。
「ただいま。」
体は疲れていたけどすっきりした表情で寮に戻って来た。
「ユキちゃん、お帰り。みんなが心配してたよ?ユキちゃんがいない、って。」
寮母が声を掛ける
「みんな?」(ユキ)
「ほら、いつも一緒にいる3人。」(寮母)
「そう、別にいいわ。一緒にいないといけないわけじゃないし、私にも予定が
あるし。」
ユキのそのドライさに寮母は笑う。
「まぁそうだけどユキちゃん一番小さいから心配なんだって。」(寮母)
「わかってるけど大丈夫よ。通信機いつも持ってるし。」(ユキ)
ユキが少しふてくされる。
「私、余り干渉されるの好きじゃないんですよ。なんか言ってたら放って
おいてあげたら?って言って下さい。」
ユキが困った顔をしながら言うので寮母は苦笑いをしながら頷いた。
(本当に自分を持っている子、なのね。)
寮母は入寮する時にどんな性格の子なのか調書を読んでいる。山村の答えはズバリだった。
(ここも結局面倒なのね)
ユキはベッドを出して身を投げ出した。
(人の事考えてる場合じゃないくせに)
人ごみで疲れたのかいつの間にかそのまま眠ってしまった。
{ユキちゃん、ちょっと出かけない?}
翌朝岡本からユキにメールが届いた。
「出かけない。」
ユキはそう返事をした。奨学金が入って来るまでまだ数日。マネーカードの残高は減る一方。緒方の所へ行く交通費もユキにとってかなりの負担だった。だけどそれを一番に考えているのでそれ以外の所でお金を使わないようにしていた。
ユキの返事に岡本はすぐに携帯に電話をかけてきた。
<え?どこか行こうよ。もうすぐ地下に行くんだよ?地上で遊べる日も残り
少ないんだから今のうちに行けるところへ行った方がいいよ。>
岡本はそう言ってユキを連れ出そうと(デートしようと)声を掛ける。だけどユキはそれどころじゃない。まわりがどうかはわからないが今は付いていけてるけどいずれ壁にぶつかる。その時自分がちゃんと前を見て進む事が出来るか、そのために今何が必要なのかを考えそれには基礎をしっかり固める事だ、と緒方に言われた事を思い出し復習をしている所だった。
「私、遊んでる場合じゃないんです。失礼します。」
ユキは少し怒った顔で携帯の電源を落とした。これで携帯は鳴らない。緊急だったら通信機が鳴る。
ユキは深いため息を一つついて再びデスクに向かった。
作品名:yamatoへ… ユキバージョン 3 作家名:kei