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yamatoへ… ユキバージョン 4

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医学部に入学して半年が過ぎた。ユキは余裕がない、と思っているが岡本と森屋、徳山に比べたら余裕があった。でもいつも勉強していないと落ち着かない、そんな感じだった。土曜日は緒方と一緒に勉強して普段の日はドイツ語の学校へ通いドイツ語以外を使わないような生活を心がけた。

  「ふぅ…。」

緒方のラボで深いため息をついた。

  「どうしたの?森さんらしくない。」

緒方が笑顔でユキに聞いた。

  「う~ん、みんな焦り出して…なんだか私もあせっちゃう。こんな状態で
   本当に医師になれるのかなぁ、って…。」

毎週のように顔を合わせる緒方にユキは不安な気持ちをぶつけた。眉間にしわを寄せるユキ。

  「もう、先生?真剣に聞いてくれていますか?」

緒方はいつもユキの話を笑顔で聞いてくれる。

  「きっと誰もが不安なんですよ。不安だから必死になる。だけどなんでも
   必死になったところで何も変わらないんだ。不安になったら教わった部分を
   もう一度復習して基礎を固めるんだ。そしたら何が不安だったか、忘れて
   しまうよ。焦ったった時、先に進もうとしない方がいい。何も頭に入って
   こないよ。大丈夫、森さんは何度も何度も同じ事を勉強してしっかり頭に
   入っている。ドイツ語だって日常生活するうえで困らないぐらいになってる
   はずだ。」

ドイツ語を学んだ方がいい、と進めてくれたのは緒方だった。普段の言葉が分かるようになると専門用語も無理なく入って来る。

  「…そうですね…焦って覚えたってその場、だけですよね。」

ユキは今まで自分が勉強してきた方法を思い出していた。

  「そう、繰り返し…ね。医学は常に進歩していて怖い事に失敗は許されない。」

緒方の言葉にユキは頷く。

  「どんなに医療が発達しても最後頼るのは人だ。」












  「ただいま。」

ユキは寮に戻って来た。寮母が笑顔で迎える。

  「お帰り、ユキちゃん。今日も勉強?」(寮母)
  「えぇ…少しだけ。」

ユキが笑顔で答える。

  「そう、まぁそんなに勉強しなくてもお休みの日ぐらいどこかへ行ったら?」

寮母が勉強詰めのユキを心配する。

  「いえ、大丈夫です。何かしていないと落ち着かなくて…でも独りじゃ勉強
   できないから…どうしても人を頼っちゃうんですよね。ダメだなぁって
   わかってるんですけど…。」

ユキの言葉に寮母が頷く。

  「何を言っているの?つい半年前まで小学生だったのよ?頼って同然よ。
   まぁ私は勉強以外の所で頼ってほしいけど。何かあったら声かけてね。」

寮母はそう言うと“夕食しっかり食べてね”と言ってどこかへ行ってしまった。

  「いつも忙しそう。」

ユキは寮母の行った先を見つめながら靴をしまうと女子寮のゲートにカードキーを通して部屋に向かった。








  「珍しいね、ユキちゃんが出かけるなんて。」

ユキは岡本と喫茶店にいた。

  {うん、何となく…ね。}

ユキはドイツ語で話す。随分流暢になった、と岡本も思う。

  「何かいい事あった?」(岡本)
  {ううん、なにも。}

そう言うユキは笑顔だ。

  「だって、金曜日とうってかわっていい顔してるよ?」(岡本)

金曜日の午後は試験があり一週間分の振返りを行う。そこで90点以上取れなければ先に進む事は出来ない。

  {そうね…ちょっと焦ってたの。}(ユキ)
  「焦ってた?」(岡本)
  {この先勉強について行けるか、とかちゃんと医師になれるか、とか。}

ユキがオレンジジュースをすする。

  「そんな事今から焦ったって…」

岡本が真剣な顔で言う。

  {そうなの。それに気付かない程焦ってたのよ。}

ユキがクスクス笑う。

  {それより岡本さん、私が使うドイツ語、ちゃんと理解できる?}(ユキ)
  {うん、全く問題ないよ。}

岡本もユキと同じようにドイツ語を学び始めたのだ。

  {あの二人、先週のテスト、ダメだったらしい。}

岡本がユキに教える。

  {問題は同じ。これから先、どんどん差が付くだろう。その差が現場に出られる
   時期の違いに現れる。}

岡本がいつもと違い真剣な顔になった。

  {ひとつとして躓いていられない。チャンスだから。}

岡本の言葉にユキは黙って頷いた。