二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

yamatoへ… ユキバージョン 4

INDEX|7ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

  「あのぅ…ここ、高いでしょう?私、普通のファーストフードとかだと思ったから
   OKしたんですけど…。」

ユキはこれじゃ大人のデートじゃない、と思った。

  「そう?ここさ、よく両親と来たんだよ。おいしいからユキちゃんにもぜひ、って
   思って。だってお礼するなら最高においしい物を食べてもらいたかったんだ。」

徳山が得意気に言う。

  「おいしいけど…私にはよくわかりません。こんな贅沢…。」(ユキ)
  「何言ってるの、留年したかもしれない事を思えば全然お安い物だよ。」(徳山)
  「徳山さんのご両親の病院って大きいんですか?」

ユキは半年以上一緒にいるのに徳山の実家の病院の事を聞いたことがなかった。徳山は自分の事に興味を持ってくれたのかと思い喜んだようすで返事をする。単にユキは贅沢三昧してる徳山を想像して聞いただけだったが。

  「ん?実家?まぁ…代々続く病院で…だんだん規模が大きくなってって…だけど
   個人病院だからね。ベッド数、150ぐらい、だったかな。」(徳山)
  「そうなんですか…。」

ユキは個人病院という事は知っていたが地域の個人病院かな?と思っていたので驚いた。

  「いずれ…俺が継ぐんだけどそれまで地球があるか、が心配さ。」

徳山も遊星爆弾の事を心配していた。

  「病院とかの施設は国が出してくれるから施設費はかからない。だけどやっぱり移動
   するのに患者はそれなりに負担になるからね。」

徳山が珍しく患者の心配をしてるのに驚いた。

  「もう地下にお引っ越しされてますよね?」(ユキ)
  「あぁ、富士に落ちる前にね。よかったよ、あの後じゃきっとパニックのなか
   引っ越しだったかもしれないからな。」

徳山はしみじみ言う。

  「あの忌々しい爆弾がなくなれば…だけど無くなっても地下に浸透する放射能を
   止める事が出来ないなら一生地下暮らしになってしまうかもしれない。」

ふたりは食後のデザートをつつきながら暗い顔で話していた。

  「…っと、暗い話題は止めましょう。せっかくのおいしい料理を食べた後のデザート
   食べてるのに…今だけは忘れましょう。」

徳山の笑顔にユキもうなずいた。







  「ごちそうさまでした。」

ユキは店を出て徳山にお礼を言った。

  「いえ、お気に召したら次もぜひ。」

徳山はそう言ってユキの手を握った。

  「!」

ユキは驚いた…が、

  「このぐらいのお礼はいいですよね。」

徳山はユキの手をぐっと握りしめ歩き出した。ユキは引きずられるように徳山の後ろを歩く。

  「あ、あの…手……。」

ユキが振りほどこうとするが相手は高校生。力が違う。

  「腕を組んでくれるならほどきますが?」

徳山が立ち止まりじっとユキの顔を見る。

  「…いえ…」

それだけを答えると徳山は再び歩き始めた

  「地上だったらきれいな夜景を見に行くところなんですけどね。地下じゃ気の
   利いたところないからな。」

徳山はおしゃれなブティックが並ぶモールをゆっくり歩く。すでに9時をまわっているがモールは24時間営業、徳山の顔は広く高そうなブティックの店員が徳山のファーストネームの“剛”と名前を呼んで挨拶する姿を何度も目撃した。それを見ると今来てる服も高いんだろうな、と思ってしまう。それに比べて自分は何だろう…親からの仕送りはなく奨学金だけを頼りに生きてる…。

  「徳山さん、私帰りたい。」

ユキは手を振りほどいた。

  「え?もう帰るの?」

徳山が驚いて聞く。

  「もう充分です。明日の予習をするから帰ります。」

ユキがお辞儀をしてステーションの方へ向かう。

  「ユ、ユキちゃん、ちょっと待って!」

徳山は慌ててユキの後ろ姿を追った。








  「ただいま。」

ユキはふと自分の姿を見返した。いつもの格好と随分違う。寮母さんは忙しいのか玄関にいなかった。ユキは少しホッとしてパンプスを脱ぐとそれを持って徳山にもう一度“ありがとうございました”と言って部屋に向かった。徳山は“いいえ”といいながら残念そうにユキの後ろ姿を見送った。






  「ふぅ…」

ユキが大きなため息をついてベッドに身を放り投げた。

  (そう言えば私の服、どうなってるのかしら?)

ユキにしたら一丁前だったのに…ユキは自然と涙がこぼれてきた。

  (なぜ泣くの?)

自分に問いかけるが答えが出ない。でも無性に悔しい気持ちが溢れているのは分かる。

  (なら、負けないように勉強で頑張るしかない。絶対に…徳山さんには負けない。
   ううん、徳山さんだけじゃない。岡本さんにも森屋さんにも絶対に負けない!)

ユキは涙を拭いて気持ちを新たにした。