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yamatoへ… ユキバージョン 4

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ユキはそれから何事もなかったかのように過ごした。相変わらず午後は図書室での勉強が続いていたがそれはそれ、と割り切り勉強に専念していた。

気付くと九州から上京して1年が過ぎていた。






  「転勤?」

日曜日、ユキは週に一度の何も予定がない日。もちろん勉強はするが全部復習のためゆったりとした気持ちで迎えられる唯一の日だ。朝食を済ませてデスクの上の端末を開きプライベートメールをチェックしていた。

と、そこへ上京して初めて、実家からのメールが入っていた。相手は母だった。

  <1年何も連絡がありませんが“便りがないのは元気な知らせ”と思いそのままで
   いましたが元気で頑張っていますか?ユキの事だからがむしゃらに勉強している
   事でしょう。あなたの事を認めていないわけではないの。ただ普通の事を普通に
   できる子になってほしかっただけ。まぁ今更、って言われそうだけど。

   で、実はパパが来月転勤になります。行先はヨコハマ。これを機に地下都市に
   移ります。ヨコハマとトウキョウで近くなるから何かあったら帰ってらっしゃい。
   たまには家族でおいしい物を食べに行きましょう。
   住居が決まったらまたメールするわ。それと今まで放置していたわけじゃないの。
   パパと“ユキが帰って来たら何も言わず迎え入れよう”って話はしていたのよ。
   ユキの夢、応援してるから頑張ってね。
   それと一年分の小遣いを昨日、ユキのカードに送りました。奨学金が入る、って
   言ってたけどそれだけじゃ困る事あるでしょう?きっと背も高くなったわよね。
   新しい服を買うために少し余計にお金入れました。少し大人っぽい恰好をして
   大学に通ったら?
   これからは小遣いを毎月入れるから心配しないでお金、使いなさい。足りな
   い時は連絡しなさいね。>

ユキは随分変わった母に驚いた。飛び級なんて!と学校に抗議に行ったんじゃないかとヒヤヒヤしたがその後学校からも連絡はない…

  {ママ、ありがとう。奨学金もたまってるから小遣いなんていらないわ。心配
   しないで。地下都市の空気は重く少し淀んだ感じです。引っ越しまで遊星爆弾が
   九州に落ちない事を祈ります。}

ユキはそう返信した。





ユキはふと自分の姿を見た。1年間着たパジャマはつんつるてんになっていてハーフパンツになっている。もちろん袖も。

  (夏用のパジャマにしようかしら)

その前に生地がもう、お疲れ状態。そして次にクローゼットの扉を開ける。

  (うわ…小学校に通った時と同じ服着てたんだ…リュック背負ったらそのまま
   トウキョウの小学校通えちゃうじゃない…)

ユキは慌てて着替えると勉強は午後から!と言い聞かせマネーカードを持って部屋を出て行った。






  「あれ?ユキちゃんお出かけ?」

玄関で岡本に会った。

  「えぇちょっと…。」

珍しく岡本は一人だった。

  「あら?岡本さん一人?」

ユキが聞くと

  「そう、たまには外でコーヒーでも、って思って。」

岡本が笑顔で答える。

  「へぇ~大人!」

ユキが靴を履きかえて慌てて出ようとして躓いた。岡本がユキの腕を掴んで支えた。

  「ありがとう。」

ユキが少し顔を赤くした。

  「そんなに慌ててどこへ行くの?デート?」(岡本)
  「まさか!こんな格好でデートなんてしません!」

ユキが真っ赤な顔で言うので岡本は余りの勢いに笑ってしまった。

  「じゃぁ何をそんなに慌ててるの?」

岡本の笑いにユキはハタと我に返った。

  (ん?単に服を買いに行くだけなのにこんなに慌ててるんだろう?)

ユキは少し考えた後つかれたままの腕に気付き

  「すみません…(といって腕を外し)別に慌てる必要ないのにすっごい急いで…
   服を買いにモールへ行こうと…。」

ユキが恥ずかしそうに自分の姿を見る。

  「よく考えたら私、小学校に通ってた時と同じ格好で大学通ってて…身長も伸び
   たのに…パジャマも裾、短くなってるし髪も伸び放題。少し自分の事を見た方が
   いいんじゃないかと思って勉強の時間だけどモールへ行こうと…」

岡本は一方的に話すユキに驚いていた。普段はあまりしゃべらず必要な事しか言わない。身振り手振りで緊張してるのか少し早口。そして真っ赤な顔で話すユキは中学2年生そのままで普通の女の子だった。