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yamatoへ… ユキバージョン 6

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  「ぜひ、森くんを推薦します。」

箱舟計画の事で真田は藤堂の部屋にいた。

  「…そんなにすごいか?彼女は。」

藤堂が満足そうに聞く。

  「はい。私も驚きの連続です。同じ事は二度と聞かずそれでいてその先の事を
   考えている。私が教える事より一歩先を見ています。それを自然にこなして
   しまうあたり…本当にすごいな、と思います。彼女をぜひ箱舟計画の中心に
   置くべきです。」(真田)
  「そこまで考えているという事は部署も考え済みだろう?」

藤堂が真田に聞く。

  「彼女はこれから訓練学校へ通うと言っても非戦闘員である事は明らかです。
   そして訓練学校を卒業するわけでもないので“軍人”でもないわけです。
   だけど彼女の雰囲気から言って第一艦橋へ入れれば幾分、空気も和らぐで
   しょう。彼女の能力を考えるとレーダー士が妥当だと思います。そこなら
   “軍人”でなくてもできる、と判断できます。まぁ…艦長がどこまで考慮する
   かで変わって来ると思いますが…」(真田)
  「なるほど。」

藤堂は顎に手を当てて考えた。

  「ふむ…その辺りは仮の艦長として動いている緒田君に相談するようだな。
   緒方君が戦闘員以外を第一艦橋に入れたくない、と言えばそれまでだ。」

しかし藤堂は“まぁ大丈夫だろう”とつぶやく。

  「ぜひ…よろしくお願いします。」

真田が頭を下げると藤堂が笑って声を掛けた。

  「ところで真田くんは乗らないのかね?森くんが寂しがるような気がするが?」

真田は一瞬考えた

  「いえ…私は地球に残って最期を見届けます。」

そう厳しい顔をして真田は議長室を辞した。




  「緒田さんが…艦長?」

真田は艦の行方を心配した。あの緒方に統率能力があるだろうか?別の人選はしないのだろうか?

  「私が口を出す事ではないか。」

真田は自分の力を注ぐ最後の艦になる事になるであろう箱舟を託すのが藤堂でないことが残念でならなかった。もともとこの仕事は引き受けたくなかった。選ばれた人だけが地球を脱出して生き延びる。太陽系もろくに行き来できていないのに外宇宙へ向けて旅立つのだ。未知の世界に何があるかわからない。希望はあるのだろうか?毎日真っ暗な宇宙空間を進むだけ。娯楽も限られいつかきっと少ない人数で争いが起きるだろう。

地球と一緒に朽ち果てた方が絶対に幸せだ、と真田は思う。

生き残った人間同士、力を合わせて生きられるか…それとも生き残るために誰かを陥れるか…


真田はふと笑う。力を合わせても誰かを陥れてもいつかは死ぬ。あの放射能に侵されるか人を信じられなくなって自ら人を裏切るか。

どちらにも将来はない…

  「しかし艦長が緒田さんだと死亡率高まりそうだな。まぁ今は仮だからな。」

真田は独り言を言いながらラボに戻って行った。


  「よろしくお願いします。」

ユキは中央病院のナースセンターにいた。初出勤という事で自己紹介を兼ねてみんなの前に立った…がみなユキの事は知っている。インターン直前だった、という事もあり研修を兼ねて何度も中央病院に顔を出している。

  「森さん、よろしくね。」

婦長が右手を出したのでユキは慌ててナース服の裾で手を拭くと右手をしっかりつかみ左手をそっと添え

  「こちらこそ…足手まといにならないように頑張ります。」

ユキは婦長について仕事を覚える事になっていた。



  「ユキちゃん。」

食堂で春香とかおりがユキに声を掛けてきた。

  「びっくりしちゃった。さっき婦長から聞いたの。」(かおり)
  「内緒にして驚かせようって思ったから…成功したみたいね。」

ユキが笑う。…が春香とかおりは心配そうな顔をしていた。

  「ねぇ…本当にいいの?女医さんになりたいってあれほど頑張っていたのに。」

春香がため息交じりに言う。

  「いいのよ。だって医師の資格を取るために頑張っていたのにいざ、ってなった時
   地球が無くなってたら頑張ってきた意味がない。だったら別の分野で医療に
   携わった方がいい、って思ったの。」(ユキ)
  「だけど…さっき休憩時間に岡本さんから連絡があって…」(春香)
  「説得しろ?って?」

ユキが一気に不機嫌な顔になる。

  「いいわよ、放っておいて。人の事より自分の事、だわ。」(ユキ)
  「でも…。」(かおり)
  「私は後悔したくないから看護士に転向したの。それは私の意志。誰にとやかく
   言われたくないわ。」

ユキが最後のおかずを口に入れた。