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yamatoへ… ユキバージョン 7

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ユキは忙しい合間を縫って訓練学校で学ぶ基本的な事を学んだ。その間に看護士としての仕事も忘れない。

一週間が七日間じゃ足りない!と思いながら二週間と言う期間はあっという間に過ぎてしまった。真田はもう二週間、追加し結局ひと月月面基地に滞在した。

ユキは真田の指導の下艦載機及び小型艇、中型の連絡艇まで操縦するライセンス、星間通信ライセンスA、レーダー士としての資格を取った。


明日は地球に戻る、と言う日、真田は初日の様にユキを食事に誘った。




  「いただきます。」

最後の訓練は艦載機の操縦だった。以前は乗ったらしばらく食事なんてできなかったがやはり“慣れ”なのかしっかり食事ができるようになっていた。

  「訓練、疲れただろう。お疲れさん。よく頑張った。私の知っている中でこれ
   だけ短期間でこれだけのライセンスを修得した者はいない。」

真田はビールを片手にユキに伝えた。

  「そうですか?真田さんにそう言われるとすごい嬉しいです。」

ユキがにっこり笑う。

  「まぁ好きなものを頼みなさい。地球じゃもう食べられないものもある。」

真田は居酒屋にユキを連れて来ていた。ユキはソフトドリンクを手にメニューを選んでいる。

  「…私、大食漢なの知ってますよね?いいんですか?頼んじゃって?」

ユキが心配そうに言う。

  「大丈夫だよ、お給料なんて使うところがなくて…こうやって時々飲みに行く時
   ぐらいしか使わん。もっといいところにしようと思ったが居酒屋に来た事ある
   のかな?って思ってね。」

真田の言葉にユキが首を振る

  「初めてです。こんなにたくさんメニューがあるなんて…迷っちゃって何をどう
   頼んだらいいのかわかりません。」

ユキが年相応の笑顔を見せる。

  「ははは、じゃぁ片っ端から頼めばいい。お腹いっぱいになったら止めたら
   いいじゃないか。」

真田がテーブルの角にあるオーダーを受ける端末に食べ物を注文して行く。

  「あ、乾杯する前の飲んじゃったな。じゃぁ森くん(グラスを持って)乾杯!」

こうして月基地最後の夜は更けていった。





  「いつか…地球に人が住めなくなったら私達はどうなるのでしょうか。」

ユキの質問に真田は一瞬“ノアの箱舟計画”を言いそうになってしまった。優秀なブレーンだけを乗せる船。若い者だけが選ばれる…地球の最高の技術を積み乗せて第二の地球を見つけるまで宇宙の放浪者となる事を…。

  「子供の頃芝生で遊んだ感覚が忘れられません。」

遊星爆弾の落ちる前は自然保全区が設けられていて自然に近い森もあり安全に遊べる公園があり…それでいてゆったりと生活できる近代的な都市空間があった。貧困の差はさほどなくみな安定した暮らしを送っていた…そこへ突然宇宙から降って来たのも…それが遊星爆弾だった。一瞬にしてその地だけでなくその付近全体を無にし放射能を撒き散らす恐ろしい兵器…どこの誰が何の目的のためにその遊星爆弾を落としてくるのか、すらわからず地球連邦市民は不安な日々を送り始めなくてはいけなかった。



  「そうだな…。」

真田はふわふわした芝生と切ったばかりのちくちくする芝生と両方を思い出した。





  「月って…キレイですね。」

ユキが小さくなる月を眺めながらつぶやいた。真田は無言で聞いている。

  「月は変わらないのに…。」

真田は目を伏せた。

  「地球は…地下都市もダメになったらどうするんですか?月に移住ですか?」

ユキが真田に聞いた。

  「でもきっとあの遊星爆弾、ヒトが月に移動したって判ったら矛先変えて来ます
   よね。きっと火星に飛んでも同じですよね。」

真っ赤な地球の表面には大きなクレーターがいくつもできている。その数だけ遊星爆弾が落ちた、という事だ。

  「そうだな…恐らく地球が終わったら太陽系にあるすべての基地を叩きにくる
   だろう。」

真田が静かに口を開く。しかし心の中では眼の前のユキを筆頭に優秀な若者を乗せて安住の地を求め彷徨う旅の準備が始まっている事は口に出さない。

  (ずっと保護者だ、と言ったが…私はその艦に乗り込む事はない。)

真田はユキが自分の裏切りを乗り越えてくれるか、が心配だった。