yamatoへ… ユキバージョン 8
(すごい…)
ユキは佐渡にずっとついていた。難しいオペも一緒に回診も。そして医師として人間として尊敬できる人だと思った。子供にもしっかり病気をわかるように説明するし聞き分けのない大人にもそれ相応の対応をする。
患者がみんな佐渡を信用していた。
それにはそれ相当の腕と人間性がないと無理だとユキは実感しもし自分が医師になっていたら佐渡の様になれただろうか、と思ったりもする。
「ユキは医者になりたかったんじゃろ?」
ユキが佐渡付になって二週間が過ぎた。いつの間にか佐渡はユキの事をファーストネームで呼ぶようになっていた。
「…はい。」
ユキが自信なさ気に返事をするのでユキらしくないな、と思い佐渡はん?という顔をした。
「先生見てると…私、先生みたいになれなかったかも、って思っちゃって…。
先生って、すごいな、って思うんですよ。」
ユキがため息交じりに言う。
「ハハハ、ユキがわし見たく?か?無理じゃろ!」
そう断言する佐渡をみてユキは肩を狭める。
「ユキはユキじゃ。ユキらしい医者になってたじゃろ!」
佐渡はにっかり歯を見せて笑う。
「誰かの真似をしていたらその人を抜く事はできんじゃろ?」
あぁ、とユキは気付いた。
「きっとユキは優しい先生になっただろうな。ユキは自分に厳しいが人には
とても優しい。その優しさが仇になる時もあるかもしれんがソレがユキ
じゃからな。それでいいんじゃ。」
佐渡はそう言って大好きな日本酒を煽る。
「先生?大丈夫ですか?この後オペ入ってますからね。」
ユキがにっこり笑いながら言う。
「あぁ~ん?大丈夫じゃよ!」(佐渡)
「えぇ、分かっていますが一応注意をしておかないと他の先生に私が怒られ
ちゃうので。“森さん、あれ程先生に呑ませないで!って言ったでしょ!”
って。“私は言いました!”って言えるでしょう?」
ユキの先手に佐渡は笑うしかない。
「そうか、やっぱりそう言う輩がおるか。」(佐渡)
「…それ、普通ですから。でも先生に直接言えないから私に来るんです。
でもみんな先生の腕を信用していますから…。」
ユキがにっこり笑う。
「そう言われるとプレッシャーを感じるのぉ。」
佐渡はそう言うと一升瓶から愛用の湯呑に日本酒を注いだ。
やがてユキに真田から連絡が来た。
“5日後から特別任務に入るので佐渡先生付は後5日で終了するように。
その後はラボで打ち合わせするのでそのつもりで。”
ユキは何か大きな力が動き出すのを感じていた。冥王星海戦はどうなったのか?全く情報がない。そこは真田の所へ行けばすぐにわかるだろう。何となく佐渡も忙しいようでユキが帰った後何やら動いてる様子がある。少し疲れた様子が見られる日があるが診療中やオペの時にはそんな様子はみじんも感じられない。
(さすがだわ…)
ユキはいつの間にか佐渡に真田と同じ絶対的な信頼を寄せていた。
「ユキ、今日はもういいぞ。わしはちょっと出かけるところがあるんでな。」
佐渡は地球防衛軍の長官に呼ばれていた。ユキはまだ知らなかったが佐渡と藤堂は個人的に付き合いが長かった。ヤマトの箱舟計画で佐渡が艦医として乗り込む説得を藤堂がしていた。
「え?ご一緒しないでいいんですか?」(ユキ)
「まぁ…今日は個人の事で、なんでな。ここんとこユキもずっと詰めてるし
もうすぐ真田くんの所に戻るんだから一日ぐらいさぼってもバチあたらん。」
佐渡は真田の所に戻ったら忙しくて大変だろうと読んでいた。
「そうですか?でも…」
ユキが時計を見ると午後3時少し前だった。
「昼食もまだだったじゃろ?その辺は適当でいいから…昼飯食べて帰りなさい。」
佐渡はそう言うとユキと二人にするとセクハラだらけになりそうなアナライザーを引きずるように自分のラボを出て行った。
「そっか…少し片付けでもしようかな。で、食べそこなったお昼を食べてから
帰ろっかな…。」
いつもいるラボなのに一人でいるとなぜか寂しく感じる。
ユキはいつも使う道具を医療用アルコールで消毒して荷物をまとめると食堂へ向かった。
作品名:yamatoへ… ユキバージョン 8 作家名:kei