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yamatoへ… ユキバージョン 8

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  「ふぅ…。」

食堂は閑散としていた。時間も中途半端な午後4時少し前。ユキはお昼のつもりだったが食事の内容はすでに夕食のもので少し量も多かった。いつも佐渡と食べるから賑やかに笑いながら食べているのに一人だからかなかなか箸が進まない。病院の食堂は男性にも満足な量だからかユキには少し多い。大きめのハンバーグを箸で一口大に切り分け口に運ぶ。咀嚼をして飲み込むだけの作業を繰り返しゆっくり食べた。



ぼんやりしている所へ視界に人影が入って来たと思ったら周りに誰もいないのにユキのすぐそばに座った。ユキはいやおうなしに壁側に追いやられる状態になった。


  (誰だろう?)

ユキはその人影に顔を向けた瞬間表情が凍りついたのが自分でもわかった。


  「何か…御用ですか?」

ユキは顔をそむけながら言ったが岡本はお構いなしだ。ユキの顎を手に取り無理やり自分の方に向けさせるとユキがどこかへ行くような事を言った。ユキは以前から戦艦に乗る事を希望していた。その事を言っているのだろうと思った。岡本の顔はいつも人に向ける優しい顔でなく憎しみのこもった顔をしていた。そしてユキの耳元でささやくように言った。

  「あの日の事、忘れたわけじゃないだろう?お前の胸は柔らかかった。右の胸の
   ホクロ、俺しか知らないだろう?」

ユキははっとして岡本の眼を見た瞬間岡本はユキの唇を自分の唇で塞いで左手でユキの腰を抱き右手でユキの太ももをぐっと抑えた。ユキはあまりの痛さ自分の唇を噛んでしまった。岡本にもユキの血の味がわかった

  「よく覚えておけ、お前は俺のものだ。誰にも渡さない!俺はお前を探して必ず俺のものに
   する。いいか、分かったな!」

そう言うとユキの体を壁に投げつけるように突き飛ばすと何もなかったかのように食堂を出て行った。

ユキは震える手で通信機を取り出すと真田に連絡を取った。真田も偶然中央病院で医療器具の搬入の手伝いをしていたので急いでユキの元へ来てくれて自分の仕事は人に任せて一緒に自分のラボに戻った。ユキの佐渡付の仕事は後2日残っていたが真田はユキの様子から岡本と何かがあったと思い中央病院に行かせること自体精神的に無理と判断しそのまま中央病院は終わらせ荷物も送らせることにした。




  「真田さん、すみません。」

ユキが翌日、真田のラボに来た。あれから泣いたのか、うつむき加減で表情が見えない。

  「いや、私も注意が足りなかった。佐渡さんにきちんと説明しておけば何事も
   なかっただろうと思うと…すまなかった。」

真田がユキに謝った。

  「いえ、真田さんは悪くないです。私がさっさと食事を終わらせて帰れば
   何もなかったんですから。」

少し切れた唇が引きつるのか“つっ”と聞こえた。

  「無理するなよ…。」

真田が優しく声を掛ける。無理するな、と言いつつもうすぐ地球防衛軍が大きく動き出す。それも極秘任務で。

真田はユキが心配だった。この先箱舟計画でユキを含め訓練予備生出身者はこの計画の中心を担うだろう。冥王星で戦い戻って来る者もこの箱舟にのるだろう。

  (沖田さん……。)

真田の脳裏に修理に回そうと思った材料を箱舟計画に取られてしまう事がたびたびありこの計画を素直に進められなかった。真田はふと時計を見た。あいつはいま、どこを飛んでいるだろうか…冥王星までは遠い。

  (守…頼む、生きて帰って来てくれ!)

真田はユキと話しながら心は冥王星海戦に飛んでいた。