宇宙戦艦ヤマトのその後 1
ヤマトはこのままドッグに戻らない…
ユキは切ない思いを胸に抱いたままベッドに寝かされ最初の救命艇に乗せられた。
「いいか、ユキ。何も心配することはない。じゃが一度死亡リストに載ってしまっているから
ご両親も心配しとるじゃ。この一年はご両親にとっても辛い一年だったはずじゃ。まず
親御さんを安心させなさい。何もなければそれでいいんじゃから…検査して何もなければ
すぐ退院できるはずじゃ。ヤマトが戻ってくるまでゆっくり休んどるのも大事じゃぞ?」
佐渡はユキのそう言い聞かせながらベッドを送り出した。長官が来てるので古代は見送りにこれない…確かにギュッと抱きしめてくれたけど…気持ちをきちんと確かめ合ったわけではない。
それでもユキは古代の腕の中にいた感触を忘れられずにいた
重症者を乗せた救命艇は地上で待ち構えていたスタッフに引き継がれすぐ中央病院へ運ばれるよう手配されていた
「森です、森雪はどこにいますか?」
遠くで自分を呼ぶ声がするが簡易カプセルのベッドだったので両親に“ここよ”といえずにいたら
「森さん、こちらにお嬢さんいますよ。これから病院へ向かいますのでご家族の方は用意して
あるエアカーで病院へ向かってください。」
スタッフがそう告げるとユキを乗せたベッドはリニアに乗せられ中央政府の隣にある中央病院へ向かって走り出した
病院に着くとすぐ検査室に入れられた。もちろん両親の到着を待つ事もなく。ユキは薬で眠らされ気付くと翌日の昼すぎだった。ベッド横に人の気配を感じて目が覚めた
「ママ…パパ…仕事は大丈夫なの?」
眠らされてた薬が強かったのか頭がガンガンするので頭を押さえながら起き上がろうとすると
「ユキ…大丈夫?そのまま横になったままでいいわ。…ユキ、おかえりなさい。」
母がにっこり笑って言うとその後ろで父が
「よく…がんばったね。帰ってきてくれて無事に戻ってきてくれてよかった…お前が死んだと
連絡貰った時は信じられなくて途方に暮れていたが…誤報でよかった…いや、よかったと
言ってはいけないと思うが…パパはお前が生きて帰ってきてくれて…本当によかったと
思っている。何も言わなくていい、ゆっくりやすみなさい。先生もどこにも異常がないと、
まさに奇跡だと言っていた。ユキも看護師してたからわかるだろう?」
ユキは自分自身がどれだけの時間心肺停止状態だったのか考えた事がなかったので改めて思いなおすとすごい事だと気付いた
「…さてママ、完全看護だし今日は帰ろう。ユキも頭が痛そうだし…もういつでも会えるんだ
から。…さぁユキの意識が戻ったら帰る約束だ。近所の人も心配してただろう?きちんと
報告しないと…」
父親はそう言うとベッドの横から動かない母親の腕を取って立たせると荷物を持って隣との仕切りのカーテンを開き“またくるからね”と言いながら出て行った
「地球なんだ…」
自分の周りは薄い水色のカーテンで仕切られている。左腕につながれている点滴を見た
「…栄養剤…ね。じゃぁ異常なしって事か…」
ユキは改めてヤマトに残ればよかったとそう思った瞬間古代の暖かい腕の中を思い出した
(やだ…)
そう思いつつもその前の記憶は目の前が一瞬真っ白に光った瞬間だった
(…怖い…)
ユキは改めてその瞬間を思い出していた
作品名:宇宙戦艦ヤマトのその後 1 作家名:kei