宇宙戦艦ヤマトのその後 2
メインクルーは一斉メールでユキの再入院を知った。
相原は実家に戻ろうと飛行機の手配をしようとしてたのでそれを保留にして母をホテルに待たせてユキのお見舞いに行った。
太田は家族で食事中だったが自分の作ったオートミールを保温ナベに入れて抱えるようにして実家を飛び出した
徳川はアイコと遊んでいたがメールを受け取るや否や放り出すようにエアーバイクにまたがり中央病院へ飛んで行った
ユキは一気に見舞客が増えて恥ずかしいやら、うれしいやら。メインクルーからその他方面いろいろと飛火したちまち病室は人であふれかえってしまった。
一人が帰っても二人来る、という感じだった。ユキも懐かしい顔が並び心配ないから、と泣きながら心配する女性クルーをなだめたりと大変だった。
でも一番会いたい人が来ない…
ユキは時々窓の外を遠い目で見る時があった。その視線の先には防衛軍の司令本部がある
平日の面会時間は3時から。ヤマトの乗組員はただ一人を除いて休暇中。しかしユキは古代だけ仕事が残ってる事をさっき聞いた。来てほしいのに来られない理由を聞くとますます会いたくなるのが恋人の心情…
やがて見舞客が途絶え始めた夜7時。徳川はユキの顔を見ると安心して帰って行ったがメインクルーは遅くまで残っていた。どさくさにまぎれて変なことするやつがいないか監視するため?だったのだろうか…
病院の夕食は5時だったがユキはほとんど手をつけず返してしまった。
「ユキさん、実はね、オートミール作ったの持ってきてるんです。病院食よりおいしいと思う
ので食べてみてください。」
太田は大きなバッグから保温ナベを取り出してお皿に取り分けるとスプーンと一緒にユキに渡した
「多分ちょうどよく冷めてると思いますよ。…たくさん持って来たのでみんなも一緒にどう?」
太田はそう言うとどんどんお皿に取り分け始めた。同じ病室のベッドの横にあるテーブルを借りて即席テーブルを作るとみんなで“いただきます”して食べた
「…おいしい…太田君、すっごくおいしい…」
一口食べたユキがじっくり味わって言うと
「そうでしょう?おいしいでしょう?他に何か感じませんか?」
太田が得意げに言うので
「すっごい懐かしい味がするの。どうして?」
もう一口ユキが味わって聞いた
「さすがはユキさん!実はヤマトのオートミールのレシピ俺のなんですよ。幕さんのもおいしい
んですが…ちょうど食事してた時幕さんがお代わりくれたんですね。その時にどうしたら
もっとおいしくなるかって相談受けたんですよ。で、その時自分のレシピを書いて渡したら
何日かしてメニューにオートミールが出てきて…そしたら俺のだったんですよ。その時は
すっごいうれしかったですね。それから幕さんが俺が食事してるとそっと横に来て他に何か
メニューはないか?って。」
「じゃぁ他にもヤマトのメニューに太田君のアイディアがあるの?(太田がうなずくと)知らな
かったわ。」
「へへへ、実はね、結構あるんですよ。胃袋のでっかいやつが多かったからどうやって量を
見た眼ごまかすか、とかね。」
「ふうん一時幕の内さんが悩んでたんだけど吹っ切れて…そう、それからメニューが増えた
のよ。そうか影に太田君がいたおかげだったのね。ありがとう。幕の内さんが元気になっ
たとたんに生活班に送られてくる食事の苦情がピタっとなくなったの。ほら、原材料がどう
しても限られるでしょう?ねぇ太田くん、次の航海はぜひ生活班の一員として乗務してく
れないかしら?」
女性特有のお願いする時の小首をかしげる様子を目の当たりにした太田は一瞬“うん”と言ってしまいそういなったが我に返り
「…れ…俺よりも航路図を描くのに優れてるヤツが来てポジション下げられたら考えますよ
それか島が補佐失格、ってなったら…」
その時扉の方から声がして
「ばぁか、誰が優秀な助手を手放すか。ユキ、その話は却下だ、却下!太田、俺にもそれ
くれよ。匂いが外まで行ってるぞ?」
作品名:宇宙戦艦ヤマトのその後 2 作家名:kei