宇宙戦艦ヤマトのその後 3
古代は寮に戻るとすぐ真田の部屋を訪ねた
「古代です、入ります。」
どうぞ、の声がしたので入室すると真田が出迎えた
「どうした?思いきり顔に疲れてます、って書いてあるぞ?仕事キツイか?」
真田はそう言いながらコーヒーにミルクをたっぷり入れて古代に渡した。古代もそれを“ありがとうございます”と言いながら受け取ると大きなためいきをついた
「そのため息は仕事じゃないな。仕事なら…沖田さんの最後の仕事の整理だそんな顔は
しないだろう。…ユキの所へ行ったんだろう?昨日も今日も。」
真田が笑いながらそう言うと古代はハッとした顔をして真田を見た
「お前見てたらわかるって。別にいいだろう?好きな者同士会いたい気持ちは普通よりある
はずだからな。今日は起きてたか?」
そう笑いながら言うと真田もコーヒーを飲んだ。
「ユキのお母さんがいて…ケンカしてました」
ポツリと話した言葉で真田が笑うと
「それ聞いてるとどっちの気持ちも本音なんだなって思って結局顔見れずに戻ってきちゃっ
たんですけどユキのお母さんの“地球で待っている間”の大変さ、ユキのヤマトの中での
大変さってすごい違うんですよね。どっちも命の重さは同じなのに…俺たちはたまたま地
球に戻ってこれただけであってひょっとしたら戦死していった仲間と一緒に宇宙で眠って
いたかもしれない…」
古代の話はどんどん尻つぼみで声が小さくなる
「古代、そんなの関係ないだろう?」
真田はそう言うとしっかり古代を見据えた
「いいか?お前がしゃんとしないとユキはどうしたらいいのか分からなくなってしまうんだ。
親とケンカして看護師じゃないから看護師の寮にも入れず正規の軍属の戦士じゃないか
ら軍の寮にも入れない。でも体調も思わしくない…せめて何か一つ確固たるものがあれ
ばあれだけしっかりしてる女性なんだ。明日、何があってもユキにあってこい。会えなくて
もせめて“来たよ”って手紙だけでも残してこい。(コーヒーを飲み干すと)いいか?ユキを
悲しませるような事したらヤマトの乗組員を全員敵に回すと思った方がいいぞ?」
顔は笑っているが眼は笑ってなかった
「ユキは思ってるより弱い人間だ。それを必死に自分の周りに鎧を着けて強くしてる。
それを誰もわかっていない。自分を追い込んで自分の理想に少しでも近づけられるよう
最大限の努力をする女性だ。だから沖田さんも第一艦橋で正規の軍人じゃないのに起用
したんだ。」
古代はだまってうなずいた
作品名:宇宙戦艦ヤマトのその後 3 作家名:kei