宇宙戦艦ヤマトのその後 3
翌日古代は昨日と同じように長官の秘書室で仕事をしていた。途中長官から連絡があり今日は出張で留守にするのでよろしく、という内容だった。古代は一人、だと思うとがぜんやる気になって息抜きも忘れ入力業務に没頭していた
「古代サンオ食事ト、オ飲ミ物、オ持チシマシタ」
ロボットがそう言いながらテーブルに食事を並べていく
「ありがとう。10分ほどしたら下げてもらえるかな。で、ちょっと出かけてくるから戻ってくる
までそれまで誰も立ち入れないように。」
古代が時計を確かめながら言うと
「了解シマシタ。」
そう言って出て行った。時間は12時半。面会には早すぎる時間だが病院の食事は終わってるだろう。少し5分くらい会いに行っても大丈夫だろう、と思い急いで食べた
食事を済ませると書類を引き出しに入れてロックして端末にもロックをかけた。入ってきたロボットに“ごちそうさま”と言うと走ってエレベーターホールに向かいついたエレベータに飛び乗るともどかしそうに通過の階を示すランプを追っていた
いつものように階段を走り馴れた足取りで病室の前に来た古代はそっと病室を覗いた。今日はカーテンが閉まっていない。ベッドサイドにユキが立ちぼんやり外を眺めていたが人の気配を感じて古代の方を振り返った
「…古代くん?」
古代は“面会時間じゃないけど来ちゃった…”といいながらユキのベッドまでゆっくり歩いて正面まで来て
「ただいま」
と言った。その瞬間ユキの瞳から大粒の涙がぽろぽろ流れ落ちて古代にそっと体重を預けて来た。突然の事だったのでどうしたらいいのか分からなかったが古代はそっとユキの背中に自分の手を回ししばらくそのままでお互いの存在を確かめ合った
「ごめんね、なかなか来れなくって。隣にいるのに…本当にごめん。」
我ながらもっと気の利いた事が言えないものかとも思ったが他に言葉が出てこなかった
「ううん、みんな古代くんは忙しいって言ってたもん。それなのに来てくれて本当にうれしい」
ユキがそう言いながら自分で古代から離れようとしたので古代はつい力を入れて
「しばらくこのままでいさせてくれないか?ずっと寂しかったんだ。ユキとこうしていたい…
顔見てわかったんだ。ユキがいてくれないとダメなんだって。またすぐ仕事に戻らないとダ
メなんだ。だから少しだけ…」
そう言ってユキの背中に置かれただけの自分の手に力を込めてぎゅっと抱きしめる形になった
ユキはその言葉にうなずくだけだった
(あったかい…)
ユキは今まで他の人に感じたことのない安心感を古代の胸に感じていた
(こんなに小さかったっけ?)
古代から見たユキはいつもちょこまか動き回っていてよく笑ってよく怒っていた。当の本人も
よく怒られたうちの一人だ。でもこうして自分の腕の中にいるのは普通の女の子で…
(真田さんが言ってたな。強くなるために鎧を付けて頑張ってたって)
その時古代の通信機が鳴ったが古代が腕の力を緩めることはしなかったのでユキが気になって
「古代くん…」
「いいんだ、もう少しだけ…」
どれぐらいの時間がたったのか古代がそっと腕を緩めた
「…もう…行かなくっちゃ…また来るから。」
そう言うとさっと病室を出て行った
作品名:宇宙戦艦ヤマトのその後 3 作家名:kei