宇宙戦艦ヤマトのその後 4
深夜が幸いして更衣室にたどり着くまで誰とも会わずにたどり着いた。ユキは恐る恐る自分の体を見ると胸にいくつか赤い内出血が出来ていた。
ユキは泣きながらタオルでこすった。そんなことしても消えないことぐらい分かってるのにそうせずにいられず何度も何度もこすった。気付くと真っ赤にはれあがり岡本が作った内出血は目立たなくなっていたがいやらしい舌を這う感覚と岡本の右手の触られてたと言う事が自分の体が汚くなってしまった事と同じだと思い自分の体を抱きしめるようにして泣いた。
(ひどい…ひどすぎる!でも自分にも隙がありすぎたわ…)
ユキは泊まり用の予備の下着を身につけると着ていたナース服をランドリーに入れて新しいナース服に着替えたが足が震えて更衣室から出る事が出来なくなってしまった
(どうしよう…今出て行ってまた岡本さんに会ってしまったら…いったい何のために護身術
習っていたのかしら…どうして気付かなかったの?ユキのばか!)
まだ10代のユキにとってそれは大きすぎる衝撃で自分一人で受け止められないものだった
(…誰に相談したらいいのか…わからない…ここの人に相談したら…どこから漏れるか
わからないし…未遂だったけど何かがあった時の報復も怖い…)
若い男性の力がどれほどのものか…女性の力ではかなわない部分があるとユキは初めて知った。
とてもじゃないが今日は普通に業務を続ける自信がなかった。涙はとめどなく出てくる…普段決して泣く事はないのに我ながら信じられないほど涙が流れて着替えたばかりのナース服がぬれていく…
ふとユキは訓練をしてくれている先生の顔を思い出した。震える手で通信機のボタンを押す
<…真田です。森くん?どうした、こんなに遅く?何かあったか?>
真田は軍の上部から任命されてユキの訓練の特別コーチをしていた
ユキは訓練中は厳しいが普通にしてるととても穏やかな真田の声がいつにもまして優しく聞こえて更に涙が流れてきてしまった
<…森くん?中央病院だろう?今日は泊まりだったはずじゃないか。何かあったんだろう?
今すぐ迎えに行くからそこで待ってろ。そこはどこだ?>
真田はユキの非常事態を感じて立ち上がると白衣を着たまま自室を飛び出した
「…更衣室です。」
涙をこらえてそれだけを言うと
<…このままつなげておくんだ。いいね。更衣室にちゃんと鍵かけてあるか?>
「はい…大丈夫です。」
<よし、すぐ着くから…荷物をまとめて…>
Tween…と通信機からエアカーの発進する音が聞こえた
<大丈夫か?誰もこないか?>
時々真田が心配して声をかけてくれる。その度にユキは“誰もこないです”と返事する
しばらくすると更衣室をノックする音が聞こえた
「真田さん、もう着いたの?」
ユキが泣きながら聞くと
<いや、まだだ…もう門は見えてきたが…どうした?>
「誰かが…ノックしてるんです。女性はみんなカード持ってるからそのまま入れるのに…真
田さん…怖い…岡本さんかもしれない…真田さん早く来て!」
ユキの悲鳴のような声が更衣室に響く。更衣室の外ではユキが思ったとおり岡本が守衛の部屋からカードキーを持って来たようで汗だくになって更衣室のキーを探していた。
<病院についた。まだ動くなよ。>
真田の走る息遣いと足音が聞こえる。しばらくすると扉の方が静かになった。岡本は真田の足音に気付いたようだった
<森くん、ここ?>
真田がノックをするとユキが扉に近づきノックを返す。通信機にも同じ音が響いている。ユキが荷物を持って扉をそっと開けると真田が息を切らせて立っていた。真田がそっとユキの肩を抱くと恐怖で止まっていた涙がまたどっと出てきて真田の脇につかまりまた泣いた。
その時真田がユキを抱きかかえるように体を丸めるとドス、という鈍い音がして“うぅ…”とうめく声が聞こえた。真田に襲い掛かった岡本が反対に打ちのめされた瞬間だったがユキは恐ろしくてそれを見る事が出来なかった
「森くん、行こうか。」
真田はユキの体を支えながら岡本を打ちのめした右手でユキの荷物を持つと中央病院を出てエアカーで軍へ戻って行った。エアカーの車内でユキはただ下を向いて泣くばかりで真田とも口をきかなかった
作品名:宇宙戦艦ヤマトのその後 4 作家名:kei