宇宙戦艦ヤマトのその後 6
しばらくソファーの方から笑い声が絶えず聞こえていたがそのうち
「古代、ちょっとおいしいもの食べてくるから!」
と言ってぞろぞろ出かけようと準備を始めた。
「いってらっしゃい。軽く俺にも何か買ってきてくれよ。考えてみたらさっきのコンビニで
ちょっと飲んだだけで何も食べてないや。」
古代がそう答えると
「OK。後ユキさん起きたら連絡しろよ。ユキさんの食べたい物も手配するから」
そう言って南部が答えるとみんな出かけて行った
部屋にはユキと二人っきりになった。
(さっきの先生は手術で使う吸引の麻酔だって言ってたけど本当かな…よく効くなぁ
かなり高い濃度だって言ってたから…まだしばらく目覚めないかな…)
古代はそっとユキの亜麻色の髪を整えた
(やっぱり…美人だよなぁ…ユキはなんで俺なんだろう…普通に考えたら島だったかな
って思わなくないんだよな。でも真田さんなんか結構前から知ってるっぽいし…南部
あたりだったら条件良さそうだし…ホント俺って何にもないなぁ…もっと気を付けてれば
こんな危険な目にあわずにすんだのに…)
「ユキ、ごめんな…」
ポツリと古代がつぶやいた。その時ユキの顔が歪んだ
「ユキ、どうした?どこか苦しいか?」
古代の声にユキが反応する
「…古代くん?」
「ユキ…気がついた?気分はどう?痛いところある?」
ユキはゆっくり起き上がると一瞬あたりを見渡して
「ここ…どこ?」
そう聞いてた
「ここは南部のお父さんの経営するナゴヤのホテル。みんなもいたんんだけどさっき夕食
食べに出かけちゃった。気持ち悪くない?吸入麻酔を直に吸わされてずっと眠ってた」
「ナゴヤ?」(ユキ)
「そう…あのモールからずっとユキは眠らされてたんだ。」(古代)
「…右腕が…少し痛いの。」(ユキ)
「ひび入ってたところ?」(古代)
「そう…でも…なんだかイヤな痛みじゃないの。どうしてかな?」(ユキ)
「さぁ…どうしてだろう?…ねぇユキお腹空かない?食べたい物みんなが買ってきてくれる
ってさ。」(古代)
ユキは頭を押さえながら首を振った
「ユキ、頭痛いの?横になる?」
「…大丈夫…ずっと横になってて起き上がったからだと思うわ。」
ユキは辛そうに頭を押さえてる
「無理しない方がいいよ。また倒れたりしたらユキのお母さんが大変だからね。」
ここは病院のベッドじゃないので背もたれは上がってこない。背もたれの代わりに古代は隣のベッドに置いてある枕とクッションを集めてきて背もたれになるように置いて無理のない姿勢にしてやった
「古代くん…」
「なに?」
「…なんでもない…」
古代は本当のユキを見たような気がした。不安で不安で仕方ない、という顔をしていた。
真田のユキは決して強い女性じゃない、鎧を付けて強く見せてるんだ、という言葉を思い出していた
「ねぇユキ、お願いがあるんだ。」
ユキはなあに?と言う顔で聞いてきた。古代はユキの痛くない左手を握ると
「俺と結婚してほしい」
古代はユキの目を見てしっかりそう言った。ユキはびっくりして大きな目をさらに大きくして瞬きもせず古代を見た
「見ての通り俺は何も持ってない。でもユキのいない生活なんて考えられないんだ。
お見合いもユキのお母さんに俺からちゃんと言うよ。うまく言えるかわからないけど…
ユキの両親が許してくれるか分からないけど…」
「…もし許してくれなかったらどうするの?」
ユキは涙声で聞いた
「その時は…さらっちゃおうかな…俺、何も失うもの持ってないし」
古代はそう言って笑ったがもう一度真顔になって
「俺と結婚してください」
とユキに言った
「私、ご飯作れないのよ」
「知ってる」
「掃除や洗濯もちゃんとできないかも」
「一緒にやればいい」
間を置いて
「…私…キレイじゃない…」
古代の手を払うと自分自身を抱きしめてそう言って泣きだした
「そんなことない、ユキはキレイだよ。自分でそう思ってるだけだよ。」
「ううん、今はそうかもしれないけどきっといつか私の事汚い、って思うのよ。古代くんは
知ってしまった…いまさら知らない、で通せない…古代くんだったらきっとステキな
人と出会えるはずよ。」
古代はユキ全体を包むと
「どうしてそう思うの?たとえユキがそう思ってても俺はそう思ってない。それこそこのまま
どこかへさらって行ったっていいんだ。」
作品名:宇宙戦艦ヤマトのその後 6 作家名:kei