宇宙戦艦ヤマトのその後 6
翌日朝7時過ぎに古代はこっそり寮を出てユキのホテルへ向かった。
「おはよう」
古代が息を切らせて部屋に飛び込んで来たのでユキはびっくりした
「…おはよう。どうしたの?そんなに息切らせて…走ってきたの?」
「…うん、悪いけどお水一杯くれる?」
ユキは水差しからコップに水を一杯入れて古代に渡した
「はい。」
「ありがとう」
コップの水を渡しながら古代の手荷物を預かる。
「…?これ?なあに?」
古代はコップをユキに渡すと手荷物を受け取りながら
「…スーツ。真田さんが貸してくれた」
「え?大丈夫?」
「昨日真田さんが合わせてくれた。ホント何でも出来るんだよなぁ…」
「で、ここでお色直しして出かけるの?」
「うん、真田さんが寮からスーツ着て出かけると大変なことになるだろうからって。でも
南部に見つかったら万事休すだってさ。注意して出かけろって。寮出る時相原の顔見な
いで出てこれたからここが勝負かもしれない。」
真剣な古代の表情にユキがクスクス笑う
「古代くん南部君だけじゃないのよ、巨大な敵は!ねぇ大丈夫?」
そう言って“私奥の部屋で着替えてくるわ。”と言って隣の部屋へ行ってしまった。
(そうだ、ユキの両親になんて挨拶したらいいんだろう…とりあえず森さん、初めまして
ヤマトで一緒だった古代進と申します…だろう?それからユキさんとは結婚を前提に
付き合う事を許していただきたくお願いに参りました。…うん、上出来。)
古代は着替えながらブツブツ独り言を話していた。
「古代くん準備はいい?」
ユキの顔が間近にあって古代はびっくりしてしまった
「何度も呼んだのに全然返事ないんだもん。着替えながら寝ちゃってるのかと思った。」
そう言ってクスクス笑う。ヤマトの中でも良く笑ってたけどこんなに柔らかく笑うユキは滅多に見なかったような気がした。今日のユキはオフホワイトのツーピースを着て実家に戻るにはかなりかしこまった感じでまとめていた
「似合ってる。」
古代がそう言うと少し赤くなったユキが“そう?ありがとう”と言ってお茶の用意を始めた
「まだ早いでしょ?まだ8時前よ?10時くらいに行くって言ってあるから…」
「じゃぁ途中で朝ごはんでも食べて行こうよ。」
ここは仮にもホテル。古代は出来るだけ早くここを脱出したかった
「お茶入ったけど…」
そう言ってユキがお茶を並べると古代は落ち着かない様子でソファーに座って
「じゃぁお茶飲んだら出かけよう。」
ユキもそれを聞くとにっこり笑って隣に座って一緒にお茶を飲んだ。
「余り話した事ないと思うけどユキのご両親ってどんな人?」
「そうね、お父さんは余り話さないかな。お母さん主導型なのよね。お父さんはお母さんの
することに口出さないっていうか…まぁ言っても無駄って思ってるのかな?って感じもあ
る…かな。きっとここ一番、って時じゃないと行動にでないのかも。だからやっぱりお母さ
んをねじ伏せないと勝利はつかめないかもしれないわ。あの写真の山…多分私が帰る
となるとリビングに山積みで待ってるはずだから…」
ユキは大きなため息をついた
「それだけユキが心配なんだよ。きっと勉強ばっかりしてきたから男を見る目がないって
思ってるのかもしれないね。それか…」
「それか?」
古代が言葉に詰まるとユキが聞きたそうに身を乗り出してきた
「それか…ユキのお母さんがすごい幸せで同じ幸せを娘に実感してもらいたいって思ってる
のかなぁって…」
「そうかな?絶対自分の思い通りにしてくれるお婿さん希望なのよ。私は人形じゃない。
絶対お母さんの言う通りになんてならないわ。私の人生だもん後悔しても精一杯生きた
いの。ヤマトに乗ってその思いがもっと強くなったわ。」
「お見合いは置いといて…ユキの事本当に心配してるんだから…ちゃんと親の話聞こう」
ユキは古代に両親のいないことを思い出し素直に頷いた時計を見ると8時半だったのでどこかで朝食を、と言いながらユキのホテルの部屋を出た(キョロキョロしながら出たのは言うまでもない)
作品名:宇宙戦艦ヤマトのその後 6 作家名:kei