宇宙戦艦ヤマトのその後 6
「古代くん、頭を上げて…とりあえず座って…キミは今いくつかね?」
父が柔らかい口調で古代に聞いてきた。古代はいすに座りなおすと
「19…です。今年20になります。」
そう答えた。若すぎる、って言われるだろうか…
「うん…まだまだ若いじゃないか。それなのにどうして娘なんだ?ヤマトだって娘以外に
女性の乗組員はいただろう?」
「あの、それを言われると自分でもどうしてユキさんなんだろう、って思う事たくさんあるんで
す。ヤマトの中のユキさんしか知らなくて申し訳ないんですがユキさんはまっすぐな人で
誰からも信頼されて一生懸命でした。私もヤマトの中で癒された一人でもあります。
正規の軍人でもないのに戦艦の中で必死に働く姿に心打たれたのは私一人では
ないはずです。気付くとどこにいてもユキさんを探してる自分に気付きました。」(古代)
「じゃぁ…ユキに聞こうか。どうして古代くんなんだい?」
ユキは自分が聞かれると思ってなかったからちょっとびっくりしたが
「…私もどうして古代くんなんだろうって思う事いっぱいあったの。机の上の勉強なら必ず
途中経過があって答えが出るんだろうけど…答えなんかなかった。ただ…やっぱり古代
くんなんだ、って思うの。」
「それじゃ答えにならないじゃない。」
ユキの母が入ってきた
「そんな不確かな気持で結婚を前提に付き合うこと許すことできないわ、ねぇパパ?」
ユキの父は黙っていた
「古代さんはこれからもずっと戦艦に乗るんでしょう?とっても危険な職業だわ。娘はその
帰りをただ待つしかないのよ?今までは一緒に乗り込んで一緒に戦って来たかも知れ
ないけどただ待つだけって本当につらいの。ヤマトはイスカンダルへ行って地球を救った
かもしれない。けど地球に残ってる私達も戦っていたの。本当の情報がどれだか分らず
食べ物も明日ちゃんと配給が来るか分からない…いつ暴動に巻き込まれるか分からな
い…相手が見えない戦いを私達も一年間…頑張ってきたの。私は同じ思いを娘にさせ
たくないわ。ユキには私がいいお相手を探して結婚させます。」
ユキの母はそう言ってリビングに山になっている写真を指さして
「ほら、たくさんあるでしょう?どうしてもユキで、って方ばかりなの。さぁもうお話はすんだ
でしょう?ユキはこれからお見合いの予定立てないといけないの。お帰りになっていただ
けます?」
そう言ってユキの母は立ち上がり玄関の方へ手をまわした
「待って下さい、ユキさんはお見合いはしない、と言っています。私と付き合う云々の前に
彼女の気持ちも考えていただけないでしょうか」
古代はそう言ってユキを見た
「もし結婚のお許しが出ても今すぐ結婚の準備、とは思っていません。私自身いま休暇中
ですが休暇が明けたらどんな任務が来るか分かりませんしユキさんもまだ辞令が出て
いません。ご両親を心配させてはいけないとそれも思っておりますので…」
しかしその一言がユキの母をまくしたてる
「あなた、結婚したいと言いながら準備なんかしない、って言うの?それじゃユキがかわい
そうじゃない!ひょっとして結婚する気持ちなんて全然ないんじゃないの?ユキ、こんな
人やめなさい!絶対幸せになんかなれないわ!さぁ帰って!ユキはお見合いの準備よ」
その時ユキが立ち上がった
「どうしてママは私の気持ち全然分かってくれないの?ヤマトが帰ってきて…たくさん仲間
が死んで行って…じゃぁ明日式をあげます、なんて出来るわけないじゃない!私だって
古代くんだって心の準備が全然できないわ。私絶対お見合いなんてしない!古代くんと
一緒にいるの!ママとパパが許してくれなくても結婚する!それに私は古代くんに幸せ
にしてもらおうなんて思ってないから!2人で幸せになる努力するの!与えられる幸せ
って何?そっちの方が私にはわからない!もう、いい!私も帰る!その写真全部返して
絶対見ないから!」
ユキはそう言うと泣きながら古代の腕をつかみ玄関にむかって歩き始めた
「ユキ、ちょっと待って!ユキ、」
ユキはさっさと玄関を出て行ってしまったが古代は玄関で立ち止まり
「すみません、また改めて参ります。でもお見合いだけは私からもお願いします。」
そう言ってもう一度頭を下げて玄関を出て行った
作品名:宇宙戦艦ヤマトのその後 6 作家名:kei