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最近、妻が冷たいの4

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怒鳴りすぎと酒の呑みすぎにより、声が涸れ始めた緑間は嗚咽を交えつつぽつりぽつりと高尾にはなす。それを、火神と高尾、そして恐らく黒子もじっと聞く。

「俺は…っ、ただ、おまえとずっと一緒にいたいだけなのだよ…!それなのにっ…!おまえはっ!なかなおりもさせてくれない…っ俺が悪かったのはわかってるのだよ!でもおまえは勝手に黒子と仲良くなって、おれからはなれてく…」

結構支離滅裂な話だが、高尾には緑間の言いたいことがわかった。緑間は、高尾のことが好きなのだ。高尾と同じか、それ以上に。

「真ちゃん…」
「おれはお前が好きだ。…でも、おまえは…もう俺のことがきらいなのか…?」

そこまで言ってから、緑間は突然冷静になる。
待て待て待て、自分は今、なんて言った?「好き」とか口走らなかったか?ん?待て、これはやばい。どれくらいやばいかというと、恥ずかしすぎて窓からジャンプできるくらい恥ずかしい。

ぷつん。
思わず通話終了ボタンを押した。

「「「…えーーーー!?」」」

「ここで切るか!?緑間、お前なぜここで切ったんだよ!?」
「だめだ火神。俺は今から外に出てくる。少し飛んでくる」
「おぅ、そうか…ってちょっとまて!そっちベランダだろーが!飛ぶってどこまで!?天国まで!?」
「逝ってくるのだよ」
「とどまれ!」

ツンデレのデレをキャパオーバーしたらしい緑間は、すっかり酔いが醒めてしまったようで。先ほどまでの弱々しさから一転してベランダへと行こうとする。その決意の固さと潔さにはある意味尊敬するものがえるけど止めてくれ、高尾に殺される。


一方、黒子と高尾も切られた携帯電話片手にワタワタとしていた。

「あの真ちゃんが好きって!好きって!!久々に聞きすぎて俺はもう死んでもいいかもしれない黒子」
「すごいですね、緑間君のツンデレは電話でも出来るんですか。なんですかあの電話の切るタイミング。ツンデレの神ですか。」
「てか待って。ほんと、泣きそう。まじで嬉しい…」

そう言って顔を覆う高尾に一瞬だけ笑みを送る…が、そこでふと気付く。
緑間君のデレ、キャパオーバーしすぎじゃありませんか?あれ、たぶん今頃「もうやだ恥ずかしい死ぬ」とか言ってませんか?…待て、つまり。火神君巻き込まれてね?
ハッとして、もう一度電話を掛ける。今度は高尾の携帯から、緑間の携帯へ。ロックの掛けられた携帯に素早く「0707」と暗証番号を打つと、カシャンという音とともにロックが解除された。分り易すぎて不安になる。
電話帳の一番上、「俺の愛しのエース様(お嫁様)♥真ちゃん」とか気持ちの悪い名前で登録されている番号を押す。

プルルルルップルルルルッという単調な音楽の後、「はいもしもし!?」という火神の声。
切羽詰まった声音から、自分の予測した通りの展開が予想された。

「一応聞きますが火神君、今緑間君は何してます?」
「ベランダから天国へ飛翔しようとしてる!」
「デスヨネー」

やはり、これはまずい。火神君にあらぬ罪が掛けられること間違いなしだ。
隣を見やると、にやついた口元が隠しきれないマヌケ面が見えた。おい、今そんなことしてる暇なんてないんですよバカ尾君。

「『離せ火神!俺はもう生きていけん!!』ちょ、落ち着け緑間!!黒子、助けてくれ!!」
「…わかりました、今すぐそちらに高尾君を向かわせます」

電話を切らぬまま、もう一度となりを見る。少し真剣そうな顔で立つ高尾に声を掛ける。

「今、『今夜は仲直りセックスしよっと♪真ちゃんと一緒に寝れるとか久々すぎて…あぁ俺幸せ』とか考えている気持ち悪い高尾君、」
「なぁ黒子、お前なんなの?エスパーなの?なんで一字一句の狂いもなく俺の心を読み当ててるの?」
「うわっ…マジですか、キショッ。」
「やめて!悲しい!!」
「Hey, Fall silent。」
「やめて!悲しい!!」
「てか、そんなことはどうでも良いんですよ 。今君の愛しの緑間君が窮地ですよ。」

そこまで言われて、高尾は漸く黒子の持つ携帯電話に気付く。おそらく、彼も今の緑間の状況を察したのだろう。

「高尾君、僕は体力が無いのでこれから車で君の家まで向かいます」
「…チャリは貸してくれるってことか」
「ここからなら自転車のが早いんですよ」
「…ありがとな、黒子」

それだけいうと、高尾は未だスピーカーからぎゃあぎゃあと聞こえる携帯を持って外へと向かった。







「…緑間ぁ」
「疲れたのだよ…」

ベランダの柵に凭れかかり座り込みながら話す男が二人。先程まで散々「もう死ぬ!」などと言っていた緑間は、漸く…本当に漸く冷静になった。
空には厚い雲がまだ覆っていたが、それも夜風によって分散されてきている。隙間から、小さく金星が見えた。

「今から、高尾が来るってよ」
「…そうか」
「仲直り出来て良かったな」
「…そうだな」

ぽつぽつと繋ぐ会話。
でもやはりもう高尾と会うのは恥ずかしくてやなのだよ、と言う顔は心なしか柔らかい。

「まぁこれで一件落着だn「真ちゃん!!!!」…え?」

二人だけの空間に、突如響く第三者の声に二人して顔をあわせる。どうやら、声は携帯スピーカーからでているようで。

「…そういや繋がったまんまだったわ。」
「火神、それを切れ。恥ずかしい」
「ならお前が切れよ」
「…。」

ぶすっとした表情で、緑間は電話を受け取る。

「真ちゃん!!!!」
「…。」
「真ちゃん!!!!」
「…。」
「真ちゃん!!!!」
「…なんだ、高尾」

あまりにも真ちゃん真ちゃんとうるさいので、渋々電話にでる緑間。何故か電話の向こうからは風を切る音とカシャカシャカシャというペダルを漕ぐ音。

「真ちゃん死なないで!!!」
「…は?」
「俺真ちゃんのことが大好き!愛してる!ぶっちゃけ今すぐ抱きたいしキスしたいし手も繋ぎたい!あと体も繋ぎたい!!」
「…死ね高尾」
「ひどくね!?」

若干下ネタの入る愛の言葉に、緑間の冷たいツッコミ。しかし、いつものように吐くセリフも微笑みながらなので怖さはみじんもない。電話向こうには見えないのだが。

二人の会話は見ていて飽きない。火神は思わずククッと笑う。この二人の心地よい関係は羨ましいなと思いつつ、火神は部屋へと戻った。










「真ちゃんただいま!!」
「おかえりなのだよ。…汗くさいな」
「チャリ全力疾走だったからね!」
「…風呂に入ってこい。風邪を引くのだよ」
「せっかく仲直りしたんだしぃ~和成は真ちゃんとお風呂に入ってイチャイチャしたいでーす」
「ふん、ばかめ。…背中くらいなら流してやってもいいのだよ」
「真ちゃん優しい可愛い!!」

自分はどうやら疲れてるようで、二人から花とかハートが飛んでるように見える。
帰宅して早々に二人だけの世界に入ってしまった高尾と緑間に置いてけぼりを食らう羽目となった火神は、リビングに転がるゴミを片付けていた。空いた酒缶につまみの袋。それらをてきぱきと分別し、捨てる。
しゃがみこんで、空き缶を拾い、ため息を一つついた。あの二人が寄りを戻せたのだし、これぐらい別にいいんだが…なんとも腑に落ちない。